第47話 宇宙へ
結局宇宙船が完成するのに、数ヶ月の時間を必要とした。
今更宇宙について思うことも無くなっていたが、まだ他の星でパレス族的な奴らによって酷い目にあっている星が周囲の星域に存在するという事実を聞いて、じっとしてはいられなかった。
ゲンブ星とゲンブは当然繋がりがあり、俺達が宇宙を移動しても緩やかーにそれを追尾するそうだ。
ゲンブとシロ、クロ、アイがいれば俺とカフェルはマナを利用しながら戦える。
できる限りゲンブ星上ではこの力を振るわず、国家間のパワーバランスを壊さないように心がけているが、シーラーは各国に秘密組織的なものを作ってしまっているようだ。
「ご迷惑はおかけしないようにします、戦争を起こさないで穏やかに暮らしていく手助け程度ですよ」
笑顔が逆に怖かった。
身重なんだからあまり前線に立ってほしくないんだけどねぇ……
マイアとシーナは戦闘訓練などを村の若い衆に施している。君たちももうひとりの体じゃないんだから、あまり熱くならないようにと口を酸っぱくしているんだが……聞いてはもらえない……
「留守の間村を守ってもらわないといけないじゃん!」
「旦那様たちが安心して旅立てるお手伝いをさせてもらえませんか?」
こんな事言われたら反論もできなくなってしまう。
「諦めましょうアニキ、早く俺たちが帰ってくればそれだけ安心できますから」
カフェルは俺の右腕として働いてくれる。一緒にいるとあまり感じさせないが、実はモテモテで引く手あまた、強い獣人はそれだけで魅力となる。
圧倒的な能力を持つカフェルの人気もうなずける。
「カフェルは世帯を持たないのか?」
「うーん、アニキを見てると……って嘘ですよ。俺はまだ冒険の中で生きたいんです。
それに多少いくつか家庭を持っても養える程度の力はありますから」
獣人は一夫多妻も珍しくない。
俺も、その制度にならってしまったわけだが……
「さてハヤテ、みんなの子供が生まれる前にさくっとあの星を救いに行こうじゃないですか」
ゲンブが手をかざすと宇宙船の扉が開く、過去の宇宙船をベースにシロ、クロ、アイの知識を総動員してこの星の構成物質とマイクロマシンの上位互換であるマナを利用したハイテクノロジーによって作られた宇宙船になっている。
大きさは中規模駆逐艦程度だが、実際には可変機能がついており大人数を運ぶ輸送艦のようにもなるし、戦闘機サイズにもなる。なかなかロマン溢れる機体になっており、正直こんなものが手に入っただけでも心躍ってしまう。
入り口から放たれる光が俺たちを包み込むと音もなく体が浮かび上がって艦内へと誘導される。
艦内も思ったよりも広い作りになっており、俺の持っていた借金の塊よりも上等な造りなっている。
「すごいなーやっぱり……」
ブリッジに出ると、全方位の映像が壁面に浮かびだされていて、まるで艦橋が空中に浮いているように感じる。
「最新鋭の高級船でもこんなに豪華じゃないぞ……」
座り心地の良い椅子に身を任せて映し出される風景をぼーっと眺めるだけでも、贅沢な時間だ。
「これだけの規模の宇宙船を4人で完璧にコントロールしてくれるんだから、もう、ほんとに帰る必要ないな……」
「アニキ、それでは行きますか!?」
「ああ、さっさと害虫駆除して帰ってこよう。俺たちの村へ!」
ほんの少しの振動を感じるが、静かに船は空中に浮かび上がる。
そのままぐんぐんと高度を上げていき、あっという間に宇宙区間に突入する。
「……とんでもない代物だなこの船は……」
「マナによる重力制御が可能にしたシステムですよ」
アイが得意げに答えてくれた。魔法を使った推進力なんて理解できるはずもない……
オーバーテクノロジーだろ、そもそもマイクロマシンの集合体が完全な自我を持っている時点で……
正確にはマシンではなく生物の細胞なのか……
「目標の惑星付近までジャンプします」
「カフェル様、マスターは座席に座って安全装置を着用ください」
ベルトを締めてジャンプに備える。
ワープと異なり速度を出す必要もない。
文字通り空間から空間へジャンプするように移動する。理論はしらん。
「座標確認、ジャンプ完了しました」
ふわっとした浮遊感があったと思ったらすでに移動が終了している。
ワープと異なり移動に時間が必要としない、そしてゲンブ星から離れる場合は距離の問題があるが、帰り道はどんな場所からだろうがジャンプすることが可能という……チート的な移動手段だ。
「惑星をスキャンしました。複数箇所に虫の巣が存在しており星のエネルギーを利用してその数を増やしています。原住生物のレベルは動物レベル、文化というものは存在していませんが自然豊かな綺麗な星です。マスター、虫を殲滅しましょう明らかな外来生物による侵略です」
「俺達もそうじゃないのか?」
「いいえ、虫は本来イレギュラーな存在です。この星をもとの状態に戻すだけです。
なお、この星の原生植物の一部は大変美味なので採取を推奨します。とっても美味ですよ」
そう言われてしまえば、断る気も起きなくなる。
「よし、カフェル、シロ、クロ、アイ。この星をもとの状態にもどして、ちょっとだけお礼をもらって村へ帰るぞ!」
戦闘機サイズに変形して星へと突入していく。
星へのダメージを抑えるためにも虫の駆除は俺たち5人で突入して行っていく必要がある。
あまりにひどい場合は船からの攻撃も考えている。
まだまだ宇宙空間にはゲンブ星のマナを利用してばらまかれた虫たちがたくさんいる。
俺らの冒険は、それらをすべて取り除くまで終わらない。
変えるべき村と、船に乗っての冒険、俺の旅はひょんなことからずいぶんと変わってしまった。
それでも、一攫千金夢見たら墜落してしまったので、その星で生きることにしたら幸せを手に入れました。
家に帰り、自分の子供を抱いたとき、そのことを強く感じたのでありました。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
お暇がありましたら他の作品も覗いてみてください。
本当にありがとうございました。




