第57章―5
かくして大和級戦艦の攻撃力のカギとなる主砲や副砲兼高角砲は、こういった経緯が検討された末に決められることになった。
そして、航空機の脅威に対処する必要が認められた結果、副砲兼高角砲の12.7サンチ砲には近接信管が開発、採用されることになった。
又、対空機関砲も20ミリと40ミリの機関砲が共に採用されて、大和級戦艦に搭載されたのだ。
(言うまでも無いことかもしれませんが、日本海軍の他の軍艦にも似たような感じで、対空火器として20ミリと40ミリの機関砲がそれぞれ搭載されるようになっています)
装甲にしても、主砲塔を始めとする枢要部分は、自らが搭載する46サンチ砲弾に抗堪できるだけの装甲板が張り巡らされることになった。
(本来から言えば、艦体を始めとして全ての部分に装甲板を張り巡らせたかったが、流石にそんなことを実際にしては鈍重極まりない戦艦になる以上、大和級戦艦は基本的には枢要部分のみに装甲板を張ることになった。
そうは言っても、46サンチ砲をこの世界で搭載しているのは、大和級戦艦のみである以上、十二分な防御力を持つ戦艦と大和級戦艦はいえた)
そして、肝心な速力についてだが、基本的に大和級戦艦の最高速力は27ノットとされた。
これについて、もう少し高速化、具体的には30ノット超えにすべきだったと批判されたが。
実際問題として、水深が深い海域において、極めて短時間、機関に過負荷を掛けての全力運転を行った場合は29ノットが記録されており、決して鈍足な戦艦という訳では無かった。
(ちなみに(この世界でも)金剛級戦艦の最高速力は約30ノット、長門級戦艦の最高速力は約25ノットであり、大和級戦艦は長門級戦艦よりも俊足といえる戦艦だったのだ)
更なる余談というか、一部の人からすれば極めて重要な話をすれば。
大和級戦艦にはレーダー(電探)やソナー(水中探信儀)についても、この1595年時点では最新鋭機材を搭載して就役することになった。
こうなった遠因だが、北米独立戦争に際して戦艦「金剛」が北米共和国の潜水艦に雷撃で沈められたことにあった。
二度とそういったことが無いように、と言う観点から、(この世界の)日本海軍はレーダーやソナーの研究開発に狂奔することになった。
更には、北米独立戦争終結後に就役した艦船、及びそれ以前に就役していた艦船については改装の際にレーダーやソナーを標準装備する方向にまで奔ることになった。
(ある意味では、多くの日本人が示す凝り性が発揮された事案ともいえる)
こうした状況にあったことから、大和級戦艦にはレーダーやソナーが就役時から装備されることになったのだ。
尚、その性能についてだが。
「大和級戦艦の電探だが、月光の無い闇夜でも探照灯無しでの対艦電探射撃が可能と聞くが、何処まで本当なのかな。そして、大和級戦艦の水中探信儀についても、最高速力で航行中ならともかく、巡航速力で航行中ならば極めて有効で1万メートル以内の潜水艦の魚雷発射音を探知可能と聞くが」
上里丈二中佐は、内心で呟いた。
実際に上里中佐が把握している情報は、ほぼ正しかった。
実戦に際して本当に上手くいくかどうかはともかくとして、少なくとも演習時においては、上里中佐が言う通りの性能を、大和級戦艦に搭載されたソナーやレーダーは発揮することに成功していた。
(そうは言っても、夜戦はほぼ必然的に混戦に陥って、味方撃ちも稀でないことからすれば、大和級戦艦を夜戦に投入するのを、日本海軍は躊躇わざるを得ない等の状況ではあった)
上里中佐は、大和の威容を見て改めて想った、
順調に海軍は質的向上を果たしているが、陸軍の現状はどうなのだろうか。
これで海軍の話を終え、次話からは陸軍の話になります。
(とはいえ、私の悪癖で真田家の話が混じりますが、どうかご寛恕を。
ここで描いておかないと描く機会を本編で逸するもので)
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