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第67章―13

 そして、アフリカ大陸を一周した後、徳川完子と久我通前は、スペインとフランスに取り掛かることになった。


「現在のスペイン国王はフェリペ3世で、先代のフェリペ2世の息子になるのね」

「更に言えば、フェリペ3世の母であるアナ・デ・アウストリアの実母はフェリペ2世の妹になるから、叔父姪の結婚ということにもなるね」

 自らの父も叔母と結婚している久我通前は、徳川完子の言葉に考えずにそう返したが、完子と上里美子は内心で引くことになった。

 完子と美子は、実の叔父姪や叔母甥の結婚はよろしくないのでは、と考えていたからだ。


 実際、フェリペ2世とアナ・デ・アウストリアの間には5人の子どもが産まれているが、無事に成人に達したのはフェリペ3世だけだ。

 それ以外の4人の子が夭折していることからして、近親婚の弊害は明らかにしか二人には思えなかったのだ。

 更に言えば、フェリペ3世自身も病弱であり、又、昨年の1599年に結婚したが、その相手はフェリペ3世の姪になる、オーストリア大公カール2世の娘のマルガリータ・デ・アウストリア=エスティリアという叔父姪の近親婚をしている。


(これはポルトガル王国が財政破綻しているという惨状にあり、又、フランスとスペインの関係が微妙であることから、同じカトリックで結婚するとなるとドイツ帝国の皇室関係者しか、スペイン国王には選択肢が無かったという事情から起きたことだった。

 とはいえ、フェリペ3世の息子のフェリペ4世の代からは、こういった近親婚の弊害をスペイン王室は免れることになるのだが、それはもう少し先の話になる)


「フェリペ3世の宰相は別にいるけど、国王の寵臣として実権を握っているのは日本に留学していたフアン・デ・メンドーサ・イ・ルナ侯爵とされているらしいわね」

「実際、このルナ侯爵の提言から、スペインは立憲君主制に移行しようとしているらしいよ。例えば、これまでにあった身分制議会を、日本と同様の国会に改編しようとしているとか」

「上手く行けばいいけど」

「上手く行かなければ、ローマ帝国の属領にスペインはなる。それを諸君は甘受するのか、とまでルナ侯爵は獅子吼しているらしい」

 完子と通前は遠慮のない会話をした。


「本当にスペインは色々と大変な現状にあるみたいね。そういえば、フランスはどうなの」

「現在のフランス国王は、アンリ4世だね。フランス国王に即位したときは、フランスは内戦の真っ最中で、アンリ4世はユグノー(プロテスタント)だったとか。でも、国内を安定させるためにアンリ4世はカトリックに改宗して、ローマ帝国と積極的に手を組んで、ウクライナにも自らフランス軍の一員として赴くまでのことをしたとか。そうしたことから、ローマ帝国から好意を寄せられて、同盟国になり、その後援を受けてフランスも立憲君主制を受け入れた国家に変わろうとしているようだ」

 完子の問いかけに、通前はそう答えた。


「具体的にしているようなことはあるの」

「フランスも身分制議会、全国三部会を招集して、国内改革を進めようとしているようだよ。唯、三部会では無くなるという噂が流れている」

「一体どうして」

「聖職者からなる第一部会を集められないから。ローマ皇帝はカトリックの聖職者に各国の政治に余り参加するな、と指示している。こうしたことから、第一部会の招集にフランスは苦労していて、いっそのこと全国三部会を貴族院、庶民院に変える動きがあるとか」

「そう言う事情があるの。それにしても、スペインもフランスも立憲君主制国家になろうとしているのね」

 完子と通前はそんなやり取りをした。


 美子は考えた。

 スペインやフランスも立憲君主制になろうとしている。

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― 新着の感想 ―
[良い点] フアン・デ・メンドーサ・イ・ルナ侯爵、奮闘。 スペイン王国は、ローマ帝国に尻尾を振っても、当分、同盟国にはして貰えそうにないし、その様なことを出来る立場でもない。何がなんでも改革し文明開化…
[良い点]  皇軍来訪の改変は各地に大なり小なりさまざまな波紋を浮かべている中で立憲君主制の萌芽は史実以上に各国に受け入れられている模様、今後ゆるやかに王権が衰微しても史実のヨーロッパ諸国で起きた馬鹿…
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