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愛殺 ─あいころ─ 二次創作集  作者: 愛殺読者様
12/28

第53話 ‎シルクハットな少女 -remake-

【半二次創作】

・Twitter企画[#みんなの小説を私の文体でリメイク]より

 紅井エイル様による本編「第53話 シルクハットな少女」リメイク


参照『(仮題)#みんなの小説を私の文体でリメイクする』

▶https://ncode.syosetu.com/n6400es/


#Rレオン視点 アレンジ/リメイク

 メアリたちと話した次の日の夜。


 今日は街に出かけて、宿に帰ってるとこだ。


 ちなみに俺一人で出かけた。アゴールのよく使う通りも覚えたし問題ない。

 時間は……多分だけど十八時くらいか?


 街灯が少ないから地球よりもめっちゃ暗い。

 今歩いている通りもかなり人通りが寂しいことになってる。


 足を早めた。


 いや、男を襲うやつなんていないとは思うけどさ。


 そうそう、魔法の方は宿でもけっこう練習している。

 時の属性を使えそうな気配はないけどな。でも他の属性の魔法は大体出来るようになったんだぜ。


 魔法の何が難しいって、結局はその時の判断力だってことなんだよなー。

 どんな魔法を使えばサクッと倒せるか、っていうか。だからやっぱ、魔物や人と戦ったりしないとダメなんだよ。


 あ、冒険者ギルドと海賊ギルドは両方とも登録を済ませた。だからいつか、ギルドのクエストとかやってみたい。


 実戦はしていないけど、アイロスの爺さんとは練習がてらに戦ったことがある。あの爺さんめちゃくちゃ強くて、俺の魔法をかき消すような感じで戦っていたんだぜ。とても勉強になったなー。


 あそこを曲がれば宿だな。良かった、ちゃんと覚えてる。


「ヤアヤア、こんばんは」


 誰? 


「え? お、おう。こんばんは」


 とりあえず挨拶を返したけど本当に誰? この女の人、全く見覚えがないんだけど。


「君、なかなかいい匂いしてるネ。美味しそう」


「は? いや、どういうこと?」

「チョットいただくことにするネ。ダイジョーブ、痛くない痛くない……」


 女の人が手をかざした途端、意識が朦朧としてきた。


 なんでだろう?


 彼女の笑みがとびきり可愛く見える。


 でも……瞼が……。


「あれ〜。なんで〜」





 ◆◆◆





 目を開けたら知らない天井。


 ここは……どこだ?


 確か……可愛い女の人に声をかけられて、それで眠くなって倒れたんだっけ……?


「起きた〜? ゴメンゴメン。君、全然魔法の耐性がないんだネェ」


 かなり不思議な雰囲気の女の子が顔を覗きこんできた。


 あ、さっきの可愛い女の人だ。


 薄い緑色から、毛先にいくに連れて銀色に染まってる髪が目に入る。


 長さは腰くらいか?


 カールはしてないけどふわっとした感じだ。


 斜めに流れる前髪が左目だけ隠している。


 顔はかなり色白。


 ちょっとおっとりした顔で、少しだけタレ目っぽい? 赤い瞳は大きいけど半開き。眠そうだ。


「えっと……君は……?」


「ハハッ。普段は自己紹介なんてしないんだケドネ〜。まァいっか。僕はミティリイル。ヴァンピールだヨ〜。さっきは君の血、チョット拝借させてもらったヨ?」


 は!?


 驚いて身体を起こし、彼女、ミティリイルをまじまじと見た。


 身長はおそらく160くらいだな。


 シルクハットみたいな薄紫色の帽子を被っている。

 そこに大きなピンク色のリボンがついていて、その上もレースやら何やらで装飾がついている。

 不思議の国のアリスとかに出てきそう。


 服は少しゴスロリっぽい雰囲気もあるけど、なんか不思議系ロリって感じ?

 胸の真ん中に、これまた薄緑色のリボンがあって、そこからぱっくりと割れたようなデザインのワンピースを着ている。


 そして驚いたことに、お尻から白い猫みたいな尻尾が生えていて、耳にも大きくて白い猫耳が付いている。


 つまり何が言いたいかというと、ミティリイルは絶対ヴァンピールじゃない。


 ヴァンピールがこんな眠そうなはずがないだろ!


 もっとなんか、こう、セクシーなお姉さんじゃねえの!?


「その……嘘だよな?」


「嘘? 本当だヨ〜。信じてくれないノ? じゃあお腹空いているし、またいただこうかなァ」


 ミティリイルはそう言うと、ベッドに足をかけた。

 そして俺をぽんと押してまた寝かせる。


 ニコリと笑った。


 といっても眠そうな顔でできる精一杯の笑み。

 ゆっくりと開けられた真っ赤な口の中でギラリと牙が光る。


「それジャア、いただきマース」


 覆い被さってきた。


 そして、俺は首を噛まれた。


 もちろん抵抗することも出来たさ。でもさ、女の子に押し倒されるなんて経験は滅多にできないじゃん?


 もちろん俺はロゼリィのことが好きだよ!


 でもロゼリィは最近俺のことを避けているみたいだし、たぶん恋愛はしないのかもしれない……。

 まあ諦めモードってやつに入ってるよな。


 正直な話、最初から無理だなとは思ってた。だってとんでもなく高嶺の花だぜ、ロゼリィ。


 好きな人のことを考えて現実逃避してみたけど、うん、これは無理だ。


 だってさぁ、俺の胸にミティリイルの胸があたっているんだぜ!?


 気持ちいい……。


 しかも耳に息がかかる。


 ヤバい、異世界最高ー!


 抵抗する気が失せたからそのままミティリイルに身を委ねた。


「んッ……はァ。これくらいで、いいカナァ……。んんッ……」


 あ、ちょっと俺のレオンが……、その……。


 まさかミティリイルに気付かれてないよな?


 密かに腰を動かした。


 ミティリイルはまだ吸っている。吸われても全く痛くはない。


 それよりもなんていうか、全身が痺れてきてぼーっとしてくる。で、宙に浮いた感じでフワフワしてくる。


 吸われているところは敏感になっているのか分からないけど、かなり気持ちいい。


 本当に気持ちいい。


「ッはァ! おしまいネ。美味しかった〜。アリガト。これで本当にヴァンピールって分かった〜?」


 ミティリイルは体を起こし、腰の上に跨がったままで自慢げな顔でそう言った。


 早くどけよ!――なんて無粋なことは口にしない。そんなことは思ってもいないからな。


 尖った牙も、赤黒い瞳も、たしかにヴァンピールらしいといえばらしい。

 でも俺の中のヴァンピールの女の子ってこんなイメージじゃなかった……。


 こんなんじゃなかったけど、これはこれで、可愛い。


「おう……。信じなくてごめん。ちょっと見た目の雰囲気が違すぎてさ」


「ソウ〜?」


「そもそも、なんで猫耳を付けているんだ?」


「あァこれネ。僕ケットシーの獣人(ジューマ)に憧れているんだ〜。かわいいジャン。だからそれの真似だヨ」


 たしかにケットシーの獣人はかわいいよな。

 ミティリイルも十分可愛いと思うけど。


 俺の上に座ったまま、ミティリイルはコテっと首を傾げた。


 可愛い。


「えっとォ〜。君の名前は?」


「俺は怜苑(れおん)川戸(かわど)。人間だ」


「うんうん、分かるヨ〜。ダッテ人間じゃなかったら血を飲まないからネ〜」


「たしかにそれもそうか。いや待って、そうだよ、なんでいきなり襲われたんだ?! 」


「違うんだヨ〜。いつもなら、その場でちょっと魅惑魔法をかけて、パパっと飲んで、そのままバイバイってするノ。でも君が倒れちゃうからさァ」


「そういえば俺に魔法耐性がどうとか言ってたな……」


 下からミティリイルを見上げる。重くはないけどさ……なんだかイケナイことをしているような気分になる。


 彼女の服はさほどセクシーなわけじゃないが、例のど真ん中のリボンの上から覗けば、たぶん谷間が見える。

 でも今は上に乗っているせいで見えない。

 その代わりというかなんというか、下が際どい感じだ。タイツだしワンピースだし……。


 もうちょい、もうちょい……くそっ見えないか……。


 胸はけっこうデカい。


 ロゼリィほどじゃないから、うーん……多分Dくらいかな。ヴァニラくらい。


 メアリよりは大きいな。


 人魚ってほぼ裸同然なのに、割かし小さめのメアリって、ちょっと同情するわ。こんなこと口が裂けても言えねえけど。


 ミティリイルは眠そうな瞳をパチパチ瞬かせる。


「魔法耐性がないっていうのは、魅惑魔法や状態異常にほとんどかかったことがないってことだヨ」


「言われてみれば、俺そういうのかけられたことないや」


「じゃあ僕が君の処女を奪っちゃったんだネ。ハハハ〜」


 処女……ね。


 女の子からそういう言葉を言われるとちょっとドキっとする。


 ミティリイルは頭のシルクハットをきゅっと押し込んだ。

 さっき血を飲んでいる時にズレてしまっていたらしい。


 そしてミティリイルは、ようやく俺からどいた。

 ベッドからぴょんと飛び降りる。まるでネコみたいだ。


 俺も身体を起こして部屋を見渡した。ここはどこかの宿屋みたいだ。

 ミティリイルの家の部屋にしては物が少なすぎる気がする。

 俺が今泊まっている宿屋と同じく、木の机と椅子、小さな窓がついている。床には彼女の荷物が散乱していた。


 あれは……槍?


「レオンだっけ? どこから来たノ?」


「あー」


 海賊って言っちゃっていいのかな。一般人にはどう思われてるんだろう。まあいっか。


「海賊船で、ちょっと……」


「海賊船? レオンは海賊なんだァ。なかなかイカしてるネ」


 一応好感触みたいで良かった。


 ミティリイルは、ふんふんと頷きながら俺のことを見ている。イカしてると言ったわりには、眠そうなままだ。可愛いけど。


 腰に刺さったカトラスの方に視線を向けられた。


「あぁ、これ? 俺はまだ新米だから、全然カトラスは出来ないんだよ」


「そっかァ〜。いつか戦っているところとか見たいナ。ちなみに僕はソロの冒険者なんだ」


「一人なのか? 誰かとやらないの?」


「ウーン。パーティは組みたかったけど、ヴァンピールだとなかなかネ」


「ヴァンピールって人間に嫌われているのか?」


「ン〜。微妙なところかなァ〜。好きな人も多いんだけど、好きな人が苦手なんだヨ、僕。眷属にしてーって言ってくるからサァ」


「そういえばヴァンピールの血を飲むと眷属になるんだっけ?」


「ウンウン。その話してもいいけど、帰らなくていいノ〜?」


「あ、そうだった! ごめん。また会えるかな?」


 慌ててベッドから立ち上がった。


「会ってもいいよォ。あんな魅惑魔法で倒れちゃう人間なんて、久しぶりだしチョット面白かったからネ」


 ミティリイルは部屋の扉を開けて、そのまま廊下へ出る。

 俺を外まで送ってくれるみたいだ。


 今更だけど、どうやって俺のことを運んだんだろう。

 全然力は強そうに見えないし、ヴァンピールってそんな能力もないよな……?


 魔法かな?


 なんか想像するとかなりシュールだ。





 ミティリイルは、俺が襲われた辺りまで送ってくれた。


 靴は薄緑色で、先がくるんと丸まってる。どこかの妖精みたいな靴だな。見た目はほんと、不思議な感じだ。


「じゃあ、またネ〜。まだまだ宿にはいるから、いつでも来ていいヨォ。血の提供、待ってる〜」


「お、おう」


 俺はちょっと笑って、彼女の方へ手を挙げた。

 ミティリイルはゆっくり小さな手を振っている。そのあと、タタタッとネコのように素早く駆けて道の角に消えていった。


 彼女の宿の場所は覚えた。明日か明後日にでも、また訪ねてみよう。

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