第21話 ちゃんと読まないと駄目だぞ(^_-)-☆
王都へ帰ってから王であるライオからの質問はとどまることを知らなかった。
工場は鉱物などを放り込めば加工製品を生み出すことが出来るために、明らかなオーバーテクノロジーであったが、使用するためにはハヤテの命令が必要なために秘匿されることになった。このことを公にすれば当然ハヤテやその周囲に危険が及ぶという王の配慮だ。
「それにしても、久しぶりにぼっこぼこにされた! いや、心地よい!!」
すっかりハヤテと意気投合したライオはハヤテと模擬戦まで行った。
白塊は使うわけにいかないので木刀で相手をしたが、ライオは強かった。しかし、ハヤテはその先にいた。
「お父様、それでは久しぶりにわたくしにも稽古をつけてくださいますか?」
「シーラー……、そういえば以前にぼこぼこにされた相手もいるんだったな……」
それでも娘との立ち合いは嫌いではないらしく、一生懸命善戦していた。
強さで言えばカフェルと同等か少し強い、ライオはこの国でも上位の強さを持っていた。
カフェルもマイアも兵士たちに交じって訓練を受けることを許され、自分よりも上の存在を多く知ることが出来て非常に有意義な王都での滞在となった。
車が手に入ったことで、ハヤテ達の移動速度は飛躍的に向上した。
飛行形態での移動はマナによる計器の異常が修正できずに、危険ということで封印している。
「そういえばハヤテ様、こちら父から」
一本の書状がハヤテに手渡される。中を確かめるとあの村をハヤテの管理として自由に収めてよいという書状だった。しかも周囲の未開発の場所であれば切り取り自由、つまり開拓すればハヤテの領土として良いという破格の申し出であった。
税率は他の都市と同等、何か困ったことがあれば何でも言え。と但し書きもあった。
「食えない人だな君の父上は」
「人を見る目はあるのですよ」
「マイア、村長はこれを受け入れるのかい?」
「なにを言ってるんですが、もう村の代表はハヤテみたいなもんだったじゃないですか、いまさら何を言ってるんだか」
「やれやれだ」
「しかし、これでお墨付きを得られましたし、自重……してたんですよね?
これからは思いっきりやりたい放題できますね」
「どうか我が街とも末永いお取引を……」
経済力の強化、人の増加は星に頼まれたことを実現するためには必要なこと。
ハヤテは諦めて村の発展に尽力することを心に決めたのだった。
「さて、皆に集まってもらったのはほかでもない。
この度王様から好き放題やっていいという認可をもらったのだが、俺の最終的な目標を皆に話しておく。
ある理由から、この国、いや、星からパレス族を絶滅させる。
そのために、奴らの本拠地である場所をいつの日か滅ぼす」
おおおおおおお、村人から驚きの声が上がる。
パレス族を絶滅、それは夢物語のように聞こえるが、ハヤテなら出来るかもしれないという想いがあった。それともう一つ。
「本拠地をハヤテ様は知っているのですか?」
シーラーが思わず尋ねる。もちろん村人も同じ疑問を持っている。
「ああ、知っている。
ジパルス共和国の遥か南東、終わりの滝の先、空に伸びる塔の最下層にいる。
と、聞いた」
「そ、その情報はどこから?」
シーラーの声にわずかな動揺が混じる。珍しいことだ。
「情報の出どころは言えないが、これは正確な情報だ」
「ジパルスの先の情報を……いや、ハヤテ様ですもんね、考えるだけ無駄というものでしょう……」
ハヤテは本当はタブレットの精密なマップで説明したかったのだが、どうやらハヤテ以外にはあのタブレットの画面は検閲が入ってある範囲以外は見えないということがわかっている。
それからパルス族の生活場所が地下にあることなど、シーラーたちの知らない情報を伝える。
パルス族と戦う際の注意、マナを食らう性質があることなどハヤテの語る話をシーラーは真剣な顔で聞き、話が終わるとすぐにこの情報を王国だけでなく全ての国に通達していいかとハヤテに提案した。ハヤテはもちろん快諾した。長年苦しめられてきたパルス族への反撃の足掛かりになる情報は、素早く王国全土、さらには周辺諸国へと伝播していく。
星はみくすぃに凝りもせず長文日記を毎日投稿していた。
ハヤテははじめのうちは見る気も起きずに放置していたが、何の気まぐれか適当に目を通しているととんでもないことに気がついてしまった。
くだらない投稿のなかに、稀に大変重要な話が混じっているのだ。
とても重要なことなのにあの日記に記したせいで気がつくのが遅くなってしまったが、マップは龍脈を表示できるようになっていて、特に大きな龍脈が交わる場所のいくつかにパレス族の巣があることが分かった。
そして、その巣の数をなるべく減らしておかないと、本拠地である場所を襲撃した際に問題となる可能性があるらしく、潰せる場所は潰しておいたほうがいいという星の助言があった。
無駄な情報が9割の中に非常に大事な情報があったりするので、ハヤテは嫌でも日記に目を通す羽目になっている。
「グルメ情報見て、おっここ旨そうって慣れてきている自分が悔しい……」
「アニキ、とうとう百獣の丘に行くんだろ?」
「ああ、白塊も期せずして手に入ったし。
皆の装備もさらに改良したし、いざとなれば守るだけならほぼ問題ないだろ」
工場を手に入れ、ハヤテの探索を手伝ってくれている村人たちの防具は金属ファイバー繊維を練りこまれた次世代プラスチック製品になっており、ある程度の銃弾も防げるほどになっている。
「さて、明日は朝から狼退治と行こうか!」
2018.9.22
タブレットの現地人への開示に前の話との矛盾があったので修正。




