10.魔法剣士
――閃光が走る。
レオの動きは、まさしく光のそれだった。
大剣を振るうカイウスの周囲を、炎が舞い踊る。その素早さは、Aランク剣士である彼にとっても、目で追うのがやっとなモノだった。次第に、カイウスにも焦りが募る。
「な、なんだというんだ!? ――こんな動き、見たことがない!」
「でしょうね。ボクだって、剣を握るのは初めてですよ」
「な――!?」
その時、カイウスの背後から声がした。
振り向くとそこには、炎の剣を叩きつけんとするレオの姿。
とっさに大剣を盾としてその一撃を受け止めるカイウス。だが、少年の剣圧は並ではなかった。思わず膝を折ってしまう。片手剣の威力ではなかった。
「くっ、貴様――!? いったい何者だというのだ!!」
「ボクは、普通の冒険者ですよ。少し、魔法が下手な魔法使いです」
一度、距離を取って時間を稼ぐAランク剣士。
そんな彼の問いかけに、少年はこれといった感慨もなく答えた。
そう。レオにとってもこれは、想定していなかった出来事。だから、カイウスの問いに対して明確な答えを持っていなかった。自分は、何者なのか……。
しかし、それでも強いて言うなら、と。
少年は少しだけ考えて、こう自らについて述べた。
「魔法、剣士……。そうですね、ボクは『魔法剣士』なのだと思います」――と。
――魔法剣士。
その響きに、カイウスは苦虫を噛み潰したような顔をする。
何故ならそのクラスは、例外級と呼ばれるクラスの名であったからだ。
「魔法剣士、だと……?」
原則として、冒険者のクラスは一定のランクに到達しなければ一人一つと制限されている。しかし、中には例外と呼ばれる者も存在した。――それが、レオの言う『魔法剣士』である。
魔法と剣技を共に極めた者の到達点。
それこそが例外級――EXクラスと呼ばれるモノであった。
「馬鹿を言うな! お前はさっきまで、魔法の発動すらままならなかったじゃないか!! それが、魔法剣士だなんて、冗談にも程があるだろう!?」
「えぇ、だから。自分でもよくわからないんですよ。ただ――」
レオは剣を構えながら、こう言う。
真っすぐに、鋭い眼差しをカイウスへと向けながら。
「――これでボクは、大切な人を守ることが出来る」
その直後に、少年の姿は掻き消えた。
「くそっ、ふざけやがって! 俺がこんなガキに負けるわけがねぇだろうが!!」
しかし、そこはAランク剣士たる所以か。
カイウスも簡単にやられるレベルではなかった。
即座に大剣で地面を叩き、大地を砕き土煙を舞いあがらせる。これによって、一時的ではあったが姿を隠した。だが、それも束の間のこと。
少年は易々と剣士へと迫り、静かにこう言った。
「ごめんなさい。ボクは、あまり人を恨まないんですけど――貴方だけは、例外でした。本当に、すみません」
「なっ――!」
――一閃。
少年の放った燃え盛る一撃は、カイウスの身にまとう鎧を砕いた。
その衝撃は確実に、その内部まで達するモノ。血を吐き出した剣士は、土煙舞う舞台の上で音もなく倒れるのであった。瞬間に、一陣の風が吹く。
そして観衆へと、この決闘の勝者を告げるのだ。
「――勝負あり! 勝者、レオ!!」
戦いを見守っていたゴンザが、そう勝ち名乗りを上げる。
その時、一瞬のざわめきがあって。しかし、間髪を入れず――。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』
――歓声の雨が降り注いだ。
「レオくんっ!」
「あ、エレナさ――わぷっ!?」
その最中、少年に駆け寄るエレナ。
勢いそのままに、彼のことを抱きしめた。
「はははっ! 本当に、凄いな……」
そんな二人の様子を見て、リュークが呟く。
そう。彼には、分かっていた。
この二人が、いずれ国を動かすことになると。
そして、これはその第一歩に過ぎないのだということを。
だがしかし、今はそんなことは放っておこう。
リュークはそう思って、二人のもとへと歩み寄るのであった――。
明日も三話投稿頑張ります!
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