第71章―16
話が余りにもズレたので、本来の話に戻るが。
日本が原子力潜水艦を保有したことは、それこそ原子爆弾を始めとする原水爆、反応兵器を搭載した弾道弾を潜水艦に搭載して、世界各地に対する攻撃を行えるのではないか、という考えを生み、更にそれに対する危惧を世界的に徐々に引き起こすのは、ある意味では当然の話で、日系諸国を中心に世界各国がそういった事態を引き起こしてはならない、との意見を挙げる事態が起きた。
こうしたことから、まずは反応兵器の開発を制限すべきだ、との輿論が世界的に起きたことから、結果的に妥協の産物として、いわゆる核実験については地下核実験のみが許されるという部分的核実験禁止条約が世界の国々の間で、1605年よりすぐ後に締結される事態が起きた。
本来的には全ての核実験が禁止されて然るべきだったかもしれないが、それこそマッドサイエンティストの発想と言われようと、一つ裏に回れば日本や北米共和国、ローマ帝国等の国々において、自国の安全保障を今後ずっと維持するためには、核実験の全面禁止は飲めないとの意見が、軍人を中心に巻き起こる現実があったことから、放射性降下物質が大気圏から地上にまき散らされる危険が少ない地下核実験については禁止しないという妥協案が、最終的には国際条約として締結される事態が起きたのだ。
とはいえ、その一方で表向きは反応兵器以外の、いわゆる通常弾頭を搭載するという名目での様々な弾道弾が日本や北米共和国、更にはローマ帝国等で研究されるのはどうにも避けられないことだった。
この辺りをギリギリ言い出すと、それこそ対戦車ロケット弾等の開発も許されないのか、という極論まで出ることになり、それは極論だという声が挙がりはするものの、それでは何処までならばよいのか、という議論を始めれば。
それこそ百家争鳴となって、最後には宇宙ロケットの開発もダメではないか(何しろ宇宙ロケットは、すぐに弾道弾の開発に転用できる代物なのだ)という話まで出る以上。
最終的には玉虫色の話で落ち着いて、世界各国で宇宙ロケットを参考にしつつ、弾道弾の開発が密やかに行われるのは、道徳的にはどうか、と言わざるを得ないが、現実的には止むを得ない話だった。
そして、それに真田兄弟等も、お互いに自らの祖国の為に、という大義名分の下で暗躍する事態が起きていたのだ。
そういった結果として、それぞれの国の内部で暗躍があった結果。
1610年直前には、北米共和国では反応兵器を弾頭として採用した大陸間弾道弾の量産化の目途が立つ事態が起きた。
勿論、時代的な制約があることから、目標変更等のために液体燃料ロケットであり、いざという際の即応性には多大な問題を抱えた代物になるのは、避け難い話になった。
だが、そこまでの事態が起きてしまうと。
こういった事態に対応するために、1610年代前半までに日本が原子力潜水艦に搭載した潜水艦発射弾道弾を実用化しようと逸る事態が起きてしまう。
尚、この時点で開発されようとしている潜水艦発射弾道弾は、射程距離もかなり短いもので中距離弾道弾を潜水艦に何とか搭載した代物と言っても過言では無かったし、更に言えば液体燃料ロケットだったことから、浮上した上で発射準備を行わねばならない等、実用性にかなりの問題がある代物なのは間違いなかったが。
ここまでの事態に至れば、それこそ世界規模での核戦争が何れは起きて人類が滅ぶのでは、との先走った危惧を抱く者が世界中に出てくるのも当然のことだった。
そうした事態から大陸間弾道弾や潜水艦発射弾道弾について国際条約による規制が為されるべき、との主張が世界各国で為されることになった。
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