第67章―11
徳川完子と久我通前は疲労困ぱいといっても過言でない状況で、続けてオスマン帝国に取り掛かざるを得なかった。
(尚、ここまで調べてまとめるのには当然に時間が必要で上里美子の助言もあり、この時点で北米共和国はほぼ省略することになった)
「オスマン帝国はスルタン=カリフ制を、ローマ帝国復興戦争の結果として採用したと」
「聖地の守護者としてローマ帝国復興という危機に対処するために、カリフを復活させて、スルタンのメフメト3世がカリフを兼ねることになったと」
「何しろメッカとメディナというイスラム教徒にとっての二大聖地を統治する存在でもあるから、カリフになってもそう違和感がないな」
「それにカイロ・アッバース朝の最後のカリフであるムタワッキル3世から正式にカリフの地位の譲渡をオスマン帝国のスルタン、セリム1世に行っているのだから、正統なカリフと言えるわね」
「それ故にほぼ世界中のイスラム教スンニ派の信徒から、メフメト3世がカリフとして承認されているのか」
完子と通前の2人はそんな会話を交わした。
「そういえば、カリフとローマ教皇の2人が、聖地エルサレムはユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒の3つの宗教にとって聖地である、と言明したことが、エルサレムの自治を宗教的にも保障しているのよね」
「本来ならばユダヤ教のラビも加わるべきだったのでしょうけど、カリフやローマ教皇と肩を並べられる程の世界的な権威を持つユダヤ教のラビはいないから、仕方ないけどね」
「一応は聖地エルサレムのラビも、この件についてカリフやローマ教皇に同意しているけど、そのラビに従わないユダヤ教徒もいるとか」
2人の会話がそこまで入り込んできたので、美子が口を挟んだ。
「ユダヤ教と一口にいうけど、その内部は色々と宗派が分かれているの。聖地エルサレムに住んでいるユダヤ教徒の宗派も分かれていて、一応は聖地エルサレムのラビとして、エルサレムに住む多数派からラビが選ばれているけど、少数派はラビと認めていないのよ」
「そう言う事情があるのね」
美子の言葉に完子はそういって済ませた。
何しろ先日の会話で、宗派の違いに下手に触れると美子の地雷を踏むのが分かっている。
だから、通前も内心で同意したが、完子はそれで済ませたのだ。
「それにしてもオスマン帝国の領土は減ったとはいえ、未だに広大だね。アナトリア半島からアラビア半島、メソポタミアからレヴァント地方北部やカフカス山脈南部を領土として確保している。後、クリミア・ハン国も属国といっても、ほぼ独立国らしいけど、そこも保護しているのか」
「それに宗教的権威も持っているから、日本にとって大事な同盟国になるのは当然ね」
2人は、それでオスマン帝国のまとめを終えた。
「続けてローマ帝国と行きたいけど、ここはどうする」
「それこそモスクワ大公国と現在進行形で大戦中だし」
「領土的にはエジプトからチュニジアまでの北アフリカ、イタリア半島とシチリア島、サルデーニャ島、バルカン半島にウクライナ、レヴァント地方南部を領土化しているな」
「政体に関しては専制君主制と言っても過言ではなく、エウドキヤ皇帝が親政しているとか」
「実際には上里勝利大宰相とか、有能な文官や軍人が皇帝を支えているのでしょうけど」
「それくらいで済ませるか」
疲れとそれこそ戦争中ということもあって、二人はローマ帝国についてはあっさりめで済ませた。
実際、余りの新興国で領土も拡大中とあって、図書館の司書もローマ帝国に関する書籍資料となると探すのに苦労する有様だった。
それこそ5年前に出版された書籍でさえ、ウクライナには触れていない有様なのだ。
仕方ないと2人は諦めた。
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