第63章―6
場面が変わり、上里姉妹が北米共和国内の生物保護の現状を見学していきます。
微妙に描写が前後する。
さて、武田家と挨拶等を交わした翌日、上里愛と美子はカロライナ州にあるカロライナインコやハシジロキツツキ等の保護区とされている地域を訪ねていた。
尚、言うまでもないことだが、二人の保護区への訪問許可については、武田信光大統領直々に、
「可愛い従妹達の頼みだから」
の鶴の一声で、問題なく許可証が発布されている。
(念のために述べると、人数等の様々な制限はあるが、基本的に申請さえすれば、審査のうえで問題ない人間ならば保護区の訪問許可証が発布されるのが大原則である。
だが、現実問題として、外国人となるとその許可証発布に時間が掛かるのが通例で、下手をすると難癖を付けられて、許可証発布がされないのも稀では無かったのだ。
だが、上里姉妹はそういったことについては、大統領のお声掛かりで回避できた次第だった)
「この保護区はどれだけ広いの」
「ざっと1000平方キロといったところです」
「えっ」
美子の問いに助手席に乗っている望月千代子は即答して、その答えに美子は絶句した。
実際に大雑把に言って、約30キロ四方余りの広さをこの保護区は確保している。
「流石に北米共和国ですね。これだけ広い保護区を設けられるとは。日本だと一騒動です」
「でも、これでも充分とは言えないのではないか、という声が絶えないのですよ。実際にカロライナインコやハシジロキツツキの数が保護区内でも減少傾向にあるようで、保護区の管理をしている者達はどうすれば良いのか、本当に頭を痛めています。保護区外だと尚更です」
まだ会ってから3日程だが、上里愛と望月千代子は相手をそれなりの相手だとすぐに認めて、そんな会話を交わせるようになっていた。
「保護区を設けるだけでは充分では無いの」
「ベーリング島の話を覚えていないの。必ずしも保護区を設けて、法律で狩猟を禁止すれば大丈夫という訳にはいかないのよ」
美子の質問に愛は即答して、その傍で千代子は愛の言葉に肯いた。
「でも、狩猟を禁止すれば、かなり状況は良くなることが多いのでしょう」
「良くなることが多いだけよ。絶対に良くなるわけでは無いのよ」
愛と美子がやり取りをしていると、千代子が口を挟んだ。
「広い保護区を設けても、悪い側面が生じることもあるのです。保護区を監視する人員が足りなければ、保護区内での密猟が蔓延ることがあります。保護区にいる動物は、保護区外の動物より警戒心が薄い傾向がある。だから、密猟者にしてみれば、保護区内の動物の方が狙いやすいのです」
「そうなんだ」
千代子の言葉は、美子の知らない側面を衝くもので、美子を得心させた。
「ハシジロキツツキはともかく、野生のカロライナインコの捕獲は原則禁止されていますが、人工飼育で生まれ育ったモノについては売買等が認められています。だから、野生捕獲して人工飼育で生まれたと偽って売る輩が絶えませんね。実際、野生捕獲が禁止されたことで、カロライナインコの人気が高まって、値段が高騰しているのです」
「それは厄介ですね」
千代子の言葉に、愛は寄り添った。
「更に言えば、カロライナインコは果樹園の果樹を積極的に食べる害鳥でもあります。だから、果樹園の持ち主とかからのカロライナインコの食害で被害が出ている以上は捕獲を認めて欲しいという要望が絶えない現実があり、それに押されて捕獲を州政府が例外として認める例が絶えず、それもカロライナインコの減少に拍車を掛けることになっていますね」
「そんな現実までがあるのですか」
助手席からの千代子の更なる言葉に、後部座席に並んで座っていた上里姉妹の中で愛は驚いて言い、美子はその現実に驚く余りに、何も言えなくなってしまった。
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