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第5話 ダーラン村

 マイアは細かな傷はあるものの、疲労さえ取れればいつでも移動できる状態だったが、念のために一晩マイアを休ませることにした。

 マイアはハヤテの保存していたいくつかの果実のハヤテの知らない食べ方を教えてくれた。

 翌朝、ハヤテが朝目を覚ますとマイアの姿がなかった。

 周囲を見渡していると頭上の木からするするとマイア降りてきた。

 その様子はまるでネコ科の動物がしなやかな肉体を利用して華麗に直地したように見え、ハヤテは感心してしまった。

 どうやらハヤテの知る一般的な人間の女性よりも高い身体能力を持っているようだ。

 

「おはようハヤテさま……じゃなくてさん、今日は一日いい天気になりそうよ。

 ところでハヤテさんはどこに向かっているの?」


 ハヤテ様って呼んでくるので呼び捨てでいいと言ったのにどうしても敬称をつけたいというのでさんで妥協した。


「空を飛ぶ船が下りたところを探している」


「それなら今から少し前にハヤテさんがいた方に何か落ちていったって聞いたわ」


 それに乗っていたのがハヤテなのだが、それを伝えるわけにもいかない。


「その落下物はすでに調べたんだ、何か他の話は聞いてないか?」


「ごめんなさい。私が聞いたのはそれだけ……」


「いや、いいんだ。旅しながら探すつもりだ」


「それならとりあえずうちの村に来るといいわ、みんな心配かけてしまったし、ちゃんとお礼もしたい」


 別に御礼はよかったが、今は少しでも情報が欲しかったので、ハヤテはマイアの誘いに乗ることにした。

 それにいくつかの栄養価は高いが酸っぱくて食べるのがつらかった果実を調理次第で食べやすくなったりと、この星を生き抜く知恵を得る必要があった。

 高度な知識を持った先住民がいる惑星は、残念ながら商品にはならない。

 それでもこの星には大変不思議な性質のマナという物質がある。

 惑星開発は無理でも、そっちで一山を当てられる! ハヤテはそうそろばんを叩いていた。


 ハヤテはマイアにいろいろと教えてもらいながら村までの道を楽しんでいた。

 特にマナを使ったまるで魔法のような技を期待していたのだが……


「……なにも出ない……」


「うーん、ハヤテさんは外に発する系のマナは使えないみたいね……

 肉体強化とかは出来たんだし! 一流の戦士になれるわよ!」


「この肉体強化はナノマシーンで起きてるんだと思うんだけどなぁ……」


「どっちにしろ、その力は凄いことだから自信を持っていいと思う。

 5匹のパラス族と戦って無傷なんて、王国の兵士でも難しいわ」


「……あいつらは何なんだろうな?」


「わからない、大昔から私たち、ううん、動物だって自然だってあいつらに食い荒らされている。

 群れて残虐で……どこに住んでいるのかもよくわかってないの。

 ただ、よく見かける場所ってのがあって、そこには近づかないんだけど、それでもはぐれパラス族の集団とかはたまに村を襲ったりするわ……」


 このあたりの無作為さは多脚人とよく似ているとハヤテは思っていた。

 多脚人は滅ぼした相手の文化を取り入れて成長する悪辣さを持っているのでさらに厄介だった。

 いまでは宇宙空間までその魔の手を伸ばしている……


「なんにせよ、パラス族をあっさり倒せる力を持ってるハヤテさんならうちの村も大歓迎よ!」


「だといいけど、見た目の違いとかは気にしないのか?」


「そりゃパラス族とおんなじ見た目なら大変だけど、みんな違うのなんて当たり前じゃない」


「それは素敵な言葉だ。どうにも俺らの種族はそういったものにうるさい奴が多くてな」


「変なの、見た目より性格とか能力の方が大事じゃない?」


「そういわれた方が気持ちがいいね」


「と、ところでハヤテさんは……私みたいな毛の多いのは嫌い?」


「ん? いや、気にするわけないだろ、足も速いし食事も上手い、性格もよくて能力も高ければ魅力的な人間だろ」


「あ、うん。……そ、そっかー……まぁ、マイナスじゃないみたいね。(女として見られてないっぽいけど)」



 流石に乳はでかいしスタイルもバインバインだからな。というのは伏せておくぐらいのマナーを持っているハヤテであった。


「あそこがダーラン村よ」


 少し小高い丘の上、崖を背負うようにいくつかの木製の住居が並んでいる。

 いくつかの家からは煙が上がり、昼の炊事を行っているのだろう。

 小さな村だが、周りの自然と一緒に暮らしている感じが、ハヤテにとってはとても好印象だった。


「マイア!!」


 村から大きな声がした。同時に一人マイアとハヤテのもとに駆けてくる。

 それから数名、少し警戒している感じで二人に近づいてくる。


「マイア姉さん無事だったのか!?」


 はじめに飛び出した男はマイアと似た外見、少し吊り上がった目とピンと立った耳、やはり猫っぽい印象を受ける。


「そいつはなんだ?」


 明らかにハヤテに対して不信感と不快感を感じており、それを隠すそぶりもない。


「カフェル! 私の命の恩人にそんな口の利き方をしないで!」


「!? そ、そうだったのか、これは失礼した。

 我が姉マイアを救ってくれたこと心から感謝する」


 すぐに態度を改めて、姿勢を正し礼を言うその青年にハヤテは好感を持った。


「いや、成り行きで助けただけだからかしこまらなくて大丈夫。

 しばらくお世話になる予定だから、仲良くしてくれると助かる。

 サカキバラ・ハヤテ、ハヤテと呼んでくれ。

 常識しらずの無粋ものだからいろいろと教えてほしい」


「わかったよハヤテ、俺もカフェルで構わない……っと、凄まじいマナだな……」


 ハヤテと握手をするとすぐにハヤテの異常に気がついたカフェル。


「そうなのよカフェル、貴方の方が肉体強化系のマナの使い方は詳しいでしょう?

 ハヤテさんはマナの使い方を知らないそうだから、せめてそれだけでも御礼代わりに教えてあげたくて……お願いできる?」


「もちろんだよ姉さん!」


 カフェルはすっかり警戒心を解いて屈託のない笑みを浮かべている。

 姉の帰還がよほどうれしかったのだろう。

 村から来た数名もマイアの話ですっかり安心して、ハヤテを村に招き入れてくれるのだった。

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