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第54章―8

「島津義弘大将を新内閣の陸相に迎えるというのを、新内閣の目玉人事にしようと考えています。更に言えば、その提案をしたのが、中国保守党率いる小早川道平ということにしたいと」

「成程。政敵である前首相の弟でも有能であれば陸相として迎えるということで、人事の公平さを宣伝して、更に言えば、その功績を私に与える。本来からすれば、歓迎すべきかもしれませんが、保守党から労農党へ中国保守党が支持を切り替える代償としては、何とも言い難い提案ですな」

「ですが、貴方ならば全くおかしくない提案でしょう」

「確かにその通りですな」

 木下小一郎と小早川道平は、腹に一物を抱えたままでやり取りを続けた。


 島津義弘大将は、様々な現実から、表向きは陸相就任を諦めているらしいが、そうは言っても、陸軍の最高職といえる陸相に就任したい、と本音では考えているらしい。

 だが、実兄の島津義久は、様々なしがらみから自分を陸相にすることは無いだろうし、普通に考えれば実兄の政敵である木下小一郎が首相になった場合、自分を陸相に選ぶ筈が無い。

 だから、単純に木下小一郎が島津義弘を陸相に選んでは、島津家の兄弟仲を割くための策謀ではないか、として島津義弘はこの選任を固辞するだろう。


 だが、この提案を小早川道平が行ったとすればどうか。

 小早川道平が、小早川一族を介したつながり等から、陸海軍部と深いつながりがあるのは、それこそ多くの国民が知っていることだった。

 更に中国保守党の支持基盤の一つが、元軍人(現役軍人は、軍人勅諭等によって表向きは政治に関わることが厳禁とされており、軍部の政治介入は元軍人を介して行われようとすることが多発していた)であることから、小早川道平が中国保守党を率いて与党に参画する条件として提示したとしても、全く違和感のない話になるし、島津義弘としてもこの提案を受け入れやすいだろう。


 そんなやり取りを暫しした末に、小早川道平が手を挙げることになった。

「分かりましたよ。対外強硬政策という一点共闘から、中国保守党は木下小一郎内閣に参画することにしましょう。但し、それで中国保守党内部がまとまらなければ、この話はご破算ということで。更に木下小一郎内閣に参画する条件として、島津義弘大将の陸相就任を求めたということにしましょう」

「流石は小早川殿」

 小早川道平の言葉を受けて、木下小一郎は頭を下げながら言った。


「唯、こちらもそれなりの条件を更に付けさせてもらいます」

「何なりと」

「世界最大最強の戦艦建造と、世界最強の戦車の開発量産を認めて頂きたい」

「戦車はともかく、戦艦の建造とは。少し古臭い発想では」

「ローマ帝国が世界最大最強の戦艦を保有したままで良いと。更に言えば、北米共和国がローマ帝国の為に建造した戦艦を参考にして、更に強大な戦艦を建造しようとしているとの噂が世界的に流れていますぞ。世界最大の大国の日本が、その現実に甘んじてよいと」

 二人は軍備に関する話をさらに深めた。


「その辺りは、それこそ労農党以外の我々に味方する政党の了解も取り付けないといけないので、私の一存では返答しかねます。ですが、私は中国保守党の提案を受け入れたい、ということで如何」

「それが妥当な回答でしょうな。こちらもそれで手を打ちましょう」

 木下小一郎と小早川道平の対談は、そういった辺りで一段落することになった。


 とはいえ、お互いにこの妥協案について、党内説明に結果的には苦労することになった。

 特に苦労することになったのは、小早川道平の方だった。

 労農党や連立与党は政権奪還のためなら、ということで妥協しやすかったが、中国保守党内部は保守党からの寝返りから大反発したのだ。

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[気になる点]  連立の目処はついたけど“保守”の看板があるせいか中国保守党が結構ゴタつきそー(´Д` )これって保守党にも余波が伝わって保守派の再編成になるんでは?中国保守党内の保守寄りが離脱して保…
[良い点] ① 小早川道平さん、超巨大公共事業を地盤にゲット。 ② 小早川道平さん、軍に巨大な恩を売れた。 ③ 実弾が可愛く見える巨大な超巨大利権。 [気になる点] 呉を筆頭に、竹原、三原等、瀬戸内沿…
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