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第8章ー15

 そのような悲劇がマラッカで起きたことを日本側が知る由もなく、8月31日にマラッカに対する日本軍の総攻撃が始まった。

 事前の航空偵察により、ポルトガル軍の防御態勢は丸裸にされていたと言っても良く、まずは日本海軍の艦砲射撃から全ては始まった。

(なお、これはポルトガル軍に、対空擬装等の考えが全く無かったという要因も大きい。

 空から偵察行動が綿密に行われる等、ポルトガル軍にしてみれば、全く想像できないことだったのだ)


「数日前からの航空偵察により、完全にポルトガルの防御陣地の状況は把握できた。今から全艦、事前割り当ての計画通りに艦砲射撃を開始せよ。全目標を破壊しつくすか、全弾射耗するまで撃ち続けよ」

 8月31日早朝に、水上偵察機に搭乗した偵察員からの報告を受けた小沢提督は、この場に集っていた麾下の戦艦2隻、重巡洋艦8隻を主力とする連合艦隊の全艦艇を投入して、ポルトガル軍の防御陣地に対する事前艦砲射撃を開始する号令を発した。

 数日前からの航空偵察により、各艦隊、戦隊、更に各艦艇レベルで目標は割り振られている。

 既にマラッカに叩きこまれていた砲弾量も併せれば、軽く1000トンは超える、いわゆる鉄の暴風雨がこの時のマラッカには吹き荒れることになった。


 マラッカ防衛に当たるポルトガル軍は、住民からの志願兵を(半強制的に)募った結果、1万を超える数には達していたが、この当時の半ば常識として、その過半数は槍兵であり、全てを併せても銃兵は4000に満たなかったと生き延びたポルトガル軍の将兵は述べており、日本軍の観察も同様だった。

 なお、ポルトガル軍には、各種の口径の大砲も50門程あったらしいが、その多くが海に向けられた固定砲台に据え付けられたものであり、野戦用に使用できるものは20門程度だった。

 もっとも、それらの大砲全てが、この時の連合艦隊がもたらした鉄の暴風雨、艦砲射撃の前に、第16師団を主力とする日本陸軍の攻撃が始まる以前に破壊された。


 辻政信大佐の記録によれば。

「ポルトガル軍は、どう見ても将兵の過半数が銃以外の武器、刀や槍を持つ有様で、銃兵が全く足りていなかった。これでは第16師団を主力とする我々、日本陸軍の攻撃を、陸軍だけ比較しても阻止できないのは半ば当然だった。

 これに対して、我々には圧倒的な艦砲射撃の事前砲撃という有利な点が付け加わっていたのだ。

 マラッカ防衛のために、ポルトガル軍は様々な大砲を約50門程、持っていたらしいが、この艦砲射撃の嵐の結果、日本軍が総攻撃を開始する前に、全ての大砲が使用不能になっていたという。

 時代が違う軍隊が激突した結果が、このような無惨な事態を引き起こした」


 マラッカに対する鉄の暴風雨が吹き荒れるのを止めた時、ポルトガル軍の防衛陣地は、無惨極まりない状態に陥っていた。

 ポルトガル軍の陣地が、20世紀の頃のように、鉄筋コンクリート等で固められていた訳が無い。

 ポルトガル軍は、この当時の常識にのっとり、塹壕を掘り、杭等を組む陣地を築いて、日本軍の騎兵や歩兵の突撃を阻止しようとしたのだが、そんな陣地で、戦艦や巡洋艦どころか、駆逐艦の艦砲射撃でさえ、耐久出来る筈が無かった。


 ポルトガル軍の陣地には、大量の死傷者が溢れかえっていた。

 陣地の一部では、艦砲射撃による大穴が空いており、更に砲撃によって吹き上げられた土砂等により、生きながらにして埋められた兵も稀ではなく、中には窒息死した兵までいた。


 この状況を現場で実見した辻大佐は、次のような記録を遺した。

「異世界に攻撃を行ったのか、という感慨さえ自分は覚えざるを得なかった。海軍の行った艦砲射撃は、大威力を発揮していた」

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