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第10話 情報

「あれ? アニキ、一人? ねーさんは?」


「……姐弟きょうだいでグルか……

 尻尾弱いくせに尻尾使って俺を抑えようとしてダウンしたからベッドに放り込んどいた」


「ああ……だから力業は無理だって言ったのに……」


「カフェル、次からは普通に止めてくれ」


「はーい、しょうがない様子見に行ってやるか……」


 マイアは尻尾が弱い。普段は腰に巻き付けるようにしまっており、あまり外に出していない。

 感情が出てしまうのと、触られるのが苦手だからだ。

 簡単に言えば握られれば力が抜けてしまうし、撫でられても腰が抜けてしまう。

 一応巻き付けたり動かすことは出来るが、逆にいじられればへなへな~と力が抜けてしまうので役立たずだ。

 さわさわと触れる程度なら我慢も出来るが、四肢の力比べでハヤテに勝てるはずもなかったのであった。


「……今回は、危なかった……」


 ハヤテはまだマイアには気がつかれていないが、わき腹と耳が弱い。

 特にマイアのフワフワと触れるように尻尾でわき腹と耳を刺激されれば、マイアでも容易に優位に立ててしまう。

 今回は危うく耳を刺激され声が出そうになってしまったが、必死にケツをつねって我慢したハヤテであった。

 この弱点が知られるのも、時間の問題かもしれない。


「……そうなったら、そうなったでいいかぁ……」


 ハヤテは最近の充実した生活に、ある意味満たされていた。

 兵士時代の血塗られた期間はもってのほかだが、ようやく自由を手に入れてすぐに墜落人生。

 しかして、その墜落した先は自然あふれ、気持ちのいい人間(?)達が住む場所で、少なくとも自分の持つ技術や力、知識がみんなの生活の足しになってくれている。

 穏やかでのんびりした生活の中に少しのラブコメが混じっていて、ハヤテはとても楽しかった。


「アニキ、今日もお願いします!」


「ああ、もうそんな時間か、よし。行こう!」


 パラス族に対する手段としてハヤテは皆に請われて兵士時代の技術を教えている。

 個としての戦闘の仕方に、集団としての戦い方も教えている。

 村の守りも以前とは比べ物にならないほどしっかりとしたものになったおかげで、農地などを少しづつ拡張したりも出来ている。水車を利用して動力を得る計画も進めている。

 こういうゆっくりした発展を外で眺めながら食事をするのが最近のハヤテのお気に入りだ。


「香辛料とかそういったものも充実させたいなぁ……」


「町へ出て大金を出さないと手に入らないわよ?」


「そういや、通貨制度はあるんだな」


「そうね、ここでは必要ないけど、町での取引とかには使われるの。

 私も少しは持ってるわよ、まってて」


 マイアは部屋に戻ると小さな布袋を持って戻ってくる。

 中身をテーブルに広げると、何種類かの硬貨があることがわかる。


「これが1ゼニーでこれが10、100、1000。もっと大きいものもあるけど、10,000、1,000,000、100,000,000硬貨まであるそうよ。王様とかしか見たことないでしょうけどねぇ」


「素材は……銅に鉄に、銀か、その上は金とかかな?」


「金が10,000ゼニーで1,000,000ゼニーはミスリル、最後はアダマンタイトを使ってるって噂ですね」


 カフェルが訓練から戻ってきて、食卓に加わってくる。

 

「アニキ、町から戻った者がもしかしたらアニキの探している空から降ってきた物の話を聞いたかもしれないそうで、午後に来るように言ってあります」


「おお! ありがとうカフェル!」


「いえいえ、この村はアニキのおかげで見違えるように発展して、おかげで街との取引の桁も増えましたから。力になれれる事なら何でも言ってください」


「俺が楽しくてやってるだけだけど、気持ちはありがたくいただいておく」


 カフェルの言う通り、午後に一人の青年がハヤテの元を訪れた。

 

「アニキ、俺の友人で街への行商を担当してるメルクです」


「ハヤテさんお疲れ様です」


 銀髪で細い釣り目の薄い顔、体つきはシュッとしているが引き締まったいい体つきをしている。

 力で押すタイプというよりは柔軟性と持続力で勝負するタイプと言ったところか、実際に町までの行商は長期間の旅になるために、タフな身体が必要になる。


「ハヤテさんの言っていた空から落ちた星の話なんですが、いくつか耳に入れてきました。

 えーっとこれがこのあたりの大まかな地図なんですが……」


 そういいながらメルクはテーブルの上に茶ばんだ地図を広げる。

 焼いた金属で焦がして描かれた地図はお世辞にも精密とは言えないが、それでもこの世界では貴重な物だ。村の位置と町の位置を指し示し、位置関係を確認する。


「町から見て西、村からすると南西方向にその星を見たって話が集中してました」


「誰か捜しに行ったりはしていないのか?」


「アニキ、そのあたりは百獣の丘と呼ばれていて、野生の狼の根城になっているんです。

 特にその群れのボスは頭がよく、近隣の人間を震え上げさせているんです。

 距離があるのでうちの村はめったに被害には会いませんが、周囲の森を含めてこの辺りに入ろうとする奴はいませんね」


 ハヤテが落ちたと思われる場所は村の北東、その周囲は森が描かれており、高台の麓に村、高台を下がって草原地帯を抜けると町、そして百獣の丘は山岳地帯で周囲を森で覆われていた。


「しかし、あそこに落ちたとなると調べる奴もいない代わりにアニキも大変ですよ……」


「その狼たちはかなりヤバいのか?」


「そもそも生きて帰ったものがいませんから……」


「……狼か……」


 ハヤテも思わず考え込んでしまった。

 情報を得られたことは大変ありがたかったが、どうやら高いハードルが待ち構えていそうなのは間違いなかった。

  それからハヤテは引き続きの情報収集をお願いしつつ、現状手に入った情報を調査するための準備を始めるのであった。


 

 



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