第69章―28
この章を後3話で終わらせます。
日系植民地の多くが自治領となることは世界的な影響を引き起こして、外交関係にも影響を与えたのです。
ともかく「日系植民地の自治領化法案」が、貴族院及び衆議院で可決成立して法律化されたことによる影響は少しずつ広がっていくことになった。
それこそ細川幽斎や伊達政宗が裏で動いていたこともあり、豪州やブラジル州は満洲に派遣する1個大隊の募集、編制を速やかに州議会で可決して、それに伴う様々な予算措置等を講じることになった。
更にそういった豪州やブラジル州の現状から、日本本国政府も豪州やブラジル州の自治領化に向けた具体的な動きを起こすことになった。
勿論、こういった動きが1日や2日で出来る訳が無いが、そうは言っても半年もあればそれなりの形になるというのも現実であり、1604年夏には豪州やブラジル州から満洲に派遣される独立大隊が編制を完結して現地に赴く事態が起きた。
そして、それを見た他の州、例えばカリフォルニアやメキシコ、ニュージーランド等も相次いで豪州等に続けという動きを示し、それに併せて自治領化していくことになった。
勿論、こういった動きが全て上手く行ったわけではない。
例えば、既に少し触れているが、カリフォルニアの自治領化問題は、北米共和国に過敏な反応を引き起こさざるを得なかった。
更に言えば、カリフォルニアのみならず、メキシコ等にも自治領化を目指す動きが起きては、尚更に北米共和国は警戒心を抱かざるを得ない事態が起きた。
(北米共和国にしてみれば、カリフォルニアに加えて中南米の日系植民地が完全に自治領化しては、最悪の場合は4万人以上の陸軍の増加が、カリフォルニアから中南米の日系植民地で起きると警戒せざるを得なかったのだ。
この1603年頃の北米共和国の人口は、外国人も含めて1400万人と推算されており、平時ということから陸軍の兵力は約4万人、海軍の兵力は2万人といったところだった。
その一方で日本陸軍は約10万人、海軍は約5万人をこれまでは誇っていた。
だから、ぱっと見だと北米の方がかなりの劣勢だが、その一方で日本がそれこそ世界の七つの海を支配するために奔走し、又、世界各地に陸海軍部隊を展開せねばならないことからすれば、北米地域に限れば北米共和国側が優位とされていたのだ。
そういった状況が、日系植民地の自治領化に伴い、カリフォルニアや中南米の日系植民地が自治領化することで大幅に崩れて、日本側が有利な状況が引き起こされてしまうことになる。
北米共和国が厳戒態勢に入るのも、ある程度は当然のことだった)
勿論、日本本国が日系植民地の自治領化を推進したのは、表向きは対建州女直戦争に伴い、陸軍を満州に常駐させる必要が生じたためで、更に言えば対明戦争に備えてということになる。
(更なる本音を言えば、万が一のローマ帝国の東進に備えた動きということになる)
だが、それを北米共和国側が素直に信じて、自国の軍備増強を考えずに済むか、というと北米独立戦争という過去の悪夢が、多くの北米共和国の有権者の間で過ぎるのが現実なのだ。
こうしたことから、北米共和国政府としては、カリフォルニアを始めとする中南米の日系植民地が自治領化することに何らかの枷を嵌めてほしい、と日本政府に要望することになった。
この要望に対して、二条昭実首相率いる日本政府は、北米共和国政府の懸念は心外だが、いわゆる気持ちは分からなくもない、として。
日本本国と新たにできた自治領が加盟する太平洋条約機構という集団防衛機構を改めて結成して、日本本国と自治領が軍事面では統一して動くこと、それは防衛面に限られることを内外に暗に示すことになった。
とはいえ、これはこれで北米共和国政府の要望を二条首相は受け入れたと見られ、日本国内の有権者の反感を買っだ。
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