第19話 王
城の内部は、ハヤテが思ったよりも豪華絢爛な作りではなかった。
作りは立派で重厚だが華美ではない。実用性を考えられた作りとでも言うのか、戦いの場となった場合に非常に攻めずらそうな創りをしている。ハヤテは城内を進みながらそんなことを考えていた。
一方後ろを歩くカフェルとマイアは不安そうにハヤテの裾を掴みながらキョロキョロと周囲を伺いながら恐る恐ると歩いている。あまりのビビり具合にシーラーも思わず声をかける。
「お父様は別に取って食べたりしませんし、こちらからお呼びしてますからそんなに怖がらないでください
」
「そ、そうは言っても……城なんて、あまりに場違いで……」
「あら、マイア様のお姿は城で行われるパーティでも輝きますわ。
さっきから衛兵たちがちらちらとマイア様に目を奪われておりますのよ」
「そ、そんな……」
「それにメイドたちはハヤテ様とカフェル様のお姿にため息を漏らしておりますわ、どうか背筋を伸ばして自信を持ってくださいませ」
「そうだぞ二人とも、こういう時は開き直って堂々としていればいい。
胸を張れば不思議と心も落ち着くもんだ」
二人は虚勢でも構わないから背筋を伸ばして胸を張る。
マイアの素晴らしいドレス姿がさらに凛とした美しさを放つ、小さな声だが衛兵たちもおおっと感嘆の声を上げていた。
「そのほうが素敵ですわ。さぁ、謁見の間です」
先行していたシーラーが扉の前で横に控える。
ハヤテ、カフェル、マイアが扉の前に立つと格式ばった動きで兵士が扉を開く。
開かれた先は謁見の間、色鮮やかな真っ赤な絨毯がまっすぐに王の座る場まで伸びていく。
両側には多くの兵と人が少しのずれもなく並んでいく。
カフェルもマイアも虚勢を張った背筋が折れそうになったが、スタスタと何事も無かったかのように歩き始めたハヤテにつられるように部屋に入っていく。
謁見の間は流石に豪華な作りをしていた。
見上げるほどの高い天井にいくつもの燭台、装飾品の一つ一つも精彩で緻密。
足元の絨毯一つとっても庶民が手に入る物ではないことははっきりと理解できる。
黄金の髪をなびかせ、威風堂々とした姿をした王の前に跪くハヤテ、カフェルとマイアも急いでそれに倣う。
「ふむ、お主がハヤテか……娘から報告は届いている。
なかなか独創的な知識を持っているようだな。
改めて名乗ろう、余がこの国の国王をしておる、ライオネル・メテオリラじゃ」
「ハヤテ・サカキバラと申します。
このような素晴らしい場所へ招待いただきありがとうございます」
「そんなにかしこまらなくともよい、こちらが呼び立てたお客人なのだからな」
ハヤテは顔を上げて王の姿を見る。
美しい毛並みに真っ青な瞳。こちらの心を見透かしているかのような深い光を感じる。
王自身が強靭な強者であることを疑わせない肉体。
その姿はまさに、王。
「単刀直入にお伺いいたしますが、なぜ私のような田舎者が王様に呼ばれるのか皆目見当もつきませんので……」
「ふむ、お主ら……落ちた星について調べておるだろう?」
「……はい……」
「あれはなんなんだ? まるで人の手で作られたような形をしているのに、何をやっても傷一つつかん。
あのようなものは見たことが無い」
「……王はすでに手に入れているということですか?」
「うむ、余の元で管理している物がある」
ハヤテは舌打ちをした。
もし王が救助艇に執着しているとなると面倒くさいことになる。
それと、もっとよく地図を確認しておかなかったことが悔やまれた。
「百獣の丘を調査なさったのですか?」
「いや、あそこは無理だ。調査するにも被害が出る可能性がある。
やはり、知っておるのだなアレが何かを」
ハヤテは別段隠す必要もないし、自分以外がアレらを利用できないことを知っている。
王の問いかけにもそのまま答える。
「私がさる者に襲われた際に荷物を載せて逃がした物です」
「ほう、あの未知の物は汝の物か……ふむ……」
王としてはこうもあっさりと自分の物だとハヤテが言ってくるとは思わなかった。
そのために少し思案を巡らせているとシーラーが立ち上がり前に出る。
「お父様少々発言してもよろしいでしょうか?」
「うむ、許す」
「ハヤテ様はつまらない嘘をおっしゃる方ではありませんし、ここでその発言の真偽を議論するよりも、実際にその場で確かめればよろしいかと思います」
「なるほど、百聞は一見に如かずという奴だな」
「ハヤテ様の物であれば、我らが何をしてもわからなかったあの物が何かもおのずとわかります。
ハヤテ様もそれでよろしいですか?」
「そうですね。私としては一刻も早くアレらを回収したいので」
「なるほど。うむ、ならば善は急げだ。バルザー! すぐに馬を用意せよ、今から向かうぞ」
「御心のままに」
王に最も近い位置に立っていた騎士が周囲の騎士に指示を飛ばす。
ハヤテ達もすぐに下がって準備をするように伝えられる。
「なるほど、行動力のある王様なんだな」
「す、凄いオーラでした……」
「ハヤテのマナを見てなかったら腰が抜けてたかもしれない……」
「確かにな……」
ハヤテ達はすぐに馬車に乗せられ王都を出発する。
「ここか……」
タブレットでマップを確認すると王都から王都に流れる川の元パーナ湖と呼ばれる湖の脇に救助艇を示すマークが点滅していた。
「な、なんですかアニキそれ?」
「すごい、周囲の地図?」
「ああ、星がくれた」
嘘は言っていない。
ガタガタと揺れる馬車の中でみくすぃを確認する。
嫌な予感しかしないが、見ないわけにもいかない。
ハヤテの嫌な予感は的中する。
メッセージには大量のメッセージが並んでいる。
どう? 使ってる?
ねぇ使ってる?
見てますかー?
おおーい無視かー?
さっき流れ星見た。すごいよねー。
明日は熱くなるよ。
見てる?
おーい。
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本当にどうでもいい内容だ。
『王に会って今から救助艇を見に行く』
仕方がないのでハヤテも返信を入れる。
打ち込んで数秒もしないのにメッセージがずらりと並ぶ。
どういうこと?
王?
ムキムキだったでしょ?
一緒に行ってるの?
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ハヤテは静かにタブレットの電源を落とした。




