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チート(?)な女魔術師と弟子   作者: ミズモリ
3/3

チートな(?)女魔術師と弟子 後編

結局、後編が一番長くなってしまいました……。

納得の行く作品にはなりませんでしたが……。

読んで下さると、嬉しいです。

 彼女は俺の手を無理矢理離して、茂みに向かって歩き出す。


「…………さて。そろそろ出て来たらどうだ?」


 歩きながら、茂みの向こうにいるはずの魔に問いかける。

 その間に、もう一度対魔用の小刀を懐から取り出し右手に持つ。


 俺は言われた通り、後ろに下がって彼女を見守る。

 弟子になって一年もたってない俺は、戦力どころか足手纏いだ。

 腕と手しか見えておらず、まだ、まともに姿を見せない相手なのに怯むことなく。彼女は茂みへと近づいて行く。

 そして、茂みの十センチほど出前で歩みを止める。

 そのまま……。


 ……………………………………………………。

 

 無意味に時間が流れ……。

 何分たったのかわからないが。

 彼女の呼びかけに、なんの反応も示さない相手。

 

 痺れを切らした彼女が、二度目の『雷樹ライジュ』の呪文を唱え始めた。


「……我らが敵の身に落ちよ!『雷ー」


 ――ガサガサッ! 

 

 と、『雷樹』が発動する直前、音と同時に彼女の左側数メートル先の茂みが動いた。


 ガサリ……ガサガサ……。

 

 茂みが揺れ、そこから出て来たのは……。


「……魔も――じゃなくて、怪物……ですか? 師匠?」


 肌の色は俺や彼女とよく似ているし、姿も人間そのもの。しかし頭に山羊の様な角が二本生えている。


 着ている物は、俺が見たことのないデザインの……異国の服? としか俺には表現し様がない。

 

 間違いなく一度も見たことがない服装なのは確かだ。

 

 異国の魔物……? いや……怪物?

 それとも……妖魔? 純粋魔族……は無いか……。

 

 混乱気味になって来た俺を尻目に、自分の左側数メートル離れた位置に現れた相手を、真っ直ぐ見据え――というか、睨み付けながら彼女は毅然と言い放つ。


「――お前。悪魔か!?」


 ……あくま? 聞いたこともない単語だ。

 茂みの向こうから出てきた魔は『あくま』と言うモノのようだ。

 人間そっくりの容姿に見たこともない服装。山羊の様な角。

 ……魔物でも怪物でも妖魔でも無く、純粋魔族でも無い。

 

 あくま……あく魔? ……悪魔? ……だろうか?

 俺はその『悪魔』の顔を見る。

 ……やたら、綺麗な顔立ちをしている。

 …………アンバランスだなぁ……。

 魔物なら人間以外の姿。怪物なら人間に似た姿のモノもいる。

 

 妖魔は人間そっくりで、綺麗系だったり可愛い系だったり服装が奇抜だったり。


 純粋魔族は人間の前に姿を現すときは完全に人間そのもの。そしてほぼ例外無く綺麗系。当然人間にあるはずのない物は付いていない。彼女が『悪魔』と呼んだモノのように。


  ……『悪魔』と言うなら魔の一種なんだろう。 

 それにしても……『悪』に『魔』で『悪魔』とは……とんでもない呼び名だ。とてつもなく『悪』い『魔』であることは想像に難くない。

 彼女がこの『悪魔』を知っていることには驚いた……。


 彼女の知識は深くて広い。もしかしたら単に俺が物知らずなだけという可能性もあるが……。

 さすがは俺の女神。惚れ直してしまう。

 俺は『悪魔』から目を離し、彼女の張り詰めた横顔をついつい、うっとりと眺めてしまいそうになった。 

   

◆◇◆◇

 

 痺れを切らした私は『雷樹』の呪文を口にする。先ほどと同じく、呪文を省略したので早口で唱えれば、あっという間に術が完成する。

 

「……我らが敵の身に落ちよ!『雷ー』」


 ――ガサガサッ! 

 

 ――と、術が完成する直前。

 私の左側、数メートル離れた茂みが動いた。

  ……ようやく出て来る気になったか……手間を掛けさせおってからに……。

 私は『雷樹』を唱えるのをやめ、音のした方を見る――と。

 

 この世界、この大陸にいるはずの無いモノがいた。


「……お前。悪魔か!?」


 異世界から迷い込んで来た魔とは思ってはいたが……。

 まさか、悪魔とは……。

 私の考えた通り、知っている世界に属する魔だ。

 階級は……上級悪魔辺りだろうか? 魔王クラスでは無いと思う。

 この世界の魔に例えると……妖魔クラスになるはず……。


 魔王とまで呼ばれるような悪魔はもう少し威厳や覇気があるものだ。

 ――が、こいつにはそれが無い。

 実際姿を見てみると、どこかおどおどしていて、怯えているようにも見える。燕尾服を着ておどおどされると記憶の中にある燕尾服のイメージが崩れてしまう……。

 しかしそれなりに強そうだ。『雷樹』を喰らって無傷とは……。対魔用の小刀は効いたようだが。

 

 と思ったのも、つかの間。

 悪魔はその場で、がくりと両膝をついてしまった。


「……我は……悪魔……と、いう存在か……? それとも、悪魔と……いう名前……なのか……?」


 ………………。

 

 一瞬、思考が追いつかなかった……。

 こいつは……記憶が……無い、のか?

 

「……微妙に……面倒な事態になった気が……しなくもないな……」


 私は誰にとも無く呟いた。

 完全に独り言だったのだが……。


「……面倒を……かけて……済まない……」


 悪魔から返事が返って来てしまった。

 しかも、悪魔のクセに謝罪するとは……。

 

「お前、私を騙しているのではあるまいな!?」

「……無論だ……先ほどの攻撃……我は……少なからず……ダメージを与えられた……ぞ」


 効いていたのか……『雷樹』が……。

 見た目だけではダメージが与えられた様には思えないが……効いたのか……。

 その証拠なのか、話し方に妙な間がある。

 因みに私と悪魔は異世界の言葉で話しているのだが……。


 私を見つめる視線の持ち主をちらりと見れば、『何がなんだか解らない』と言う表情をしている。

 

 ――それはさて置き……。

 

「……貴様は……この地の王か……?」


 悪魔が妙なことを言い出した。


「貴様は……我に……ダメージを与えた……人間………王で……なくては……おかしいと……思ったのだ……」


 つまり、自分にダメージを与えられるのは王でなくてはならない。王はそれだけの戦闘力及び実力の持ち主であるはず。と思った。


 ……そういうことか……?


 人間の王は必ずしも個人の戦闘力……実力とも言えるが……しかも、実力にも色んなものがあるのだが……。それらが高くなくてはならない。と決まったものではない。


 悪魔の世界では弱肉強食を地で行っているらしい……と、記憶の中にある。


 自分を傷つけダメージを与えられる存在は悪魔の世界では『魔王』クラスだから。人間も、そうだと……?

 

 ……これは……本当に記憶を無くしている可能性が高くなって来たな……。


「……私は人間の王ではないぞ」

「………………では、我は……王でもない者に……?」

 

 顔色が、見る見る蒼白くなって行く……。

 人間臭い……。と言えばいいのだろうか? 悪魔の顔色が変わるとは思わなかった……。

 だが、中途半端に、と言うか無意識に残っている本能のような、日常的な記憶は僅かにあるようだ。


 まあ……面倒と言っても、『雷樹』でダメージを負わせられたのなら……無理矢理元の異世界に還すことも出来るだろう。

 

 悠長に会話などしていると、本当に面倒が起こりそうな気もする。

 

「とにかくだ……お前の事情は関係ない。お前の居た異世界を私は知っている。今から送り還すぞ」

「……ま、待て! せめて我が何者で何処の誰だったのか、思い出してからでは……」

「――ダメだ!」


 私は無情な言葉をいた。 

 悪魔が人間に対してこんな風に……少しだけではあるが……。下手に出られると本当に調子を狂わされてしまう気がする。


「お前は……私の弟子に手を出そうとした……」


 怒りを込めた声音で言い放つ。

 視線には、それだけで悪魔をも射殺せそうな力を込めた。


「……………そ、れは……」

 

 悪魔は言葉に詰まり、肩を落として俯く。

 

「……異論は無いな。お前に選択肢も無い」

「…………」


 もはや答えはない。

 『雷樹』のダメージもあるのだろが。

 私を恐れて迂闊に動くことも出来ないのだろう……。何しろ私は……。

 いや、今はそんなことよりこいつを還す方が先決だ。


「……異界に通ずる守護の扉よ、我が命応えて開け」


 私は『キー・ワード』を口にした。

 同じ言葉を唱えても、私を含むこの大陸の数人にしか開けられない異世界への扉。この森の中でなら何処に居ようと開けられる。

 私は無造作に悪魔に近寄る。


 ――ビクリ! と、体を震わせる悪魔。


 私は悪魔のすぐ側の、なんの異変もなかった空間に開いた、楕円形の道らしきものに向かって別の『キー・ワード』を口にする。


「3000/42281/721/12721ーーオープン」

 

 これをやる度に、まるで暗号のようだ。と思いつつ唱える。

 楕円形の道らしきものの色が変わる。

 澄んだ水のような美しい青から深い緑のような灰色のような、表現の難しい複雑な色へと。


「……どうしても……我を還す……つもりか……?」


 力無い声で悪魔がこちらを見ながら問う。

 

「……私の役目でもあるからな。さあ、早く行ってくれ。行かないのなら力づくになるが……いいか?」

「…………」


 悪魔は無言だ。そして動かない。

 まさか動けないのではあるまいな……。


「……では、実力行使させてもらう」


 私の言葉に悪魔はようやく立ち上がる。


「……行ってくれ」

「………………」


 悪魔はゆっくり歩き出す――かに思えた。


「我にも一分の誇りがある……!」


 力の無かった目に力が込もる。

 悪魔は私の方へと勢いよく手を伸ばす。


「――師匠!」


 私を案ずる声が聞こえた。

 

 ……だから心配するなというのに……。

 

 私は伸ばされた手を避けなかった。

 避ける必要が無いからだ。

 その手が私に触れる寸前――


 ――バヂッ!

 

「――ッ!!」

 

 ――ドカッ!! 


 結構派手な音を立て、悪魔の手だけでなく全身が弾かれ背後の木の幹まで吹き飛ばされた。


「……バカなことを……」


 口の中で、ぽつりと呟き。私は軽く溜め息を吐いた。


◆◇◆◇


「――師匠!」

 

 『悪魔』が彼女に手を伸ばそうとした時。

 俺は思わず叫んでいた。

 が、『悪魔』の手は彼女に触れることはなかった。

 

 彼女はただ、悠然と立っていただけなのに。

 悪魔は背後にある木の幹にまで吹き飛ばされた。

 

 彼女が『悪魔』と訳の解らない言葉で会話を始めたことにも驚いたが。

 この展開にも驚いてしまった。

 彼女は……何者なのだろう?

 この世界、この大陸の、重責過ぎる役目を担う大魔術師で、「チート」と呼ばれる程の力の持ち主。


 異世界の言葉を淀み無く話し。異世界の『悪魔』を知っている。

 そして……俺の師匠。


 …………俺は彼女の事を知っている。でも正しい姿を知らなかった。と、いうことか?

 いや……彼女には、色々な秘密があることは既に知っていた。

 役目故に俺などには話せないこともあるのだろう。

 俺が驚き、考えを巡らせる間にも事態は進む。


『一分の誇りなど捨ててしまえ。私が何と繋がっているのかお前になら解るだろう? お前が何をしようとも私には敵わない』 

 

 吹き飛ばされた『悪魔』は悔しそうな表情で彼女を睨み付ける。

 

『……このまま、人間ごときにやられて素直に還れるとでも――ひッ!!』

 

 彼女が左手の手袋を脱ぐと、『悪魔』は、とたんに怯え出す。彼女から視線も外す。

 

『……大人しく還れ。お前は異世界の『悪魔』。ここにいることは私が許さない……それとも消えるか? ……存在ごと』


 彼女は穏やかに、しかし、低い声音で脅すような口調になった。やはり何を言っているのかは、俺にはまるで解らないが。


『……………………』


 立ち上がることも、彼女の言葉に答えることも出来ずガタガタと震え出す『悪魔』。

 全身が痙攣しているかのようにも見える。

 

『お前は異世界の、悪魔と呼ばれる魔……。

 先の言葉……自分が何者か少しは思い出して来たのだろう? 

 お前は人間に害を為す。次に私達に悪意を向けたら滅ぼす。例え本能に左右されて私達に害を為しても滅ぼす』


 彼女の言葉は容赦がない……ように思えた。

 『悪魔』はわなわなと身体を震わせ始める。

 今度は恐怖と怒りとが入り交じったような震え方だ。


『……我は……我は……ッ……』


 『悪魔』は身体を震わせたながら、何やら葛藤しているようにも見える。

 

『……貴様は……人間の身でなんというモノと……』

『……契約をしているのか……と言いたいのか? 別に私の意思で契約した訳ではないのだが……な……』


 彼女の表情に微かに暗い陰がさしたように思えたが……。気のせいか……?

 

『……そんなことはどうでもいい。私が今思っていることは、厄介者がこの場から居なくなることだ。……解るな? お前のことだ』

 

 しかし言葉と共に、気の所為とえないほど、彼女の表情は引き締まったものになった。


『…………ッ』


 『悪魔』、は、ゆらりと立ち上がり、彼女が開いた穴の方へと歩き出す。


 彼女は穴から少し離れた場所に移動しながらも油断無く『悪魔』から目を離さない。

 

 ――と、彼女の口元が僅かに動いている。……もしもの為の呪文でも唱えているのか……。

 俺が耳を澄ますと、


「……の炎よ。この地に来たりて、我が敵を焼き尽くせ――」


 魔術の基礎の基礎本で覚えた、理解出来る言葉。

 だが……俺が聞いたことのない呪文だ。きっと高等魔術の一種だろう。

 悪魔は彼女の前を横切り――そのまま穴の中に入る――かに思えた。


『――滅ぶのは貴様だ!』


 彼女の小刀に傷付けられていない方の手から、火球が放たれる――!  

 しかし彼女の術が完成する方が早く――


「――『漆黒の炎』!!」


 彼女の正面に現れた黒い炎の火柱が、『悪魔』の手から放たれた火球を飲み込み、『悪魔』に遅いかかる。

 逃げる間もなく火柱に包まれた『悪魔』は、なんの言葉も、悲鳴さえ上げられずに黒い火柱と共に消え去った……。


◆◇◆◇


「……ふう」


 色んな意味で微妙に面倒だった……。

 しかし、悪魔がどんな存在か知っていなければもっと面倒なことになっていたはずだ。

 考え方によっては楽な相手だったとも言える。


 知っている世界に属する、『地獄』という場所の炎を召喚すれば倒せる相手だったのだから。 


 欲を言えばあの悪魔の名前を知りたかったが、何万といる悪魔の名前を聞いたところで意味は無いか……。


 結局は滅ぼすことになったのだから……。

 

 あの悪魔は不運だったな。こんなところに迷い込まなければ、滅ぼされずにすんだものを……。

 

 ああ、別に同情している訳ではない。

 私がどんなモノと契約させられているのか理解して尚、刃向かったのだから……自ら選んだ破滅への道だ。


 ……道といえば、閉じて置かなければな……。


 私は異世界に通ずる道に向かって、一言。

  

「施錠」


 と、投げかける。

 それだけで道は閉じた。

 そこが普通の空間に戻ったのを見計らって駆け寄って来る者がいる。


「――師匠! 大丈夫ですか!?」

「ああ、なんとも無いぞ」

「………………良かったぁ……」

 

 嬉しそうに私に抱きついて来る。


「……おい。どこに顔を……」


 埋めている。と、言いかけて私は止めた。

 この子の肩が微かに震えているのに気がついたからだ。

 

「……すまないな……怖い思いをさせてしまった……」

 

 私は、神妙な表情で頭を優しく撫でてやる。


「……っく……師匠が……無事で……グスッ……良かった……」


 やはり泣いていたか。この子は……。

 私の心配などしなくても良いのに……。

 この子には決して言えないが、私は「チート」などではない。 


 確かに「チート」と言えるだけの力はあるが。そんなものは嫌が応なく、大き過ぎる代償を支払わされて、無理矢理手に入れさせられたものだ……。


 出来るなら……支払わされた代償を取り返して、普通の魔術師になりたいものだ……。

 が、こんなことを思ってはならない。

 この力がなけれはこの子は今ここに、こうして生きていないのだから……。

 

◆◇◆◇


 その後も彼女は、俺を「歪みの森」に連れて行く。

 …………あれから、1ヶ月。

 俺は彼女が言っていた。色々、危ない。の「色々」の部分を身をもって理解した。

 それがどういうことなのか。

 

 つまり…………………………………………。


 あぁぁ。やっぱり考えたく無い!

 とにかく! 俺は彼女の側から益々離れたがらなくなった。

 

 元々、出来るだけ離れないように。と言われていたが。「……ちょっと、最近、おかしくないか?」と言われるほどに。


 ああ、おかしいよ! ……まさか師匠の友人の弟子(男)に惚れられるなんて、思わなかったよ!


 落ち着いて考えてみれば、俺に目を付けた魔の中にも男の姿をした奴もいた。魔に狙われていた頃はとにかく怖くて、男とか女とか気にしたことも無かった。


 でも、今になってようやく気がついた。

 俺の顔は性別関係無しに人を惹き付ける。と……。 

 

 家族と共にいた頃は、魔に魅いられてる気の毒で不吉な子供だから……。と誰もそういう目で俺を見なかっただけで……。

 

 でも、誰が何を言おうとも俺は彼女一筋だ。

 それを解って尚、俺に惚れたとかたわけたことを言う奴がいるなんて……。しかも、男……。

 別に偏見がある訳じゃない……。生理的に無理なだけで……。 


 あいつも、悪い奴じゃないんだがなあ……。

 

「……はぁ~~……」


 俺は彼女の書斎の、来客用のテーブルのイスに腰掛けたまま、い溜め息を吐く。


「……どうした? やはり最近、おかしいぞ?」

「あ、いえ。おかしくなんかないですよ!」

 

 しまった。今は火系魔術の実践中だった。

 掌に炎を灯す初級の術。とは言え火を使う術は、他の術より集中力を必要とする。

 なのに……余計なことを考えてしまうとは……。

 ここは一つ、いつものやり取りで気を引き締めてみよう。


「師匠。好きです!」


 いつものやり取りと言っても、俺はいつも本気だ。

 

「……だから私も好きだぞ。『弟子として』な」


 彼女は呆れたような、やれやれと言ったような口調で返して来る。

 でも以前と違うこともある。


 時々、彼女は苦笑しながら、いつもの言葉を返して来ることがある。

 それは、単に呆れられてるのかも知れないし、どうしようもない弟子だな。と笑われているだけかも知れない。

 

 でも、俺は良い方に取る。

 彼女の笑顔なんてめったに見られるものじゃないからだ。


「師匠……俺、頑張って少しでも早く一人前になりますから!」

 

 俺が気合いを入れて宣言すると、


「……ああ、期待しているぞ。私の弟子はお前一人なんだからな」

 

 言いながら彼女は珍しく笑った。苦笑ではなくちゃんとした微笑みだ。

 俄然、気合いの入った俺は、自分の両の掌の上に小さな炎を灯そうと、呪文を唱え始めたのだった。

「漆黒の炎」は地獄の文献を調べると本当に載っています。

「ざんまいのしんか」にしようとも思いましたが、私の端末では、漢字変換が難しいので、やめました。

未熟な作品ではありましたが、ここまで、読んで下さって、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] バトルかっこいいです。 他人からはチートと思われる能力も、本人なとっては悩むこともありますね。 弟子と師匠の関係よかったです。 [一言] 読んだことある作品ですが、また読んでも面白かった…
[良い点]  いろんな謎があって面白いです。  師匠さんの奇妙な呪文(?)は何なのか?  もしかして、チートの理由がそこにある?  2人の距離が、いつかもっと近付く日が来るのかも気になりました。…
[良い点] ちょっと暑苦しい感じの主人公も、 素っ気ないフリしてめちゃくちゃ心優しい魔女も(であってますでしょうか?)キャラクターがとても魅力的でした! それと、世界観的にもとても謎が多く、もっと知り…
感想一覧
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