6.条件
「レイラ・フランソワさん――その方が、リリアの病気を治す手がかりを?」
「うーん。手がかりというか、何というか……」
「……?」
翌朝。私とレオくんは、街を歩きながらそんな話をしていた。
その目的というのも、レイラ・フランソワの家を訪ねるためである。
ガタ草採集のためにはまず、彼女の家の許可をもらわなければならない。したがって、私は少なからず因縁のある相手に頭を下げに行くのであった。
いや、まぁ――別に恨んでるわけでもないのだけど。
彼女の大法螺のお陰で、私は冒険者になれたわけだし?
「まぁ、とりあえずは行くだけ行ってみましょう」
「はぁ……? そうですね、行きましょう」
悶々とする私を見上げて、少年は頭の上に疑問符を浮かべていた。
とりあえず今回の問題には、私の家の事情はまったく関係ない。だから、気持ちを切り替える必要があった。――さて。そんなことを考えている間に、フランソワ家は目と鼻の先になるわけなのだけど……。
「あら……? エレナさんではありませんか」
「……げ」
フランソワ家の前。
これから散歩にでも行こうとしていたのか、日傘を差したレイラとエンカウントした。彼女はきょとんとした顔をしてこちらを見る。が、すぐにワザとらしい微笑みを浮かべて、こちらへと歩み寄ってきた。
そして、、恭しい所作で礼をする。
「おはようございます。エレナさんも、お散歩ですか?」
「あー、うん。まぁ、そんな感じかな……」
そんな言葉を投げかけられるので、私は思わずそんな曖昧な返答。
散歩なんて目的ではないけど、とりあえず偶然を装ってしまうのであった。
「あ、あの! レイラ・フランソワさんですか!?」
しかし、そんなこちらの気持ちなど知る由もないレオくん。
彼は一生懸命にレイラへ声をかけた。すると――。
「ん、今日はお連れ様が…………ひゃ!?」
――桃色髪の令嬢は、小さな悲鳴を上げた。
レオくんを目にした瞬間に、彼女は顔を真っ赤にする。
「あ、あら。貴方はこの間の……」
そして、必死に取り繕う。
髪を何度も整えて、落ち着きがなかった。
見るからに挙動不審なレイラであったが、レオくんはそんな様子に気付く余裕すらないのか。少しだけ距離を詰めながらこう言うのであった。
「はい、レオと申します! この度は、お話があって参りました!!」
「お、お話っ!? な、なんでしょうっ!!」
なにを勘違いしたのか、令嬢は顔をさらに真っ赤にして声を裏返らせる。
私はそんな様子を目を細めながら見つめるのであった。
「ボクは真剣なんです! 聞いていただけますか!?」
「真剣っ! も、もちろんですわっ!!」
ずずいっ、と。
さらに距離を縮めるレオくんに、たじろぐレイラ。
そして、最後に少年はこう口にするのであった――。
「ガタ草の採集について、許可をいただきたいです!」
「…………へ? ガタ草?」
――すると、途端に真顔になるレイラ。
レオくんと私を交互に見て、目をぱちくりとさせていた。
そんなこんなで、ひとまず私たちは交渉の場に立つことが出来たのである。
◆◇◆
「なるほど。そういうことでしたか」
一通りの話を聞き終えたレイラは、顎に手を当てつつそう言った。
場所はレイラの部屋。いかにも、といった乙女趣味が散りばめられた場所だ。
冒険者や治癒術、その他に格闘術や護身術の本がぎっしりとしている私の部屋とは真逆の部屋だった。全体的にピンクだし、どことなく居心地が悪い。
「はい。ですから、ガタ草のある湿地帯への立ち入り許可が欲しくて……」
「……ふむ」
レオくんと私は並んで、レイラはテーブルを挟んだ向かいのソファーに腰かけていた。考え込む相手を見ながら、ちらりと少年の横顔も観察する。
そこには、いつも以上に真剣な色が浮かんでいた。
それを見るとやはり、私とレイラの小さな確執なんて大した問題ではない。
「分かり、ましたわ……」
「本当ですか!?」
さて、そんなことを考えていると。
レイラは言葉を少し詰まらせながら、そう口にした。
レオくんは歓喜の声を上げる。しかし、すぐに待ったがかかった。
「ただし、条件がございますわ!」
「条件……?」
それに、私たちは首を傾げる。
レイラはそんなこちらの様子を見ながら、こう言うのであった。
「レオ様? 私と、一日デートをして下さいまし」――と。
…………は?
私の頭の中に出てきたのは、そんな一言だけであった――。
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