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第22話 村と百獣の丘

 車にはキャンピングカーのように後部車体が取り付けられている。

 内部には多くの人を運送できるスペースと簡単な家事も出来るスペースと、引き出すと10名ほどが寝られる道具が準備されている。


「なんか、軍隊化してきて、昔を思い出して複雑だわ……」


「アニキ、全員そろったよ」


「すまないな皆、いざとなったら自分の身だけを守ってくれ。

 絶対に助けるから」


「ハヤテさんにはいつもお世話になりっぱなしですから、任せてください!」


「カフェルもマイアさんもいますから、心配なんてしてませんよ!」


「皆気を抜きすぎないようにね、ハヤテが言った通りいざとなった自分の身は自分で守りなさい!」


「はい、姐御!!」


「その呼び方……」


「乗車!!」


 マイアの顔が引きつっていたが、掛け声とともに村人たちはよく訓練された整った動きで、続々と乗車していく。

 村人の中でもカフェルたちとの戦闘訓練でもしっかりとついてくる実力者たちだ。

 ハヤテが教える訓練は軍隊式になるために、組織として最大限の力が発揮できるようにというのが基本になっている。そもそも少数で多数、もしくは強敵と当たらないように戦略を練るのが大事。というのがハヤテの教えだった。

 ハヤテ自身は戦場に単身投下され戦況を変えるなんて無茶な任務を幾度となく超えてきているので、あの地獄のような日々と何度上司を殺してやろうかと恨んだ日々を思い返して、そんな苦難を皆に強いる気はなかった。


 森を切り開いた街道を車が走っていく。

 街道の両脇にはしっかりとした木柵が組まれており、森からの外敵の襲来に対応できるようになっている。

 街道沿いにはいくつもの街灯が並んでおり、定期的な燃料の補充は必要だが、夜間でも道を明るく照らしてくれている。野生の生物にとって明かりというものはそれ自体が脅威なので、この街灯も外敵を遠ざけるのに役立っていた。


 まだ道は荒く、時たまガタガタと何かに乗り上げるように進んでいくが、車内は驚くほど快適だ。

 いずれは街道の道もしっかりと踏み固め、セメントで舗装を考えている。

 石灰は百獣の丘で確認されているので、百獣の丘を治めることが出来れば、その点も前に進んでいくとハヤテは考えていた。

 村と町、百獣の丘と森を繋ぐ街道を作って様々な原材料を調達し、工場で加工する。

 ハヤテの計画は少しづつ前に進んでいる。

 

「アニキの馬車も凄いと思ったけど、この車はさらにその上を行きますね……」


「後ろに乗ってもまさかこんな荒れ地を進んでたなんてわからないのよねー……」


「ハヤテ様にはこの仕組みもきちんと商品化していただかないと。当然うちの方で手はずは整えておきますからね」


「シーラーさん最近グイグイ来るよね……」


「お父様から投資に見合った利益はしっかり得るようにと言明されておりますから、これからもよろしくお願いしますね」


 ハヤテにとって、その美しい笑顔が少し怖かった。


「あっという間だな……ここも拠点らしくなっているな」


「アニキたちがいない間に皆頑張ってくれたみたいです」


「宿泊施設に食堂まで、ほんとに頑張ってくれたんだな」


「ハヤテさんの話が正しければ、ここは鉱物生産の大事な場所になるから、俺らも頑張りました」


 後方の車から村人たちが降りてくる。

 すぐに物資の搬入が始まり、現地で待機していた他の村人とも再会を喜んでいる。


「ところで狼やその他敵対勢力はちょっかいを出してこなかったか?」


「いや、かがり火のおかげか、この獣除けのおかげか今のとこ敵襲は一度もない。

 匂いはきついがこれはなかなか優秀らしい」


 獣除け、ハヤテが作った物で、簡単に言えば胆汁と薬草を火であぶった物。

 強烈な臭気が獣を避けさせる。虫も嫌いなので虫よけにもなる。


「この匂いもだんだん癖になってきたよ」


 はっはっはと村人たちにも笑顔が見える。

 百獣の丘の手前に作られた拠点は生活するのに十分な設備が整っていた。

 今回はそこに井戸を作成する。すでに工場によって下準備は終えてある。


「白塊、楔を打ち込んでくれるか?」


『わかりましたマスター』


「悪い皆、少し離れてくれるか?」


「ええ」


 皆もハヤテが何をするか興味津々で囲んでいる。


「いくぞ!」


『はいマスター』


 ハヤテの腕につけられた腕輪は瞬時に形態を変化させ巨大なパイルバンカーになる。

 ハヤテは迷うことなくその杭を大地に打ち付ける。

 次の瞬間ゴウン!! という音とともに杭が大地に撃ちこまれる。


「どうだ?」


『水脈まで到達しております。周囲の土を軟化作業中……終了しました。

 後は工具を設置してください』


 しゅるんともとの腕輪の形態に戻る白塊。周囲で見ていた村人たちも驚くしかなかった。

 ハヤテはすぐに工場で作った工具を設置する。稼働した工具は地面を掘り進めながら土を排出し、周囲を固めていく。これで自動的に井戸が作られる。

 最後に手動式のポンプを設置すれば、この拠点に水場が完成してしまう。


「……とんでもないことをしますねハヤテ様は……」


 シーラーも今見たことを受け入れることがなかなかできなかった。

 普通に井戸を作れば何か月という時間を何十人という人々で作るものだ。

 それをハヤテは一人で数時間で完成させてしまった。

 さらにポンプは桶によるくみ上げを必要としない。それだけでも画期的な道具だった。


「さすがに白塊がなければ採掘作業はもっとかかるぞ?」


「そういう問題じゃ……いや、もうハヤテ様にこの世界の常識を説いても仕方ありませんね……」


 そういいながらもシーラーはしっかりとポンプについての話をしっかりとハヤテから聞き出して量産化に向けて動くのであった。



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