地球にトリップ!~宝石強盗編~ ゆあ×ラムズ
【クロスオーバー】
他の作者様の小説のキャラクターと愛殺のキャラクターで物語を作りました。
※ラムズの台詞と地の文は、私『夢伽莉斗』が書いたものです。ゆあの台詞と◇◇◇以降は赤羽学様が書いたものです。
※ふつうと違う執筆の仕方をしているため、地の文などが少し読みづらいかもしれません。
【キャラクター】
ラムズ
▶『愛した人を殺しますか?――はい/いいえ』
ゆあ
▶赤羽学様
▶https://twitter.com/akaba_gaku/status/1244255440185094145?s=21
【お話】
・なんやかんやあって地球にトリップしたラムズが、地球で暮らしているゆあと一緒に銀座に来ています。頭を緩くして楽しんでもらえると助かります!
三人称視点 日常/IF/ギャグ?/クロスオーバー
ゆあとラムズは、ガラス張りの美しい佇まいの店の前で立ち止まった。
「ここか、この世界で宝石が売っているところは。だが小さい宝石ばかりだな」
ウィンドウガラス越しに、ラムズはすっと目を細める。ゆあは怪訝そうな顔をしたあと、ラムズの上から下まで視線を見た。
「ち、小さいって……。たしかにあなたのネックレスのほうが……凄いわね。うん。で、でもアレよ? 小さくても珍しい宝石はあるんじゃない? あのーアレ、名前出てこないや、えっと、なんだっけ……ら……ラピ……?」
「ラピスラズリか?」
「そうそうラピスラズリ! それそれ!」
「別にさほど珍しくねえと思うが。まあだが、加工技術はあるみたいだな……」
ラムズは窓ガラスの向こうの宝石を指さした。
「俺はあれが欲しい。買ってこい」
「あ、りょーかい♪ アレ買ってくればいいのね? 行ってきま〜す……って買えるかァー! あんなのあたしが買えるわけないでしょ!? ハンバーガーとコーラみたいなワケにはいかないの!」
「……お前には無理か。とりあえずこの店、入っていいか?」
ゆあはきょとんとした顔で店とラムズを交互に見る。
「……え? 入るの? ドレスコード?とか大丈夫なのかしらコレ……入ったことないからわかんないけど……大丈夫なのかしら?」
ふと思案する顔つきをしたあと、彼は頷いた。
「この服じゃこっちの世界のドレスコードには合わねえか。夜中に店に入れば盗めんのか? 魔法はねえんだろ?」
「盗……!」ゆあは力強い口調で言う。「いやいやいや盗んじゃダメよ!? 悪いことしちゃダメ! ていうか、そもそも盗めないんじゃないかしら……? たしかに魔法なんてないけど……。でも監視カメラとか赤外線センサーとかもあるだろうし……」
それとなく店内を眺めたあと、ラムズに視線を移した。
「それにお巡りさんは優秀よ? 今のあなたみたいに目立つ格好してたら、仮に盗めたとしても……すぐに見つかっちゃうんじゃない?」
ラムズは眉を少し寄せて尋ねる。
「かんしかめらとかせんさーってなんだ? もう少しわかる言葉で説明しろ」
「え? あ、そうか、そうよね……魔法がある世界ならないものね……」
彼女は少し唇を結んだあと話しはじめる。
「〜んと……。『その場にいないけど見張ることができる』とか『その場で起こった出来事を記録して残せる』のが監視カメラ。で、目に見えない光で作られた糸を張って、そこに誰かや何かが引っ掛かったら教えてくれるのが『赤外線センサー』かな? ミッキーが見せてくれた映画だとね、なんかその光の糸を見られる眼鏡があったりするんだけど……」
「……なんとなくはわかった」
ラムズは不機嫌そうな顔で、彼女に手を差しだす。
「──おい、あれ貸せ。さっき使ってた四角いやつ。調べればなんでも出てくるって言ってただろ」
一瞬なんのことかわからず、ゆあは顔に疑問符を浮かべた。
「あ、これ?」
はっと思い当たってスマートフォンをポケットから取りだす。
「でもなにすんの? あ、どっかおいしいものでも食べいく!?」
彼女の言葉を無視して言う。
「今言った言葉、それで調べろ。まず監視カメラのほう」
「無視かーい」
突っ込んでもラムズは何も言わないので、ゆあはやれやれとばかりにスマートフォンをいじりはじめた。
「……まぁいいや。えーと、監視カメラ、監視カメラ……っと」
指で少しずつスクロールしていく。
「……へ〜、いろいろあるのね〜。えーと、『生体反応を確認して録画を開始するタイプ』と『常時録画タイプ』と『遠隔操作で直接人間が見張るためのタイプ』と……うわ、凄いなコレ。『生体反応を自動で追尾して録画、同時に持ち主に知らせたうえに、犯人を威嚇するためにブザーを鳴らすタイプ』なんてのもあるのねぇ……」
どこかに目を止め、眼を瞬く。
「ん? 『なお、それぞれ見た目は違う』ですって」
ラムズが無言で手を出すので、仕方なくゆあは彼にスマートフォンを渡した。同じようにラムズも画面の中をのぞいている。しばらくいじってから、顔を上げた。
「普通に盗むのは難しそうだな。おまわりさんってのはなんだ?」
ゆあは呆れながら言う。
「……あくまでも盗む気なのね」(よーし、こうなったら多少脚色してでも諦めさせよう!)「お巡りさんって言うのはね、えーと、ラムズんの世界だとどういう感じなのかしら……。そういえばラムズんの世界の海賊って、誰かに捕まったりしないの?」
「そりゃ捕まることはあるぜ。基本的には国の兵隊が捕まえにくるかな。どの国からも追われてる」
彼女はぱっと破顔する。
「なら、お巡りさんってのはその兵隊さんに近いかも! 悪いことした人たちを捕まえるためにいる人でね、悪いことさせないように見張ったりもするし、悪いことした人のことたくさん調べて絶対、ぜ〜〜〜ったい逃がさない!」
ゆあは力強く言い、さらに強調するように人差し指を突き立てた。
「超、超、超凄い人たちなのよ! だから、ラムズんが宝石盗んだりしたらね? さっき言ったカメラとかでラムズんの顔を記録して、それを世界中に拡げて、あッッッというまに捕まえに来ちゃうと思うわよ〜?」(どうだ! コレでもう諦めるでしょ!?)
にこにこと笑いながらも、むっと口を噤んで少しばかり肩をそびやかしてみせる。
ラムズは疎ましそうな顔でてきとうに頷く。
「まあそういうことなら、魅了魔法でなんとかなりそうだな」
ラムズはそう言うと、ついに店内に足を踏み入れてしまった。
「ん? みりょー? まほー?」
その場で首を傾げていたゆあだが、慌ててラムズを追いかける。
「ってちょちょちょ!? 入っちゃダメだってば!」
店内に入り、まぶしい照明にラムズは目を眇めた。だがガラスの下に並ぶ宝石はどれも美しい。目が奪われそうになるのをなんとか抑えつつ、店員と思しき男に声をかける。
「あー、ラムズ・シャークと言うんだが」
「え? あの。すみません、どちら様でしょうか?」
ラムズは首を傾げ、心底不思議だという顔を繕った。
「あれ? すでに金は払っておいたはずなんだが。聞いてないか? この店の宝石、全部買わせてくれ。いいよな?」
店員はぼうっとラムズを見ていたが、すぐに笑顔を作って答えた。
「そうでしたね! 忘れておりました。今から包んで参ります」
ゆあはラムズの袖を掴みながら、店員のほうを不思議そうに眺めた。
「へ? いや、ちょ、店員さん? あり? ……ラムズん、なんかした? いやしてないよね……? ん?」
「したした、金払っといたから」
ラムズは飄々とそう答え、店内の宝石を眺めている。
店の奥では、別の店員たちがラムズを見て怪訝そうな顔でこそこそと話しはじめた。
「な、なんだあのコスプレイケメン……。金払ったって……お前なんか聞いてた?」
「いやいやいや知らんよ!? あいつ、知ってたのか? なんで俺らには何も……?」
「おい、イケメンこっち来たぞ!」
店員ははっとして礼をする。
「い、いらっしゃいませ……?」
ラムズはにこりと微笑みかけたあと、しおらしい顔で尋ねる。
「俺のこと、覚えていらっしゃらない……? まあいいですよ。店の奥にある宝石も頼みますね」
「え? お金……払ってたっけ……?」
ゆあは未だに何が起こったかわからないという顔で、店員とラムズを見てきょろきょろ目を動かしている。
店員は納得して頷く。
「……あぁ、申し訳ありませんでした。ラムズ・シャーク様ですね? 承っております、少々お待ちください……」
「……大変失礼致しました。すぐにご用意致しますので、どうぞあちらにお掛けになってお待ちください」
片方の店員は柔らかそうなソファへラムズを誘導し、そそくさと店の奥へ入っていった。
あまりに店員の自然な動きに、とうとうゆあは思考を放棄した。一応納得したような顔で呟く。
「……まぁいいか」
しばらくして、店員は大きな紙袋を十個ほど持ってきた。中には革製の箱が敷き詰められるようにたくさん入っている。
「これで……これで当店にあるすべての宝石はお渡しできたかと思います」
もちろん宝飾品の並んでいたショーウィンドウは空っぽだ。
「どうも。じゃああとは──」
ラムズはちらりと店内の奥にある防犯カメラらしきものに目を移した。店の入口の窓ガラスに中の様子を誤認させる魔法をかけたあと、ツタの魔法を出現させ、店員とゆあを一纏めに括った。
「え、えっと……」
店員は自分の体を見下ろし、あくまで冷静な顔で尋ねた。
「これはどういうことでしょうか?」
「お、お客様……?」
「こ、困ります……よ、お客様……」
他の店員たちも混乱しはじめ、しどろもどろになっている。
「あれ!? なんで、てかなにこれ!? ちょっとー! ラムズんーーーー!?」
ゆあは大声でラムズに呼びかける。
「ご案内、ごくろうさま」
ゆあにそう微笑みかけたあと、店員たちに視線を移した。
「それでは皆様、よい船旅を」
ラムズは宝石店を出る瞬間、ぱちんと指を鳴らした。店員たちにかけられていた魅了魔法がすっと解ける。
「っつ!?」ひとりの店員が瞠目して放った。「な、なんで宝石が全部ないんだ!?」
「盗まれた!?」
「なにこれなんだこれ!? 俺たちいったい……!?」
ゆあは彼らを見ながら、窓のほうに向かって叫ぶ。
「店員さんも混乱してるよー! ラムズん帰ってきてカムバーーーックッッッ!」
かなりの大声だ。店員が露骨に顔を歪めた。
「うるさっ! 何この子声デカうるさっ!」
「誰か解いて〜!」
ゆあは相変わらず大きな声で叫び、もぞもぞと体を動かす。
他の店員もゆあを変なものでも見るような目で見ている。
「うるさいうるさい! ちょっ、本っ当うるさいなにこの子なんなんだこの状況」
新しい店員が従業員用の扉から出てきた。
「お疲れ様で〜す、先輩たち休憩どうぞ〜……って、は?」
あまりの異常な光景に、彼は目を点にして立ち止まる。
後ろから、同じく休憩していた店長が顔を出す。
「なにやってんだお前たち。手品の練習?」
ツタで捕まえられている店員が叫ぶ。
「違うわボケェえええ! 宝石盗まれたんですよ店長ォおおお!」
「な、なにいいいい!?」
仰天している店員たちをよそに、ゆあはひとり呆気に取られたような顔をした。
「え、盗まれた? お金払ってたって……アレ? アレ? ……あなたたちさっき自分で渡してたじゃない」
「え?」とツタに捕まえられた店員たち。
「え?」と店長たち。
「「え?」」ついに全員の声が揃った。
◇◇◇
あれから店員によって警察が呼ばれ、防犯カメラの映像などを元に捜査が行われた。ゆあも重要参考人として何度も事情聴取を受けたが、どうも犯人らしき男と知り合いではあるものの、映像の様子からするに協力関係ではないと判断された。また、実際最後に店員と一緒になって捕まっていたことからも、犯人ではないと認められ、すぐにゆあは開放された。
とはいえ、映像を見ても不可解なことばかりで、店員たちはなぜ自分らが男に宝石を渡したのか未だにわからないままである──。
そんな内容のニュースを、ゆあとミカははみかんを食べながら眺めていた。
「ね? あたしテレビ映ったでしょ?」
「もっと他に言うことあるはずでは?」
ゆあと話すのは友人であり、この家の住人でもあるミカ。中途半端な時間に突然遊びに来てテレビをつけ、『テレビ出演した!』とはしゃぎながらニュースを見せてきたのだ。
「どう?」
「どうじゃないですよ、どうじゃないですよ!?」
同じ言葉を繰り返しつつ、二度目に言うときは声を荒げるミカ。ゆあはキョトンとした顔で首を傾げる。
「どゆこと?」
「いやお姉さま事件に巻き込まれてましたよね? お怪我はなかったんですか!? ていうか、事情聴取されたって、それお姉さま疑われてたってことじゃないですか!」
「『実はカツ丼出ない』って本当だったのね……」
「どこ落胆してるんですか!」
まったく会話にならない状況に頭を悩ませながら大きく溜息を吐くミカだったが、今のニュース映像で見た『犯人と思われる男』の影を思い出す。その特徴、犯行の手口、ゆあの証言などで得られた情報から、『あり得ない考え』に至ってしまう。
「……まさか、ね……?」
ミカの目線の先には、一冊の本。このあいだ映画化もされた人気ファンタジー児童書。そのタイトルは──。
今回のお話は、赤羽学様より愛殺書籍化の高額支援をいただいたお礼として、リクエスト短編として執筆致しました。番外編のほうには、エディ×ジウ、メアリ×ジウの私一人で書いた地球へトリップの読み物があります。よければそちらも覗いてみてください!
ご支援いただいた赤羽様、本当に本当にありがとうございました……!