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第65章―3

 実際、日本本国と日系植民地の力関係は徐々に変化していた。

 それこそ植民地開発が大きく進められていた北米独立戦争勃発前の頃までは、植民地は日本本国にとって単なる資源供給地帯と言っても過言では無かったのだが。


 北米独立戦争が終結して北米共和国が独立して、更にローマ帝国復興が起きる中で、又、イングランドやスペイン等の欧州諸国が、徐々に日本及び日系諸国を見習って様々な国政改革を行い、工業化を図っていったこと、という大きな世界情勢の変化があっては、、それによって日本本国と日系植民地の力関係も変わっていくのは当然だった。


 北米共和国が独立する頃までは、それこそ日本本国の様々な工業製品は、質量共に世界最高峰を誇っていたといっても過言では無かった。

 だが、北米共和国が独立して独自の工業化を進めたこと、又、ローマ帝国等も工業化を進めたことは、そういった日本本国の工業製品の優位性を徐々に失わせた。

 更に厄介といえたのが、日本本国の人件費の高騰だった。


 これはある程度は必然的な代物といえる。

 工業化が進み、それによって生活水準が徐々に向上して、という流れが起きれば、当然のことながら生活費が上がって、その生活を維持するために給料も上げられて当然になり、人件費も上がるからだ。


 そして、これに経営者が対処する方法となると幾つかある。

 例えば、正規従業員をより安い非正規従業員に切り替えるという方法である。

 だが、(この世界の)日本の経営者は、更によい方法に気づいた。

 労働規制が緩く、更に年季奉公人制度さえ名目上はまだまだ健在の植民地に工場を移転することで、人件費を切り下げて、それで利益を上げようと多くの経営者が考えたのだ。

 こういったことから、日本本国の工業の空洞化が起こりだしていた。


 更に厄介な事態を引き起こしていたのが、農林水産物だった。

 特に農業製品が深刻だった。

(この世界の)日本は、初期の日系植民地開発において大量の移民が農村部から出て行ったこともあって、史実よりも農業規模の拡大が行われていたが、そうは言っても日本本国の地形上、農地の大規模化に限度があるのは当然だった。


 日本本国の場合、何だかんだ言っても5ヘクタールの農地を持っていたら、それこそ小作人、農業労働者を雇わないと一家で経営するのは困難だったが。

 日系植民地の場合、5ヘクタールの農地等、一家で経営する規模としては平均以下というところが、南米や豪州等、それなりどころではなくあったのだ。


 そして、科学技術等の進歩は、化学肥料や農薬等の開発から量産化にまで至っており、それらは必然的に農産物の生産量の劇的な増加をもたらしたが、裏返せば豊作貧乏を世界的に引き起こした。

 分かりやすく言えば、農産物の過剰生産による買いたたき、値段の暴落という事態である。


 これが外国産の農産物ならば、自国農業保護の為に関税を掛ける等の方法が採れるが。

 日本本国の場合、日系植民地からの農産物の売り込みに対して、関税を掛ける等は極めて困難な話になってしまう。

 そんなことをしては、日系植民地の住民が、植民地差別等の声を挙げて大反発を引き起こすのは必然だし、最悪の場合、北米独立戦争のような事態さえも懸念せざるを得ない。

 何しろ、従前から日系植民地の間では、国政参政権が認められていないこと等から独立論がくすぶっている現状までもあるからだ。


 こうした背景が、日本本国の国民の一部から、日系植民地が独立を目指すのならば、それを阻止する必要は無い、むしろ歓迎すべきことではないか、との声を挙げる事態を起こしていた。

 だが、それはまだまだ少数であり、舵取りに多くの日本の政治家が苦心していることだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 困った問題ですね。 歴史でオーストラリアの農産物輸出がイングランドの農業を壊した。 一先ず日本農業に補助金を与えるべきです。 [一言] 独立目指すことは無茶すぎるな。 外交や軍事を共同…
[一言]  内憂外患なれど史実の西欧と植民地の人種的な根本対立でない分なんとかなりそうに思えるけど当事者にはそんな事関係なく難題ではあるんだろーなーと完全に傍観者視点な読者でした(^皿^;)まあ史実日…
[良い点] 史実世界の小英国主義や、その模倣の小日本主義と類似の主張が徐々に出て来ていること。北米共和国独立戦争の様になるよりマシ。
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