第６９章―２９
ともかくそういった北米共和国政府の動きもあったが、ブラジルや豪州を皮切りに日系植民地の州の間で自治領化の動きが起きるという現実が起きた。
１６０５年現在で言えば、豪州にニュージーランド、カリブ諸島を除く中南米、それに南アフリカといった日系植民地が自治領化を果たす事態が起きていた。
（何故にカリブ諸島が自治領化を果たせなかったかというと、人口的には問題無かったのだが、元をただせば北米共和国の領土で、北米独立戦争の結果として日系植民地になったという経緯からだった。
こうしたことから、カリブ諸島の住民に日系人は少なく、更に言えば原住民に加え、奴隷や年季奉公人として来訪して住民となった黒人、更には少数だがスペイン等から来ていた白人もいて、こういった非日系人が圧倒的多数という現実等から、自治領化を住民が余り望まなかったのだ。
それに北米共和国政府も、カリブ諸島まで自治領化して、独自の軍事力を持つのは看過できないと厳重に言ってきて、日本政府内でもカリブ諸島を自治領化しては、北米共和国に対する挑発行為になるという懸念の声がそれなりに挙がったことから、カリブ諸島の自治領化は、カリブ諸島の住民が余り望んでいないこともあって、この時にはならなかったのだ）
そういった現状に鑑み、日本の国名も正式には「大日本連邦帝国」に改称されたのだ。
そして、こういった状況は、日本と外国、特に琉球王国との関係にも余波が及んだ。
琉球王国は長年に亘って、それこそ「皇軍来訪」に伴って締結されたといえる日本との属国関係を解消して、対等な外交関係を改めて結びたいという要望を日本政府に出し続けていた。
実際問題として、琉球に加えて奄美や台湾（及びその周辺）を領土化した琉球王国の人口は１６０５年時点で軽く１００万人を越える規模にまで膨れ上がっており、日本の属国のままでいるのはおかしいといえる国家となっていた。
そして、日系植民地の自治領化の動きを見て、改めて琉球王国は日本に対して属国関係の解消とそれに代わる同盟関係の締結を申し入れたのだ。
二条昭実首相率いる日本政府は、琉球王国の地政学的な立ち位置と、明帝国と琉球王国がそれなりの外交関係にかつてあったことから、琉球王国が日本の属国関係を解消することに難色を示したが。
（明確に言明する訳にはいかなかったが、日本政府としては、属国関係を解消した琉球王国政府が明帝国にそれなりの援助等を行う事態が起きるのではと懸念したのだ）
琉球王国が満州に展開する日本軍の一翼を軍隊を派遣することで担うとまで主張したことから、太平洋条約機構の一員に琉球王国が成り、日本陸海軍の基地を琉球王国に置く権利を日本が保有する等の内容で、１６０４年に日本と琉球王国の外交関係は対等な関係として結び直されることになった。
そして、実際に１６０５年時点では琉球王国は満洲に派遣部隊を送っていなかったが、１６０６年以降、満州に陸軍１個大隊を琉球王国は派遣するようになった。
だが、このことはこれ又、日本本国の有権者の間では受けが悪い事態を引き起こした。
何だかんだ言っても、６０年余りも琉球王国は日本の属国という関係が続いていたのだ。
それが日本と対等な外交関係を締結するというのは。
勿論、理性的には琉球王国の国力等からすれば、日本と琉球王国が対等な外交関係を結んで然るべきなのは分かるのだが、感情的には属国として見下していた相手が対等な存在になるのは嫌というか、気に食わないというか、そんな想いをする日本の有権者が多数出る事態となったのだ。
（二条首相の義姉の九条敬子の繋がりまで持ち出され、「配慮」があったとまで言われたのだ）
何で全ての日系植民地が自治領化を望まないのか、というと。
自治領化が認められる日系植民地は、日本本国の要請に応えて派兵する義務を負うという前提で自治領化が認められたからです。
裏返せば、自分達が住む日系植民地と関係のないことで派兵して、戦死者が出ることを甘受することに。
それに派兵規模にしても最低が大隊規模で、それなりの人口が必要不可欠です。
こういった事情があるということでお願いします。
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