第36話 久しぶりの戦闘
俺たちは馬車に揺られていた。
帝国領を一路南に、表向きは行商という形を取っている。
俺にマイア、カフェル、シーナそれと馬車を操っているメイオンの部下である御者の5人だ。
メイオン自身はこんな地方の離れた小さな村への行商に同行することが、不自然になってしまうために留守番をすることになった。
「のどかだねー」
一面に広がる草原、わずかな丘陵はあるが、本当に地平線まで草原が広がっている。
帝国の強さは国土の広さに由来するのだろう。
まだまだ人口増加を受け入れる土台にあふれている。
王国もそういう意味ではまだまだ発展できる。
この世界には魔物や凶暴な獣も多く獣人達が安心して生活できるエリアは多くはない。
それでも、これからいろいろと発展していけば、夢が広がっていく。
「そもそも、他国と戦争なんてしてないで魔物とか動物とか何とかして国内に生活エリアを広げればいいのに……」
「うちの村みたいに辺境にいるとよその国のことまで考えてなんてられなかったけどね」
「アニキが来てからどんどん生活が良くなって本当に驚きました!」
「あれは俺の力じゃなくて、俺の持っていたものが良かっただけだよ」
「それでも村の皆はアニキに感謝してますよ!」
「そうよハヤテは皆の恩人なんだから、だから早く結婚して子供作りましょ!」
「い、いけませんマイア様! メイオン様に怒られます現在は休戦の約束です!」
「あら、ついうっかり……まじめねーシーナは、黙っておいてよ~」
「駄目です。メイオン様にもきちんと言いつけられておりますので!」
俺に関することが俺のいない間に勝手に決まっているんだよなぁ……
「ハヤテ様、前方から敵襲です」
御者が急を告げる。俺は馬車から飛び出して指さされた方向を見る。
草むらがガサガサとかき分けられ、いくつもの筋が馬車に近づいてくる。
「獣か……?」
「いや、アニキ、パラス族だ!」
武器を持ったカフェルとマイア、それにシーナも続く。
「シーナ、周りの草が邪魔前方を刈り取って」
「わかりました!」
シーナは獲物である大きな戦斧を横一文字に振り払う。
馬車の前方一帯の草が見事に短く刈り取られてそれなりの空間が広がる。
……どう考えてもリーチよりも広い範囲の草が斬れている……深く考えるのはよそう、きっとかまいたちでも発生させたんだろう……
勢いよく馬車へと近づいてきたパラス族は突然草原が消滅して驚いたのか元々の作戦なのか、俺たちを囲うように配置してこちらの様子を伺っている。
やはり昆虫が二足歩行をしているようなその姿は多脚族を思い出させてイラつく。
今回の敵はこん棒のような物を装備している。
一方こちらはカフェルは鋼で鍛えた片手持ちの剣、マイアは小型の同じく鋼製のショートソードを二刀流、シーナは巨大な斧だ。
いろいろな武器を練習中だが、比較的得意武器がわかってきた。
今の状況では俺は中距離か遠距離で援護したほうが良さそうなのでクロスボウを作ってみた。
矢に関してはカートリッジ式で交換が出来る自動装てんという少し未来の力も借りている。
いざとなったら白黒両名のお力を借りればいいが、普通の戦闘はこちらの技術レベルから逸脱しない装備を使うように訓練した。
「数は7、敵が多い。お互いに背後を守れよ。馬車は俺が守る」
御者もそれなりに戦えるのだが、戦闘には参加させない。
万が一でもケガさせたら、工作員を育成するのにどれだけの苦労が!! って説教が待っているのは間違いない。
訓練通り、3人は隙のない陣形でパレス族を睨みつけている。
このままではらちが明かないので俺が口火を切ることにする。
馬車を完全に包囲しようと動き出した端の兵士に矢を打ち込んでいく。
弓をひくことなく放たれた矢は、敵の虚をついて見事に額を打ち抜き、一撃で仕留めた。
数的優位はまだあるために、その攻撃が呼び水となりパレス族が襲い掛かってくる。
「軽い!」
こん棒の一撃ごと戦斧で敵を真っ二つ。そのまま体重を乗せ回転するように隣にいるパレス族も真っ二つ。シーナの攻撃力は本当に高い。
カフェルは振り下ろされた攻撃を完全に見切って躱し、腹を切り割いて次の敵と向き合っている。
マイアは片方の剣でいなすように敵の攻撃を捌いて、首を一刀のもとに跳ね飛ばしている。
俺ももう一体を行動不能にして止めを刺した。
「終わりだ!」
カフェルが鋭い突きで喉を貫いて、戦闘は瞬き程の時間で終わる。
「ふぅ……初めての戦闘で緊張しました……」
「いやいや、皆見事だったよ」
「シーナ、やっぱり強いね……」
「俺も頑張らないと……」
全員完璧な勝利だったが、やっぱりシーナの強力な攻撃にほかの二人は気が気でないようだ。
「あいつらの甲羅もちゃんと貫けて良かったよ」
「そりゃこの鎧だって貫いちゃうんだから余裕でしょ……」
防具は特殊樹脂を使っている。鋼よりも固く、軽い、耐火性にも優れているので使わない手はない。
俺らだけの特別な逸品になっている。
武器はともかく防具は命を守るものだから、目立たないようにはしているけどかなりのオーバーテクノロジーを使用している。
「帝国に来て初めてだな」
「それだけ辺境に来たということですよ」
「気を引きしめていきましょう」
どの国も辺境にまで武力を割く余裕はない、辺境になれば当然危険度も上がる。
目的地である山岳地帯はより注意が必要だろう。
「とりあえず、気をつけて進もう。
暗くなったら野営もしないといけないからな」
結局辺境の村に到着するまでの間に敵に襲われたのはこの一度で済んだ。
村についたらまずは仕事からだ。
街から運んできた商品を各商店へと卸し、この地でとれる商品などを売ってもらう。
このあたりの仕事はカフェルが得意としているので、俺は肉体労働で貢献することにする。
結局これらの仕事を終えるころには村で一週間ほどの時間が経過していた。
クロスボウって連射できないのか……
未来技術で何とかしたんです。科学の力って凄いですね。




