9.湿地帯で見たモノ
「やったね、レオくん。これで湿地帯に入れるよ!」
「そうですね! レイラさんに感謝です」
さて、二人のデートを終えて翌日である。
私とレオくんは、ガタ草があるという湿地帯へと向かっていた。
少年の服装は、昨日レイラに買ってもらったモノではなくいつもの継ぎ接ぎだらけのそれ。どうしてなのかと思い、私は聞いてみることにした。
「そういえば、買ってもらった服はどうしたの? せっかく似合ってたのに」
すると彼は、やや恥ずかしそうに笑い言う。
「さすがに、これから外に出るのにあんな大切な服は着れませんよ。汚しちゃったら、大変ですから……」――と。
『高価な服』ではなく『大切な服』――少年はそう表現した。
そこに、彼の性格が出ているように私は思う。決して金銭的な繋がりではなく、心と心を通わせることが出来る。それはきっと、素晴らしいことだった。
仲間の素敵な一面を知ることが出来て、私は嬉しくなる。だが――。
「……あれ? どうして、昨日のボクの服装をご存じなんですか?」
「あ……」
――その反面で、下手を打っていたことに気付いた。
昨日の二人のデート。私とエレミオがその後ろをつけていたのは秘密だった。
あくまで今日は、レイラの家で別れた時以来の再会、ということになっている。だから、少年が服を買ってもらったというのは知らない、というはずだった。
「もしかして、エレナさん……」
「………………」
私をジト目で見つめるレオくん。
苦笑いを浮かべつつ、視線を泳がせる私。
嘘が苦手な私はここまで攻め込まれると、どうにも出来なかった。
「はぁ……。分かりました、大丈夫ですよ。レイラさんには秘密にしておきます」
「……うん、ありがとうね」
少年は少しだけ呆れたようにため息をつき、そう口にする。
それに申し訳なく頭を垂れて、感謝を述べた。しかし、そうしているとレオくんはふと、こう訊いてくる。それは、言われてみればたしかなことで……。
「でも、ボクとレイラさんのデートを監視する意味なんて、あったんですか?」
「うん……? そう言われてみれば……」
そうなのであった。
今さらながら、何故に私は二人の後をつけたのか。
それを言えばエレミオも同じだったけど、理由は自分でも分からなかった。私たちは二人そろって首を傾げ、しかし分からない。
なので、湿地帯に着くまで互いに無言となるのであった――。
◆◇◆
――国の外れにある湿地帯。
そこに到着すると、私たちは同じ感想を抱いた。
「このニオイ……」
「ちょっと、キツイですね……」
眉間に皺を寄せるほどの異臭がしたのである。
なんだろうか。卵を腐らせた、というのとは少し違う。
しかし、なにか知っているモノに例えられそうな、そんなモノだった。
「レイラさんの話だと、こんな変なニオイがするなんて聞かなかったですけど」
「うん。アレンお兄様も、そんなこと言ってなかった」
私たちは互いにそう、情報を交換する。
元よりココは、人があまり寄りつかなかった場所だ。
だから、もしかしたら誰も来なかったこの期間に何かがあった、と考えるのが普通だろう。それとなると、何かしらの障害があるかもしれない。
「注意しよう、レオくん。もしかしたら、変な魔物が――」
――住み着いたのかもしれないから。
そう、私は彼に忠告しようとした。その時だった。
「ん? どうしたんですか、エレナさん」
「……………………」
レオくんの後方に、なにか、見えてはいけない魔物が見えたのは。
そいつは強靭な鱗でその身を覆っていた。四足歩行をして、長い首をもたげている。口からは異臭の正体とも思える、紫色の呼気を発していた。
大きさは軽く、十メイルはあるだろうか。
少なくとも私たちなど、小さな虫程度にしか思わないだろう。
「あれって、まさか……」
私は、思わず声を漏らす。そうその正体とは――。
「――ドラゴンっ!?」
湿地帯に住み着いていたのは、通常のそれとは異なるドラゴン。
身体は変色し、目は光を失っている。そんな、異形と化した魔物であった――。
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