第71章―14
実際に上里秀勝の勘は、かなりの部分で当たっていた。
この時にトラック諸島の宇宙ロケットの打ち上げ基地にいた(来島)村上通総海軍大佐は、人工衛星を積んだ宇宙ロケットの打ち上げ成功を見届け次第、それこそ万が一の電文傍受からの暗号解読で、自分達の真意が漏れることを懸念して、外交を始めとする機密文書を運搬する、いわゆるクーリエを使うことで日本本国の海軍に連絡を取る有様だった。
又、同様のことを真田信繁陸軍少佐も日本本国の陸軍省としていたし、北米共和国の真田信之陸軍中佐も、同様のことを北米共和国の陸軍省とする羽目になっていた。
(更に言えば、世界各国の軍関係者も挙って同様の行動をしたと言っても過言では無かった)
何故にそういった事態が起きたのか。
まずは真田兄弟の行動の理由から述べるならば。
「この技術を大陸間弾道弾に転用すれば、更に弾頭として核兵器を使用すると言えば、戦争の抑止につながり、平和をもたらすことが出来る」
と真田兄弟が共に考え、その考えに日本本国の陸軍も、北米共和国の軍部も事実上は同意していたことから、速やかに真田兄弟が行動する事態が起きていた。
(既述かもしれませんが、日本本国の場合は、皇軍の伝統から陸海軍対等という建前から何かと陸海軍の対立が起きていましたが、北米共和国の場合、陸軍が中心で海空軍が従とされており、北米共和国は軍部が一体となって行動するのが当たり前になっていました)
実際にこの世界の1605年現在、核融合爆弾、水爆でさえも実用的な設計図が造られる段階になっており、遅くとも数年もすれば水爆実験が、まずは日本で、それから北米共和国で行われるのでは、と世界各国の政府の最上層部では推測する者が増えている現実があった。
そして、宇宙に人工衛星を送り込めるだけのロケットならば、当然に大陸間弾道弾としても使用可能なのは極めて明らかなことで、更に弾頭部に核融合爆弾、水爆が用いられれば。
それこそ自国が考えるようなことは相手の国も考える筈、という恐怖が恐怖を呼ぶような事態が起きており、皮肉なことに真田兄弟は結果的に現在のお互いの祖国の危機感をあおるような行動を執る事態が発生することになった。
更に言えば、真田兄弟の現在のお互いの祖国への報告は、それぞれの祖国の軍部に自国の安全保障のために弾道弾の研究を推進せねばならない、との考えを促進させることになった。
とはいえ、それが素直に大陸間弾道弾という方向に奔ったのは、北米共和国の側だけといっても過言では無かった。
もう少し後になれば、ローマ帝国も同様の発想に至るのだが、それこそ人が余り住んでいない荒野なり砂漠等なりは、日本本国には無いと言っても過言では無かったのに対し、北米共和国は(メタい言葉遣いなるが)アラスカや北カナダ等という人家が極めて乏しい領土を獲得しており、そういった場所に大陸間弾道弾の基地を設けることができたからだ。
大陸間弾道弾の基地は何処にあるのか、できる限りは秘密を保たないと、敵国の先制攻撃に脆弱になる(特にこの頃の大陸間弾道弾は、攻撃の際の目標変更の都合等から尚更に液体燃料ロケットにする必要性が高いという問題をも抱えていた)。
だから、本国の小ささ、人家が密集気味であるという問題もあって、大陸間弾道弾基地の所在の機密を保つのが困難なことから、日本本国は大陸間弾道弾の大規模保有に消極的にならざるを得なかった。
それならば、日本本国がどのような対策を講じたのかだが。
日本本国は思い切り発想を変えて、この問題に対処することになった。
何と潜水艦を弾道弾の発射基地として大規模に採用し、更には運用しようと行動したのだ。
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