第63章―9
ネコ好きな方からすれば、怒られる描写がありますが、平にご寛恕を。
実際にネコは世界の侵略的外来種ワースト100の1つに実際に入る程、飛べない鳥等を襲うことで生態系を破壊している存在なので、登場人物が危惧する事態を引き起こすのも当然なのです。
「あそこにカロライナインコの集団がいますね」
「あっ、本当だ」
保護区の中を暫く車で走っていると、望月千代子が声を挙げて指さした方向に、カロライナインコを見つけた上里美子は歓声を瞬間的に挙げた後、オペラグラスを使った観察に黙って励みだした。
それを横目で見ながら、少し声を潜めて千代子と上里愛は会話を始めた。
「結局のところ、保護区が上手く行っていないのは、どういう理由と考えられているのですか」
「それこそ複合的な理由です。保護区内で密猟を行う犯罪者もいる。更には外来種による問題等も起きています」
「外来種ですか」
「ええ、まずはネコ、ブタ、ヤギといいますでしょう。他にも色々と意図したり、意図しなかったりで外来種が問題を起こしています」
「確かに外来種は厄介ですね。犯罪者は取り締まれば済みますが、外来種はそうはいきません」
「ベーリング島の知見が活かされてはいますが、思わぬ外来種問題が起きることさえありますから」
千代子と愛は気が重くなる会話を、美子の傍でしていた。
さて、ベーリング島の知見とは何か?
この際にメタい視点も併せて説明すると。
ベーリング島で史実の名前で言えばステラーカイギュウ、この世界で言えばミカドカイギュウが発見されたことから、ベーリング島はミカドカイギュウ保護の為に島全体が自然保護区とされて、監視員が常時配置されることになった。
とはいえ、ベーリング島はそれなりに大きな島(具体的な数字を挙げれば約1660平方キロの面積があり、香川県に近い面積を誇る)であり、監視員の数もそれなりでは済まず、定期交替する人員も含めれば海洋監視の必要もあって、数百人単位でベーリング島に人が住むようになったが。
ベーリング島の気象条件は極めて厳しく、濃霧が度々発生して、更に強風が吹き荒れることから森林が育たない土地でもあることから。
監視員の無聊を慰めると共に、それなりの収入の路も必要だろうとしてラッコ等の狩猟が監視員に必要最低限度で認められた。
ここまでは良かった話になる。
だが、監視員のための食料を運び込み、又、ラッコの毛皮等を売却する中で、いつか複数種のネズミがベーリング島に住み着いてしまったのだ。
そして、ネズミ対策としてネコが導入されたのだが、このネコがトンデモナイ事態を起こした。
何とネコがネズミを捕ることなく、メガネウを度々襲うという事態が起きて、メガネウの数が激減する事態になってしまったのだ。
ネコにしてみれば、捕まえにくいネズミを捕るよりも、飛ぶのが下手なメガネウを襲った方が楽に腹が満たせるという理屈からの行動だったのだろうが。
人にしてみれば、思わぬ事態としか言いようが無く、慌ててベーリング島からネコを駆除する事態にまで至ったのだ。
更にこの件が周囲に広まるにつれ、他にも色々と外来種問題が起きていることが分かってきた。
ネコは他の土地でも似たような感じで、様々な動物を狩っているのが判明した。
ヤギも管理飼育下にあればまだしも、そこから逃げ出した場合、それこそ草木を大量に食べる習性から、草木を根絶やしにして、土壌流出まで引き起こした例が判明した。
ブタにしても農場から逃亡すると、悪食といってよい雑食の性質から、小動物を食べたり、草木を食べることで土壌流出等を引き起こしたりするのが判明した。
他にも外来種問題は色々な動物が引き起こしているのだが、特にネコ、ヤギ、ブタに関しては人間にしてみれば長きに亘ってペット、家畜として身近な動物だっただけに、このような問題を起こすとは思わなかったと驚かれて、更に対策に頭を痛める事態にまでなったのだ。
千代子も愛も、頭が痛くなる問題としか言えなかった。
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