第39話 司令塔
救助艇は特に目立った外部損傷も認めずに着陸したようだった。
すぐに白、黒塊に船体のチェックを頼んで、ロックを解除する。
「マスターコードを確認、ロックモード解除します」
静かにドアが開く。
逸る気持ちを抑えて物資の確認を行う。
そして、そこにある物を見て、思わず安堵してしまう。
「やっと会えたか百眼」
白塊、黒塊と並ぶ相棒、百眼。
統合情報集約処理解析ウルトラコンピューター、俺らの司令塔だ。
接続端末であるヘッドセットをつける。
本体は球体のナノマシンの集合体だ。
「百眼、久しぶりだな逢いたかったよ」
「マスターコールを確認、お久しぶりですマスター、御身の無事に感謝を、白塊、黒塊も久しぶりだな。
情報は共有した。いままでよくマスターを守ってくれましたありがとう」
いつもの落ち着いた声。この声を聴くだけで、どんな逆境でも何とかなる気持ちなったもんだ。
はっきりと断言が出来る。これでこの星の探索における壁は無くなった。
この3体を統合した情報処理能力は軍事基地にも匹敵する。
個人で惑星に侵入して掌握する無茶な任務が出来るのも、彼らのおかげだ。
「少なくとも、このマナという存在のベースはマイクロマシンであることは間違いありませんね」
加入と同時に随分と重要な情報を……知っていたけど、ちゃんと分析でもわかるんだね。
「ならば、センサー系を使用できるようにするのは難しくないと思います。少々お待ちください」
「解決できるのか、済まないが頼む」
そうこうしているうちに救助艇のチェックも終わる。
周囲で警戒してくれているみんなにも、強力な仲間が加わることを伝えないと。
「凄いじゃないですかアニキ!」
「またハヤテがすごくなるのね!」
「ハヤテ様おめでとうございます!」
みんな自分の事のように喜んでくれた。
「マスター、3人でマスターの乗ってこられた物と本艇を使って旗艦を作成してよろしいですか?」
「ああ、頼む。時間はどれくらいだ?」
「3時間ほど頂ければ、この先に人が使用可能な温泉がありますのでそこまで移動して作業に入りましょう」
「さっすが百眼わかってるな!」
俺たちの状況を正確に理解して、最適解を即座に導いてくれる。
湯だまりでもあれば、身体を拭くか、可能なら浸かれればいいと考えていた俺たちだが、今百眼が加わったのならば、まるで仕立てられた温泉設備のような場所でゆっくりと湯舟に浸かれる。
その情報を皆に伝えて意気揚々と車に乗り込む、俺たちのテンションは最高潮だ。
シーナだけが何のことかよくわからずにきょとんとしている。
救助艇をけん引しながら百眼の指示で移動すると、小型の池のような場所に出た。
すぐに百眼は白塊、黒塊を使って温泉設備を作り上げる。
うーん、俺が操作するのとは桁外れの精度とスピードだ。
「ごゆっくりおくつろぎください」
荷物なども一時的にその建物に収めて、休憩所まで作ってくれた。
百眼たちは二つの艇を使って移動用の新旗艦を作ってくれるらしい、もうあとは任せてゆっくり風呂に浸かるだけだ。
「天然温泉だぁ……」
ここのところゆっくり風呂も入れていなかったので余計にテンションが上がる。
「アニキ凄いっすね!」
「ハヤテーこっちも素敵よー」
「こ、これは私も入ってよろしいのですか?」
百眼は分かってるやつなのでしっかりと男女湯を分けてくれた。
「マイアー、シーナのことは頼んだぞー」
「任せといて―、さーシーナちゃん。一緒に綺麗になりましょうねー」
「は、はい! ってどこ触ってるんですかー!?」
お約束である。
その後も二人のじゃれつく声を聴きながら無心で体を洗う。
体についた汚れと一緒に疲れも抜けていくような感覚だ。
となりでカフェルも気持ちよさそうに泡だらけになっている。
「おいカフェル、背中洗えてないぞ。
洗ってやるぞ」
「すみませんアニキ!」
ううむ、わんこを洗っているようで、可愛いのであーる。
「よし! 入るか!」
「はい!」
目の前にはジャングルの大自然、湯舟は即席の木張りの湯舟だが、半分は自然な湖の形が残っている。
湯加減は少し熱めだが、その熱さが凝り固まった身体を解してくれるかのようだ……
「ふいいぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~」
変な声が出た。
「さいこーですねーあにーきー」
となりでカフェルが耳をぺたーんとリラックスさせて湯舟に浸かっている。
気持ちはわかる。溶けてしまいそうだ。
「ああ……温泉設備、家にも作りたいなぁ……」
「ハヤテーぜったいつくってーーーーー」
「ハヤテ様~おねがいしま~~す~~~」
皆の木の抜けた声が風呂場に響く、強行日程の旅で、溜まりまくった疲れが、温泉に溶けていくような至福の時間が過ぎていくのであった。
風呂から上がると浴衣が置いてあり、キンキンに冷えた牛乳や軽食が休憩所に用意されていた。
人を駄目にする百眼、本領発揮だ。
リクライニングチェアもいつの間にか作られており、気がつけば4人で眠りについていた。
目を覚ますときちんと毛布がかけられ着替えまで済まされていた。
もうだめだ、俺は百眼を手放せない体に改造されてしまった……
そしてそれは他の4名も同じことだった……




