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チート(?)な女魔術師と弟子   作者: ミズモリ
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チートな(?)女魔術師と弟子 前編

ミズモリです。

現在。毎週土曜日投稿中「霊感中年中岡真由香の日常」だけではなく、ちょいちょい、別の作品も投稿していきます。

 

先ずは、この作品の前編からです。

読んで下さい。よろしくお願いします。 


注釈(霊感中年中岡真由香の日常は現在引っ込めて改稿中です)

「師匠! 好きです!!」

 

 俺はいつものように、師匠に告白した。


「……私も好きだぞ。『弟子として』な」


 そして、いつものように、返される。

 俺が彼女の弟子になったのは、昨年のこと。

 産まれた瞬間ときから、魔の存在ものを引き寄せる忌まわしい性質を持つ俺は、幼い頃から、魔達に目を付けられ続けて来た。

 

 付きまとわれたことも、拐われそうになったことも何度となくある。

 

 俺は、父親が一代で起こした、大きな雑貨屋の三男坊。息子がそんな忌まわしい体質を持つことは、家業にとって、マイナスにしかならない。

 家族にも、心配ばかりかけていた。

 だけど、それも、五歳までのこと。

 

 次の歳からは、彼女が魔除けのアミュレットを持って来てくれるようになった。

 俺を含め、毎日毎日、神経を尖らせていた家族一同、魔に怯えずに、穏やかに暮らせるようになった。


 彼女はこの大陸に於いて、重要な役割を持つ大魔術師。

 そんな彼女を父親に紹介してくれたのは、父親が営む雑貨屋の常連客だった。

 俺は毎年、彼女の訪問を心待ちにするようになった。

 

 彼女は俺より、一回り近く年上だ。

 現在は二十代後半だが。初めて会ったときは、まだ、十代後半だった。

 俺は特にマセた幼子ではなかったけれど、恐い魔達を追い払ってくれた彼女が女神の様に見えたものだ。 

 

 好きにならないはずがない。

 あれから十年近くたった。

 どれだけ歳を重ねても、俺にとって、彼女は今でも女神のままだ。


「師匠! いい加減。本気で答えて下さい!!」

「……私はずっと本気で答えてる」

「愛してます! 師匠!!」 

「……私もお前を『弟子として』愛しているぞ」


 毎度毎度、こんな調子。

 彼女の容姿は普通よりやや上。スタイルも同じくだ。性格だって、悪くはない。

 男口調でも、中身は心優しく、慈悲深い。

 役割がなければ、とっくの昔に結婚していても、おかしくはない。


 恋人がいないのが不思議なくらいだ。

 つまりは、重すぎる役割が、彼女を縛っているのだ。


 だからと言って、役割から、逃げることは叶わない。役割故に恐がられたり、色んな誤解をされてるけれど……。

 彼女は粛々と役割を受け入れ、堂々と生きている。


 俺はそんな彼女を尊敬している。

 彼女の元で学び、一人前の魔術師になれば、自分で自分を守ることも出来る。


 彼女が与えられた役割には、到底及ばないが。俺の体質だって、相当な重荷だ。だから、俺は、逃げたくない。産まれ持ったこの性質(運命?)から。


 だからこそ、俺は親元を離れ、彼女の弟子となったんだ、それも、住み込みで。 

 少しでも早く、彼女と対等になる為に、だ。

 一回りの歳の差なんて、問題じゃない。

 問題になんて、させるつもりはない。

 だからこそ、俺は毎日告白を続ける。


 一人前になれたとき、ちゃんと彼女に意識してもらえるように。

 一見、意味の無い行為も、積み重ねて行けば、意味あるものへと変わって行くと信じて……。


◆◇◆◇


「師匠! 好きです!!」

「……私も好きだぞ『弟子として』な」


 今日もいつものやり取りが繰り返される。

 ……無駄なことだと気づかないのか、この子は……。


 内心、呆れながらも私は答えた。

 私の弟子になった日から、この子の告白は始まった。


 私に「恋愛感情を抱いているらしい」この子は、驚くべき美幌の持ち主だ。

 更には強い魔力を兼ね備え、一度に使える魔力の容量(キャパシティ)も大きい。

 

 それらの要素を持つ者を、魔達は好む。

 まずは美貌。それから魔力。特に上級の魔になればなるほどだ。


 何故なのか、人間と同じ美的感覚を持っている上級の魔達は、そんな人間を殺したりせず。自分の手元に置きたがる。

 ……男がハーレムを作りたがるのと、同じような感覚だろうか……?

 

 私はその疑問を、自身の使い魔に聞いてみたことがあるが、どうやら違うらしい。

 私の考えは近くはあるが、似て非なるもののようだ。

 魔達の考えることは、人間には今一つ理解しきれない。


「師匠! いい加減。本気で答えて下さい!!」

「……私はずっと本気で答えている」

「愛してます! 師匠!!」

「……私もお前を『弟子として』愛しているぞ」 


 また、始まった……。この子の私に対する恋愛感情は、刷り込みみたいなものだとしか、思えないのだが……。


 卵から、産まれたばかりの雛鳥が、一番最初に見たものに懐いてしまう。それと、同じことだ。

 

 恐ろしい魔を追い払った私に懐き、それを恋愛感情と勘違いしている。そうとしか思えない。

 たとえ、この子の勘違いでなかったとしても、弟子に手を出す師匠が何処にいるというのだろうか?

 

 …………いや、結構いるか…………。


 だが、それは、私の主義に反している。

 只でさえ、産まれた瞬間から重責を負わされ。普通の人間としての幸せの大半を奪われて。

 更には、非常に誤解されやすい立場にいる私が、弟子に手を出すなど……。  

 

 ……考えただけでも、胃が痛くなりそうだ……。

 

 私は私に恥じること無く生きていたい。

 この重責過ぎる役割も、私にとって、誇りと思おう。

 

「さて……ノルマは終わったか?」

「……もう少し……です……」

 

 この子が私の弟子になる前にアミュレットと共に毎年渡していた魔術の基礎の基礎を学べる本や、魔術を扱う為の心得が書かれた初級本など。この子は毎年全てを読破してきた。 

 

 だから、弟子となったときには、すぐに、実践から始められた。

 この子と相性の良い属性は土。

 私の書斎の来客用テーブルの上に置かれた、土だけが入った鉢植え。

 

 その中にある、平らに整えられた土に、亀裂を入れる呪文を唱えつつ、眉間に皺を寄せている。

 ……どんな表情をしても、美貌は変わらないのだな……。


 しかし、過ぎたるは及ばざるが如し、この子は産まれながらにして、『美貌』と『魔力』いう重荷を背負ってしまった。

 美貌と魔力が重荷になるとは、皮肉が過ぎる……。

 どちらも、望んでも手に入れられない者もいるというのに……。


「出来た!」


 ふと、気がつくと、鉢植えの土の真ん中に亀裂が入っている。

 私は鉢植えの土の様子をじっくり観察し。


「……合格だ。……次は私のノルマだな……」


 言葉と共に歩き出す。

 ドアノブに手をかけ廊下に出ると、いつもの様に後ろから、聞きなれた足音がついてきた。

 たとえ、私の住居の敷地内だとしても、私の側を出来るだけ離れないように、言いつけてある。

 ちらり、と、振り返れば、満面の笑みを浮かべた、人に美過ぎたる美貌の少年がいた。


 普通の女なら、こんな美しい少年に告白などされたら、歓びのあまり舞い上がってしまいそうなものだが……。

 幸か不幸か、私は普通の感覚を持ち合わせてはいないのだった……。

次はなるべく早く投稿したいと思っています。

宜しかったら続きも読んで下さい。


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