第59章―16
そんな不満を抱えつつも、加藤清正はローマ帝国軍を指揮して、アンリ4世が率いるフランス軍と共闘して、キエフを目指すローマ帝国軍の後方、補給路を、ポーランド=リトアニア共和国軍の襲撃から庇護しようと努めていた。
とはいえ、1本の補給路に頼っていては、それこそポーランド=リトアニア共和国軍の後方襲撃の好餌になるのは自明の理と言ってもよい。
そうしたことから、ローマ帝国軍総司令部としては、他の補給路も開設しようと努めることにした。
そのために6月下旬のある日、
「かなり苦戦されているようですな」
「羽柴秀頼殿が何故にこのような場に」
いきなり羽柴秀頼に、ドニエステル川の川辺で声を掛けられ、加藤清正は驚く羽目になった。
「いやあ、佐々成政将軍にいきなり呼びつけられ、ドニエステル川や南プーフ川の水運を整備するようにと命ぜられるとは思いませんでした。とはいえ、かなり戦況は悪いようで、私のような者まで駆り出されないといけないようですな」
羽柴秀頼は飄々とした感じで、加藤清正に更に言い、加藤清正は絶句して言葉が暫く出なかった。
「それから安心してください。それなりに護衛というか、ドニエステル川や南プーフ川を航行する際の安全を確保する者はおりますので」
羽柴秀頼は更に言い、実際に加藤清正が目を配ると、作業員ばかりではなく、それなりに武器を持った面々が羽柴秀頼の周囲にはいた。
「それにしても、改めてお伺いしたいのですが、何故にこのような場まで」
「陸路だけで補給を維持するのは大変だろう、というのが一つ。後、ドニエステル川や南プーフ川の制水権をローマ帝国が確保すれば、河川を鉄床としてポーランド=リトアニア共和国軍の後方襲撃を封じれるだろう、という目論見が一つだ、と佐々成政将軍から私は言われました。実際問題として、それなり以上に正しい方策ではないでしょうか。そして、運河開設等にずっと従事してきたことから、水運についても詳しいことから、私がこの場に赴くことになったのですよ」
「確かに佐々将軍の考えは正しいでしょうな」
加藤清正と羽柴秀頼はやり取りをした。
「取り敢えずはウクライナの河川、ドニエステル川や南プーフ川を使った水運を整備して、ローマ帝国軍の補給路の整備に努めるつもりです。序でにと言っては語弊がありますが、ポーランド=リトアニア共和国軍の河川越しの移動阻止も行いましょう。こうしていけば、かなりポーランド=リトアニア共和国軍の遊撃戦を封じることができるのでは」
「確かに言われる通りです」
二人のやり取りは続いた。
加藤清正は考えた。
遊撃戦を展開するポーランド=リトアニア共和国軍を、我々が川岸に追い詰めて退路を断って殲滅していくというのが、現状からすればもっとも効果的な遊撃戦対策ということになるだろう。
更にどうにも自分には癪に触って仕方がないが、石田三成が金をばらまいて道路や軽便鉄道の整備に住民を協力させることで、住民の間にローマ帝国に味方した方が良いのでは、という空気が徐々に漂いつつあるのも、有効な遊撃戦対策になりつつある。
遊撃戦を展開しているポーランド=リトアニア共和国軍にしてみれば、住民が自発的に食料等を提供してくれていたのだが。
ローマ帝国の対応を見た住民は、ポーランド=リトアニア共和国軍に代償を求めるようになりつつあり、従前通りに自発的に無料で提供しろ、とポーランド=リトアニア共和国軍が住民に迫る事態まで起こるようになっているとか。
更にドニエステル川や南プーフ川といった河川越しの移動までも、ポーランド=リトアニア共和国軍が困難になっていけば、我々が徐々に有利になっていくのは間違いないだろう。
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