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第69章―27

 尚、似たような事態は結果的に中国保守党を始めとする様々な他の政党でも起きることになった。

 貴族院が満場一致で「日系植民地の自治領化法案」を可決したということは、それなりどころではない衝撃を、日本本国や日系植民地に引き起こすことになり、各政党の衆議院議員の行動に影響を及ぼすことになったのだ。


 貴族院の議員が満場一致で「日系植民地の自治領化法案」について示した意向を、衆議院は無視して拒否できるのか。

 それに日系植民地の多くが「日系植民地の自治領化法案」推進という立場を取っている以上は、衆議院がそれをすげなく拒絶しては、第二の北米独立戦争といえる事態が起きる可能性があるのでは。

 という日本本国内外の主張を、衆議院議員の多くが否定できなかったからだ。

 こうしたことから、結果的にこの法案についての衆議院の委員会の質疑応答の多くが形式に近い代物になり、衆議院本会議の採決へと雪崩れ込む事態が引き起こされることになった。


 そして、「日系植民地の自治領化法案」の衆議院本会議における採決の場だが。

「やはり池田輝政とて、欠席戦術は採れなかったか」

 伊達政宗はそう内心で呟くことになった。

 何しろ党議拘束を掛けずに、労農党所属の衆議院議員の個々の良心にこの法案の賛否投票を任せる、というある意味では池田輝政の主張通りの採決が行われることになったのだ。

 それなのに欠席戦術等、池田輝政が取れる訳が無かった。


「最も池田輝政にしてみれば、秘密投票である以上は自らは反対投票ができて否決に持ち込める、と考えているのかもしれないが。その考えは極めて甘かった、ということになりそうだな」

 政宗は内心で輝政の浅知恵をせせら笑った。


 さて何故に政宗がそう考えられたのかというと。

「この法案に対する賛否は、個々の議員の良心に任せる。だが、色々と考えて欲しい。我が党結党の際の最大の恩人と言える近衛前久殿の意向。他に南アフリカ植民地開拓等に当たっている植民者が、自治領化の代償として兵を提供したいと言っている現実。それに我が党が政治的責任を負っている現実からして、「日系植民地の自治領化法案」に反対しては、徴兵制無くして満州に駐留する兵を確保できないとして、我が党は徴兵制復活を呼号せざるを得ないということ。こういった現実を全て考え合わせた上で、賛成か反対かを決めて欲しい」

 保守党の衆議院議員総会の場で、尼子勝久党首がそう演説したという情報が、政宗(及び他の多くの衆議院議員)に流れていたのだ)


 尚、似たような演説、指示を多くの他の政党でも党首がしたという情報が流れている。

 内閣、与党が提出した法案だから、ダメなものはダメだという感情的な反対投票が様々な意味でしづらい背景が、こういった状況を引き起こしている。

 

 更に言えば、保守党の衆議院議員の多く、具体的には島津亀寿らが秘密投票でもあることから、この法案に賛成投票をする意向だ、という情報を上里愛を介して、政宗は入手している。

 他にも同様というか、似たような情報が政宗の下に入っており、政宗の最新の情報分析によれば、衆議院議員の3分の2以上が、この法案については賛成投票をすると見込まれていたのだ。


 そして、実際の投票結果だが。

「そう上手くは行かなかったか」

「無事に可決成立したのだから、文句は言えますまい」

「甘い珈琲を飲んで気持ちを落ち着けて下さい」

 政宗は秘書の片倉小十郎と上里愛に慰められることになった。


 結果的に「日系植民地の自治領化法案」は衆議院の約6割の賛成で可決成立したのだ。

 勿論、可決成立した以上は問題無いのだが、政宗にしてみれば自らの票読みが誤っていたのが、極めて残念でならなかったのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 祝:帝国植民地自治領化法案可決! ここで衆議院が否決とかしてたら、暴発する植民地があったかも?まずは目出度い。 [気になる点] まだまだ青い政宗さん。 史実世界の昭和時代、自民党総裁選…
[良い点]  大量リードで勝利と読者も思いきや「6:4」(・Д・)過半数は過半数でもヤバかった、しかし女真戦争直後ぐらいから外地自主独立への動きをやってたら遅すぎて状況的にアウトだった事を思うと年を越…
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