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第60章―7

 更に言えば、後世の多くの歴史家の憶測ではあるが、日本というか「皇軍」がもたらした様々な科学知識が、マンダ教徒にもたらされたことが、マンダ教徒の変容をもたらしたともされる。

 マンダ教の根幹の一つにあるのが、天界の光る水が地上界へと流れているという教えである。

 原初期の頃のマンダ教では、その天界の光る水が流れ下ってくるのがヨルダン川とされていたが、マンダ教徒がヨルダン川の畔からチグリス・ユーフラテス川流域に移住したことに伴って、チグリス・ユーフラテス川にも天界の光る水が流れ下っていると、この16世紀頃には説かれるようになっていた。


 だが、北米共和国内に移住してきたマンダ教徒の間では、天界の光る水は地上界へと流れ下って、全ての川から海へと更に下っていき、海から天界に戻ると説かれるようになっていったのだ。

 この教えは、水の地球における空から地上へ、更に川から海へ、又、空へと循環していく科学知識が背景にあることから、そういったことから、この世界に様々な科学知識をもたらしたといえる「皇軍」が結果的にマンダ教徒の変容をもたらした、と推論される事態が起きているのだ。


 こういったマンダ教の変容が起きたのは、様々な要因が絡んでいる。

 それこそイラク南部から北米共和国内へのマンダ教徒の大規模な移住が背景にあり、又、「皇軍」知識のマンダ教徒の受容という側面もあったが、他にもそれらによる波及効果というのもあった。


 北米共和国内への大規模な移住は。必然的に地元に根付いていた宗教的感情等を結果的に断ち切る事態を引き起こし、マンダ教の教義が揺らぐ事態にまで至ってしまった。

(そもそもそうでなければ、天界の光る水に関する教えが変容すること自体が無かった)


 そして、イラク南部におけるイスラム教スンニ派至上主義者による迫害から北米共和国に逃亡することで逃げられた、と多くのマンダ教徒が考えていたら、ここでも法華宗不受不施派による宗論という名の迫害に遭う事態が起きたのだ。

 それこそ、命からがら逃げてきて、これからは安楽に暮らせると考えていたところに、更に迫害に遭うような事態に遭っては。

 多くのマンダ教徒が逃げていてはやられるだけだ、戦って迫害を跳ね返そうという考えに至るのは、ある程度は止むを得ない話だった。

(それこそ、第二次世界大戦で大規模な迫害に遭ったユダヤ人が、パレスチナの地で積極的にアラブ人を始めとするイスラム教徒らと積極的に戦うことになり、中東戦争に至ったようなものである)


 ともかく、こうしたことから地域宗教に過ぎなかったマンダ教は、北米共和国内に移住したことから、積極的に周囲に布教していこうとすることになり、更に教義も徐々に変容していった。

(例えば、以前はヨルダン川やチグリス・ユーフラテス川にしか、天界の光る水が流れ込んでいなかったのに、今や世界中の川に天界の光る水が流れ込んでいるとマンダ教は説くようになったのだ)


 とはいえ、これだけだったら、そんなに大きくマンダ教が北米共和国内で広まることは無かったかもしれない。

 だが、この動きに過敏に反応した国があった。

 それはローマ帝国だった。


 ローマ帝国の国教といえるのは、言うまでも無く東方正教、キリスト教である。

(勿論、異教徒についても国民の信仰の自由が認められてはいるが、女帝エウドキヤが熱心な東方正教徒である以上は当然の事態と言えた)

 そして、キリスト教徒にしてみれば、グノーシス主義は不倶戴天の仇敵と言え、実際にグノーシス主義に染まった分派、例えばカタリ派等を異端であるとして撲滅に奔ったことさえあるのだ。

 だから、マンダ教徒をローマ帝国は攻撃せざるを得なかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  なんかすんごい反応があっちこっちで(^皿^;)おそらくヨーロッパ圏で最も宗教的に寛容(オーソドックスとカトリックにプロテスタントなどキリスト教の三大潮流が国内に混淆し、それプラスユダヤ教…
[良い点] う~ん、マンダ教徒も不受布施派も、ガチで他の宗教宗派に喧嘩を押し売りするような教義。少年ジャンプの登場人物同士なら、「強敵と書いてトモと読む。」という具合に拳で語り合った後、親友になるのだ…
[気になる点] マンダ教徒の教義は、皇軍の齎した科学によって正しさを裏付けてしまいましたが、移民との軋轢から自身を守るために武相する事態まで発展しないことを祈ります。 迫害された者は、他者に攻撃的に…
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