アヴィル × クルルシア
【クロスオーバー】
Twitterで、他の作者様の小説のキャラクターと愛殺のキャラクターで会話させてみました。
※アヴィルの台詞と地の文は、私『夢伽莉斗』が書いたものです。
【キャラクター】
アヴィル
▶『愛した人を殺しますか?――はい/いいえ』
クルルシア・パレード・ファミーユ
▶おのはるか様『道に咲く華』
▶https://ncode.syosetu.com/n7718du/
【注意書き】
※『道に咲く華』を読んでいる方でないとあまり楽しめないかもしれません。記録に残しておくという理由もあって投稿しました。
※Twitterのリプライで会話したため、一部話の運びがあまりスムーズになっていない箇所があります。
※アヴィルはラミアという使族です。ラミアはいわゆる食人鬼で、10歳以下の子供を食糧としています。また、人間の子供を食べる時などに、ほぼ全身に新緑の鱗が現れて歯と爪が尖ります。細い舌が二本あります。
三人称視点 ss/日常/IF/クロスオーバー
アヴィルは居酒屋に入り、嗅いだことのない匂いに気付いた。あくまで人間の匂いなのだが、そこに少し違和感がある。おそらくその匂いの正体は、奥の机に座っている艶やかな黒髪を持った女だ。
アヴィルは彼女の正面の椅子を引いた。
「ハロー。俺アヴィル。ナンパさせて?」
『ん? 私かい?』
敵意を持って近づいてきたなら即座に分かったはず、と思いながらクルルシアは警戒を解き相手の顔を確認する。前に座ったのは銀髪の美形だ。
「そうそう、きみ。んー? なんだこれ。通信魔法? ふつうに喋ってくれていいぜ?」
『ああ、すまない。口がきけなくてね。こんな女でもいいなら相手をさせてもらおうじゃないか。時間は大丈夫かい?』
「喋れねえの? まー分あった。大丈夫だから声掛けたんだろ。つーか、人間とは違えよな? そう思って声掛けたんだ。あー、名前は?」
『失礼した。そういってくれると嬉しいね。
名前はクルルシア・パレード・ファミーユ。クルルシアでもなんでも呼んでくれ。そちらは……アヴィル君でいいのかな?』
「クルルシアね。んーアヴィルでいいけど? "くん"とかいらねーよ。ミドルネームがあるってことは貴族か?」
『そうか、では遠慮なく呼ばせてもらうよ。アヴィル。いやいや、名前の由来となったものが長かったからミドルネームにしたらしい。私自身はただの孤児院出身だよ。
そちらはどうなんだい? 冒険者にしてはずいぶんときれいな服だと思うのだけれど』
アヴィルは紫色のフードつきのマントを着ている。手首には金色の腕輪が何本かかかり、首にもネックレスがかかっている。服は新品同様で、かなり綺麗な見た目である。
「孤児院? クルルシアも育ちに色々あったんだ?」
アヴィルは一度自分の服を見下ろしたあと、またクルルシアに話しかける。
「あーこれ。色々あってな。俺今はこれしか着れねえんだよ。汚れねえから便利だけど」
『ふうん、便利な服もあるものだね。私も今の服にたどり着くまでは大変だったよ。魔法使うだけで焦げちゃったりもするからね。
で、なんで私に声をかけてくれたのかな?』
「魔法使うだけで焦げんのか? 魔法下手くそなんじゃねーの? クルルシアから人間じゃねえ匂いがしたからさ。ちょっと食わせて欲しくて」
アヴィルは机の上に載せていたクルルシアの手を取った。まじまじとそれを見たあと、クルルシアににかっと笑いかける。
『間違ってないよ。小さい頃は大変だったという話さ。今はどんな服着ても大丈夫だよ。ん? 食べる……?』
呆気に捉えて、クルルシアは思考停止に陥る。
「あーそーなんだ? 昔は魔法が下手だったっつーことか。けどこんな長い時間通信魔法使えるなんてやっぱ人間じゃねーよな? 食うは食うだよ。いいだろ? ちょっとだけな?」
アヴィルはクルルシアの人差し指を口に加えた。二本の舌が彼女の指の上をチロチロと這う。
『ちょ、ちょっと待ってくれ! いったん! いったん落ち着こう! なんだ?! アヴィルは私の肉を食べたいのか!? おいしくはないよ?! というか硬いよ!?』
もう何を言ってるのか自分でもわからないクルルシア。振りほどく、というところまで思考が回らない。
「(めっちゃテンパっててカワイー)そーそ、肉を食べたいっつーこと。美味しくなくてもいーの。人間以外の使族の肉を食うのが趣味なんだよな。硬い? 噛んでみよ」
アヴィルが瞳をかっ開く。鱗が首筋に浮かんで歯が尖った。がりっと指に歯を立てる。歯が滑って、皮膚には突き刺さらない。
「硬え。強く噛んでいー?」
『わ!? びっくりした……。
わかった、本当に、純粋に食べたいだけなんだね……うん、ここで出会ったのも何かの縁だろう。いいよ、あげる。減るものでもないし、好きにしておくれ』
魔法を使い、自身とアヴィルの姿を他人から見えなくすると、クルルシアは前腕部を斬り落す。純粋な気持ちで頼まれると断れないのであった。
「はっ?! 切り落とした?! (同じラミアはねえよな。髪の毛の色ちげえし。それ以外にこんなことできる使族いねえんだけど……)ま、まー食えるならなんでもいーけど……。あんがと」
アヴィルはもらった腕をその場で噛みちぎって食べ始める。
『さて……どうして気づいたのかはわからないけれど私は人じゃないよ。一応分類上は人だけどね。
しかし一応硬さで言ったら龍と同じはずなんだけれどよく噛み切れるね……ああ、一応言っておくが恐らく君たちの知っているドラゴンとは別の種族だ』
クルルシアはアヴィルの喰いっぷりに感心しながらも話に相槌を打つ。
「(こいつ食っててもなんも思わねえんだ? 人間なのに。珍しーな)気付いたのは匂いだぜ。はぁ、ドラゴンとはちげーの? クルルシアってなんか変だな。しかももう回復してるし。(硬くてちょっと苦えな。けど悪くない味)
俺はラミアだから他より歯が強えんだよ。普段は人間の子供しか食ってねえんだけどな」
『なるほどね。でも匂いか……。初見で気づかれたのは初めてかな。驚いたよ。多分君の知ってるドラゴンとは違うね……。
あと私が何とも思わないのは私に普通の価値観がないからだね。まともに人に育てられたことがないから』
「人間の匂いはよく嗅ぐから分かんだよ。それと似てんだけどちょい違和感があったかんな。あ? 俺の心読んだ? それよりまともに人に育てられたことがねえって?」
『ああ、失礼。聞こえてしまってね。謝ろう。
なに、気にしないでくれ。まともに人と暮らしだしたのが7歳くらいだというだけだ』
「聞こえた? 俺の心の声が聞こえんの? へえ、7歳か。それでは何してたんだ?(そう考えると俺は一応15までは人と暮らしてたのか)」
アヴィルが人間と暮らしていたのは、ラミアだとバレて追い出された15歳の時までである。クルルシアの言う「まともに人と暮らしだした」という意味を少し勘違いしていた。
『私にとっては同じ風に聞こえるんだよ。なるべく気を付けてはいるんだけどね。気分を悪くしたらすまない。
それまで……か……。あんまり話したくはない。すまないね。君はどうなんだい?』
謝りながらクルルシアはアヴィルに問う。
「へえ。別に気が悪くはなってねえよ。普通にしてるだけで心が読めるなら便利な時もありそーだな。(女の子を落とす時とか使えそー。けど人間なら内心で嫌ったりすっから面倒臭そうだな)
俺は15までは奴隷だったぜー。性奴隷ってやつだな」
人間以外の使族はほとんど性格に表裏がないのである。
『君……聞こえているからね……。
まあいいけれどね。そのせいで仲のいい子もなかなかできなくてね。
しかし性奴隷か……それはすまないことを聞いた。それなら私も言うべきかな。二歳までは普通の家だったんだけど暴力を振るわれていてね。今でも体の大きな男は苦手だ』
「聞こえてる? あ? なんか思ったっけ。あ、女の子を落とすとか? 聞こえてたらまずかったか?
んー? 俺は大丈夫だぜ? 気にしてねーし。
けど暴力か、女の子ならそりゃ嫌だよな。(噛んだりして泣いてんのはカワイーけど、殴って泣いてんのはあんま好きじゃねえんだよな)俺大丈夫? 体でかくねえ?」
アヴィルの身長は178cm。細身とはいえ、彼女より背は高い。
『大丈夫だよ、もう親の顔なんてほとんど覚えてないしね。
しかし気にしていないか……それならいいのだけれど……。
深くは踏み込まないが君も随分歪んでいるね……私も人のこと全く言えないけれど』
「まー忘れちまうよな? 俺もほとんど覚えてねえわ。クルルシアは何歳なんだ? 俺は102歳。
歪んでるか? あー嫌がってんのカワイーってやつ? けど泣いてる女の子ってカワイーじゃん? クルルシアもそう思うんだ?(人のこと言えねえってことは俺と同じく泣いてる子が可愛いってことだよな?)」
『高齢だとは思っていたが100を超えていたか……私はまだ19だ。もうじき二十を迎える。
いや、人の性癖にとやかく言うことはないよ。私が歪んでるといったのは別のことさ。まあ、それはいいだろう。
しかし100歳か……途方もないね……』
「19か、カワイーなー。(ちょっと大人っぽいとは思ってたけど、案外小さいじゃん)まだ子供じゃん。けど、そんなら親の顔だってまだ覚えてんだろ。強がるのは良くないぜ?
別のこと? ふーん。途方もねえかなあ? エルフなら余裕で3000歳とかいるぜ。ラミアの寿命は300だから、俺より歳上も多いしな」
『流石に二歳の頃の記憶はね……振るわれた拳なら覚えているけれど……まあ、実際に会えば思い出すかもね。
3000歳……だめだ、全く想像がつかないよ。どれくらい物事を覚えているものなのかね……』
「あーそっか。幼すぎるもんな。俺は5歳くらいからヤってたしなー。そんなら会わねえ方がいいかもな。
ハハッ。まじ? そうだなー、色々覚えてんじゃねえの? エルフは博識っつーからな。けどなんてゆーか、段々細けえことには気にしなくなんな。割り切るっつーか」
『会うつもりも無いよ。私には今の家族がいる。私の興味関心はそこだけだ。あ! 腕を食べたことは秘密だよ、大騒ぎになっても困る。
割り切るか……私もそう生きてみたいものだよ。今でもまだ心のどこかで引き摺っているらしくてね……』
「まぁもしも会ったりしたら俺に言えよ? 人間なら勝てると思うし。(カワイー子には優しくしないとな)おっけー、まじこんなスムーズに食わせてくれたの初めてで感謝してるわ。けどなんで大騒ぎになんだ?
まーまだ19だろ? そりゃちょっとくれえ仕方ないだろ。けどクルルシアの寿命は60年なんか?」
『ふふふ、その時はよろしく頼むよ。
うちの弟妹達が少々過激でね……まあ、機会があったらまた話そう。
私の寿命ね……何事も無ければ何十年でも何百年でも生きれそうだよ……』
「へえ、兄弟がいるんだ。そりゃいーな。ん、兄とか姉はいねえのか?
なーんだ、クルルシアもそうなんだ。じゃーあと200年くらいは一緒に生きていられそうだな!」
『弟たちがえ~と……14人かな。みんな元気に育ってくれてるよ。そうだね。もしかしたらそんな未来もあるかもね』
「は?! そんないんの?! あ、孤児院なんだっけ? その兄弟ってことか? 全員年下とか疲れそーだな。子供ってめんどくせーし。
辛いことでもあんのか? 未来に希望が持てねえみたいな?」
『そうでもないよ。皆かわいいに尽きる。特にソルトなんてもうね……失礼。
いや? 今は楽しく生きてるよ。ただ一人生きていくとなると寂しいだろうなと思って……ごめんね。私の周りに長寿と言ったらあんまりいなくてね』
「ふーん。そいつらもここに来てんのか? ソルト? 間違えて食っちまったらごめんな。
そーゆーこと。俺の世界では100年以上生きるなんてザラにあるからなあ。ヴァンピールも寿命は200年だし。みんないなくなったら、この世界に来ればいんじゃねえ? 少なくとも俺はいるし」
『私と一緒にさっきまで一緒にいたから来てると思うよ。確信はないけれど……こら、それはさすがに許さないよ。
そうだね。その時はぜひとも酒でも飲もうじゃないか。こう見えても私お酒には強いからね』
「あーそうなんだ? まさかもう食っちまったとかねえよな? 10歳以下の弟いる? (怒ったらどんくらい怖えんだろ?) 先に紹介しておいてくれれば耐える。美味しそうだったら食っちまうかも、どーしよ。
あと俺酒は弱いわ。悪い。3杯くらいから記憶なくなる」
『年は16だけれど……大丈夫だよね……流石に……大丈夫だよね……銀髪の子なんだけれど……。
あれ? そうなのかい? 私は記憶を失ったことはないな…』
「あー16なら美味しくねえから平気。大人の人間は味見したことあるし、食わねえよ。銀髪か、俺と一緒じゃん。
そりゃすげーな。こっちにも酒豪はいるけどな。ヴァニラとかやばいらしい」
『よかった……町を滅ぼさずにすんだ……。ふうん、面白そうな人もいるね…今度その人とも会えたらいいな』
「街を滅ぼす?! 怖えんだけど! あー、あそこで飲んでんぞ」
アヴィルがカウンターの方に目線を向ける。ピンクのツインドリルを持った少女が瓶をラッパ飲みしている。
『あれかい……なかなかの飲みっぷりだね……。また今度君がいないときにでも話しかけてみるよ。
大丈夫、大丈夫、私を止めることができるヒトならいくらでもいるだろう』
「話しかける必要も特にねーけどな。なんか知り合いたいやついる?
そうか? ならいーけど。ドラゴンとかにはさすがに勝てねえと思うし」
『もっともこの前は私自身の伝達の魔法だけで滅ぼしかけたんだけどね……。
君、お酒が飲めないんだろう? それに今日はいつソルトが帰ってくるかわからないからね。お酒は控えるよ』
「伝達魔法? これのこと? これで街を滅ぼしたんか?! やばくねえ?! エルフより強そーだな。
あーなるほどな。ソルトってやつがこれから来んのか。会ってみてえな」
『ソルトはもうじき来ると思うけどね……。
そうそう、この魔法。発狂してる時の気持ちを直接相手に届けちゃってね……』
「ほーんなるほどな。発狂かあ。なんか辛いことがあったっつーこと?」
『暴力振るわれてたって言ったでしょ。その時のトラウマを無理やりほじくり返されてね……怖かったな……』
「へえ、トラウマか。うーん、俺にはよく分かんねえけど、辛かったみたいだな。過去の傷をほじくり返してクルルシアに頼ってもらおうとしたってことか?」
アヴィルは相手を恋に落とすためならば、相手の過去の傷をほじくり返すことくらいやる。だが、それ以外にほじくり返す意味は無い。よってクルルシアが過去を刺激された本当の意味については考えが至らなかった。
『ちょっと違うかな。私を発狂させてその騒ぎのうちに逃げるつもりだったらしい』
「へえ、意味わかんねえな。じゃーただの嫌がらせってこと? 怖がってんのが好きなわけじゃねえんだろ? よく分からねえ。その時の傷はもう癒えたんか?」
『うーん……勘違いしてそうだな……要するに私の弱いところを攻撃してきたって感じかな……。
うん、大丈夫だよ。暴力振るわれたのだって大昔、今更気になんてしてないよ』
アヴィルは席を移動して、クルルシアの顔を自分の胸に埋めた。背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。
「おい、泣きそーな顔してんぞ? どうしたよ。気にしてねえとか嘘じゃん。会ったばかりの俺にまで嘘つくことねーだろ。俺はクルルシアと違って心なんて読めねえからさ、言ってくんないと分かんねえ」
『え? ええ?! しょ、初対面なのに、ずいぶんと積極的だね』
「そーそー、俺積極的なの。けど涙溜めながら言われてもなー。泣いてる顔はカワイーから好きだけど、俺が泣かせたわけじゃねえならつまんねえなぁ。
な、まだ19なんだろ? 俺の年齢聞いて驚いてたじゃん。他に家族もいねえっつーし。黙って頼っておけって」
『家族はいるよ!
でも……そうだね……こんな姿見せられないからね……いまは……いまはお願いするよ』
大人しくアヴィルの胸に顔を埋めるクルルシア。
裏表ない人にこうやって接してもらうとあっさり心を許すのであった……。
「はいはい。いいぜー。何が辛かったんだよークルルシアちゃんー(2つや3つの違いでお姉ちゃんになんなきゃいけねえんだから、人間って大変だなー)」
アヴィルはクルルシアの背中をとんとんと叩き、ゆっくりと撫でた。
『ありが……』
「クル姉? 何してんだ?」
クルルシアがお礼を言おうとしたとき突然少年の声が響いた。その方向を見ると銀髪の少年が一人。
銀髪の少年はクルルシアの涙にはっとした顔をする。
「てめえ!」
アヴィルがクルルシアを泣かせたと勘違いし、銀髪の少年――ソルトは刀を抜くが、
『止めなさい』
クルルシアの魔法に叩き潰された。
「あー? 誰?」
アヴィルは抱きしめていた腕を解いて、ソルトの方に向き直った。銀の髪の毛を掻く。同じ銀髪が目に入って、面白そうに笑った。
「あーソルトってやつか。お姉ちゃんに頼りすぎだぜ? かわいそうにな?」
アヴィルはわざとらしく、もう一度クルルシアを抱きしめた。
「てめえ!」
再びとびかかろうとするソルト、しかし悪意がクルルシアではなく自分にだけ向いていることに違和感を覚える。
『ちょ、ちょっと弟の前ではやめてほしいかな』
クルルシアの反応も嫌がっている風ではない。
「ど、どういう……ことだ?」
ソルトの声を聞いて、アヴィルは愉快そうに笑ったあと、ようやくクルルシアを放した。ソルトに言う。
「俺はただクルルシアのこと励ましてただけだっつーの。お前16だっけ。16も19も大して変わんねえから、あんま頼りすぎんじゃねえよ。いつか壊れちゃうぜ? 人間ってほんと脆えんだから。クルルシアは身体は丈夫みてえだけど、心は人間と同じみてえだな?」
アヴィルはクルルシアの頭を優しく撫でる。
『アヴィル、今日はありがとうね』
解放されたクルルシアはアヴィルから離れソルトに近寄る。
『ソルト、行くよ』
「クル姉、大丈夫か?」
そのままソルトは手を引かれ居酒屋から立ち去る。出ていくときにソルトは一度だけアヴィルを振り返り、ぼそりと呟く。
「頼りすぎ…か……」
アヴィルは右手をあげて、顔の横でひらひらと手を振った。
「カワイー子じゃん。心は人間で、身体はドラゴンか。おもしれーの」
彼らに背を向けると、アヴィルはまだ酒を飲んでいるヴァニラに話しかけに行った。