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第18話 入城

「……タブレットだな……」


 帰り道、この星に与えられたタブレットをいじりながら歩くハヤテ。

 電源を入れてみる。


「マップと、みくすぃ? これって俺が子供のころ流行ったやつか?」


 立ち上げてみるとマップは周囲の精密なマップ、それに自分の現在地、さらに拡大させると落下した救助艇の位置が表示されていた。


「ありがたい! これならすぐにでも……こっちは……」


 みくすぃ。一時期はやったSNSでハヤテの親世代に爆発的に流行したが、未成年の出会い系ツールなどで問題になって廃れてしまった。


「……僕のおすすめスポット100選……」


 この星の絶景ポイントがコメントを添えられて投稿されていた。

 さらには各町のグルメスポットや看板娘情報など、なんというか、40後半ぐらいのおじさんが自分の旅したところや飛行場での自撮り写真を上げているような、なんとも哀愁のあるページを見せられて、ハヤテは何とも言えない気持ちになった。


「星が毎日日記を書いているのか……」


 嫌な予感がするが、今日の日付にかかれた『出会い(^_-)-☆』というタイトルのページを開く。


 今日は素晴らしい出会いがありました☆ミ

 この世界を見つめてうん万年、あ、僕が何歳かとかはひ・み・つ( *´艸`)

 ようやくお話しできる人が来てくれたんです(*^^)vパチパチパチ

 その人に僕の体に勝手にお邪魔してる悪い子( ゜Д゜)を退治してもらうように頼みました(*´Д`)

 これで僕の体もスッキリ(*´ω`*)

 

 ブツッ


 ハヤテは思わずタブレットの電源を落としていた。


「あ、危ない。へし折るところだった……」


 マップはこれ以上ないほどに有用な情報、これを捨てるわけにはいかない。

 生理的に受け付けられないほうはしばらく開かないことを心に誓うハヤテであった。


「あ、アニキお帰りなさい」


「遅かったじゃない、何してたの?」


「あ、えーっと、星と話していた? っていう……」


「なによハヤテ、詩的なこと言うのね……だったら星と語りながら一杯どう?

 いい風が吹いてるわよ?」


「俺も飲もうかな、少し寝たら目が覚めてきた」


「そうだな、そうするか」


 ベランダでルームサービスのワインを傾ける。3人でいろいろな話をしながら、楽しく夜が更けていった。

 いろいろなことがありすぎたのでハヤテはなかなか眠りにつけなかったが、恐る恐る開いたタブレットのみくすぃアプリに87というコメント数がついていて恐怖に震えながら眠りについた。


 それからしばらくは王都謁見するための服を仕立てたり、シーラーに王都の上流階級しか行けないような店を案内されたり、田舎の小さな村で暮らしているカフェルやマイアは一生縁がないと思っていた華やかな世界を垣間見て夢のような時間を過ごしていった。


「まぁ、とてもお似合いですわハヤテ様! カフェル様もマイア様もよくお似合いで、見立てた私も嬉しいです!」


 上品な灰色、人を選ぶ詰襟の軍服姿のハヤテ、カフェルはこの世界ではスタンダードな礼服スタイル、マイアは鮮やかな赤いドレス。店員がハヤテの革新的なデザインの服を食い入るように見ている。

 お値段を勉強してもらう代わりにこのデザインは自由に使ってもらうという話がすでについていた。


「それでは、お父様がお待ちです。向かいましょうか」


「ええ」


「……その前にトイレ……」


「カフェル何度目よ……私も……」


「ハヤテ様は落ち着かれてるのですね?」


「俺は正直この世界のことをよくわからないからな、王様と会うってのはそんなに凄いことなのか?」


「えーっとそうですね、この国に生きている者でもほとんどの者は謁見はしませんからねぇ……

 それなりには凄いことだと思いますよ」


「まぁ昔勲章とかもらったこともあったから、他の二人に比べれば場慣れしているんだよ」


「凄い! やっぱりハヤテ様は凄い方だったんですね!」


 実際には国を挙げての叙勲式に遅刻してしこたましかられた何ともみっともない話なのはハヤテの仲だけの秘密だ。

 カフェルとマイアが戻ってきて、王城へと馬車が動き出す。

 中央の通りを進み、王城へと渡る橋を進んでいく。

 王都内を流れる川を渡れば城が目の前に現れる。


「近づくと……かなり大きいんだな……」


「そうですね、いざとなったら王都の住民を城内に避難させられるように想像よりも居住空間が大きくとられているんですよ」


「それで橋を落とせばかなり堅固な守りが敷けるな……」


「流石ハヤテ様、橋の構造も一目でわかりますか」


 川に駆けられている石の橋は、アーチ状になっている橋の基幹部分の石を抜くとバラバラと崩れるように設計されている。いざとなれば橋を落として川に守られた守城と化すように作られていた。


 川を超えると道の両側にずらりと兵士が並んでいる。

 完璧にそろった動きで高々と槍をかざしてその間を馬車が優雅に走っていく。


「これは……凄い歓迎を受けているね……」


「凄い……」


「それだけお父様はハヤテ様を重要とお考えになっているんですよ」


「ちょっと、気合を入れないとな……」


 ハヤテはごくりと喉を鳴らす。

 正直その他大勢の謁見の一人程度に考えていた。

 どうやら、この国の王はハヤテその人を迎える準備を整えていた。


 美しい内庭を抜けて、エントランスで馬車が止まる。

 

「いらっしゃいませ」


 美しい所作で執事風の男性が扉を開けてくれる。


「後は野となれ山となれ、だ」


 大きな門が開かれ、ハヤテ達はとうとう城に足を踏み入れる。

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