第69章―30
日系植民地の多くの自治領化(といっても、実際に自治領化を果たした植民地はカリフォルニア、カリブ諸島を除く中南米、豪州、ニュージーランドと南アフリカ(及びそのすぐ近辺の島々)であり、アジアや太平洋の島々、カリブ諸島は植民地のままだった)と、琉球王国の属国から対等な国家外交関係の締結といった変化は、それこそ北米共和国を始めとする様々な諸外国と日本との関係も大きく見直される発端となった。
少なからず話は変わるが、シャム王国やマラッカ王国等の親日の東南アジア諸国は、この太平洋条約機構の成立に伴って、寄らば大樹の陰では無いが、自分達の国も太平洋条約機構に何らかの形で加わることを望んだ。
これまで(この世界では)こういった国際機関は存在しなかった。
二国間で様々なトラブルが起こった場合、直に交渉するなり、近くの有力な国に仲介してもらうなりというのが当たり前だったのだ。
だが、太平洋条約機構が造られ、そこが平時でも活動することを聞かされたことから、シャム王国やマラッカ王国等は、自分達が日本の同盟国と言って良い立場にこれまであったことから、太平洋条約機構に加わり、そこで同盟国としての立場を維持しようと日本に対して求め、日本もそれに応じる方向で動くことになったのだ。
そして、この動きはキャンディ王国等のセイロン島やインド亜大陸諸国にも及び、更にはオスマン帝国にも及ぶことになった。
少なからず先走った話(実際になるのは第12部以降)になるが、この太平洋条約機構は、本来の名称にも拘らず、太平洋及びインド洋、大西洋条約機構だと世界でささやかれる世界最大の条約機構へと発展していくことになる。
何しろオスマン帝国までがこの条約機構に加わったことから、文字通りに世界にまたがる集団防衛機構へと発展したのだ。
だから、そう呼ばれるのに相応しい存在と言えた。
だが、その一方で、これだけの大規模な集団防衛機構ができた以上、それこそ北米共和国やローマ帝国、更には欧州諸国もそれに対応した動きを起こさざるを得ない。
そうは言っても、北米共和国は武装中立を宣言して、孤立外交を基本的に標榜したが。
(実際に北米共和国の国力とその位置(日本以外とは直に陸上の国境を接していない)は、北米共和国の武装中立宣言に伴う孤立外交でも、特に問題無いといえるものだった)
ローマ帝国は欧州条約機構の結成を呼び掛ける事態となり、フランスやポーランド=リトアニア共和国といった国がまずは加わる事態が起きた。
(尚、フランスやポーランド=リトアニア共和国が欧州条約機構に率先して加わったのは、それこそこれまでの経緯から、ローマ帝国の同盟国だったという事情が大きい。
だから、それ以外の欧州諸国、イギリスやスペイン、ドイツ等のローマ帝国と同盟を締結していなかった欧州諸国は欧州条約機構への加入について、暫く悩む事態が起きた。
単純に考えれば、欧州最大の大国といえるローマ帝国と防衛同盟を締結できる欧州条約機構にイギリス等も加わるべきだったが。
ローマ帝国とオスマン帝国には様々な因縁があるのは、世界中で周知の事実と言って良く、オスマン帝国が既に太平洋条約機構に加入している以上、自分達が欧州条約機構に加入して、ローマ帝国とオスマン帝国の紛争に巻き込まれた場合、日本を始めとする太平洋条約機構の加盟国と自国が戦う事態を、イギリス等は懸念せざるを得なかったのだ)
ともかく日系植民地の自治領化は、そういった波及効果を最終的には引き起こして、世界各国の外交関係を大きく変える随処となったのは間違いなかった。
そして、世界の外交は大きなうねりとなって何年にも亘る激動となった。
これで第69章を終えて、次話から主にローマ帝国の現状を描く第70章になります。
ご感想等をお待ちしています。




