2.友達
2.友達
ピピピッ… 目覚まし時計の音で目を覚ます
「ふわあぁぁ…。あ??」
午前7時 情けないあくびの次に有り得ない匂いに気付く
自宅で「1人」の環境では、まず無い匂いが1階のほうから…
(昨日はちゃんとカギ閉めたよな。もしかして…。)
キッチンの様子を確認する前に玄関のドアのカギを確認する
「開いてる…。今日は正面か。」
俺と水守は両親が昔からの仲ということで「合鍵」を作って持たされている
そして、今キッチンで朝食を作っているはずの彼女は大体2階のベランダを経由して侵入してくる
キッチンに行くと、彼女は俺の存在に気づいて、にこやかに笑った
「ゆーちゃん、おはよう!ごはん、もう少しだから待っててね!」
「うん。てか、今日は玄関から来たんだな。」
「気持ち的にね!」
(気持ち的ってなんだよ…)
ただ待ってるのも退屈なので、顔を洗いに行くことにした
「ゆーちゃん、おいしい?」
「おう。今日の玉子焼きは初日にピッタリの甘さだな。」
「本当?良かった〜。」
「ごちそうさま。よし、学校に行くか。」
「うん!」
そして、忘れ物をしてないか確認して家を出た
桜の花びらは散り始め、桜の木にはちらほらと葉桜が出てきていた
「お昼は?コンビニで買うの?」
「いや、せっかく学食があるんだから食堂に行ってみようと思う。」
「そっか!じゃあ、私も一緒に行くよ。」
「え?お弁当は?」
「実はお母さんに学食にするから今日はお弁当いらないって言っちゃったんだ。」
登校中に早くもお昼の予定を立てていたら、学校に到着していた
クラスはB組、1年生だし遅刻することはないだろう
「そういや、せいねぇは?一緒じゃなかったけど?」
「お姉ちゃんは先に行ったよ。なんか部活の準備とか言ってたよ。」
「ふ〜ん。」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り響いて、学校生活の始まりを告げる
同時に担任が教室に入ってくる
「おはよう!席につけー。連絡事項は皆が知っていることしか無い、以上!」
午前はクラスの役員を決めて、学校の設備の案内があった
そして、今から楽しみの学食だ
水守に急かされて教室を出たところに隣のクラス、C組から一人の男子が出てきてちょっと腕が当たってしまった
「おっと、ごめん!」
「いえ、こちらこそ急にすみません。」
その男子は礼儀正しくて、見た目は金持ちだ
「僕は香葉彗って言います。よろしくお願いします。」
彗君は落ち着いた調子で自己紹介をしてくれた
「えっと、俺は天野優真。こっちはお隣兼幼馴染みの飛草水守。よろしく。」
「よろしくねっ!彗君。」
「はい!それで、二人はこれからお昼ですか?」
「そうだよ!学食を体験してみようかなって。」
水守がニコニコしながら言う
「お邪魔でなければ、一緒に行っていいですか?僕も今日は学食を体験しようと思ってまして。」
「うん!大歓迎だよ!」
俺たちは食堂へと足を踏み入れる
「…いっぱいだね〜。しかも二階もあるなんて!」
予想はしていたけど食堂の中は生徒でいっぱいだ
水守の二階もあるという言葉に反応して上を向くとたしかに二階があった
「二階は人が少なそうですね。」
「よし!二階で食べるとして、とりあえず昼食を確保しよう。先に二階に着いた人から席取りをしよう。」
俺の提案に二人は頷く
「じゃあ、またあとでね!」
二人と別れた後、俺は食堂内に設置されているパン屋に足を動かした
(パンはいいよなぁ〜。)
そんなことを思いながら100円の5個入りサンドイッチと100円のいちごミルクを1本買うが、
(たしか、水守はいちごミルクが好きだったな。)
そう思い出し、いちごミルクをもう1本買った
二階に上がるとテラスが見えて、そこでお昼にしている人も居たが二人の姿はまだ見えなかった
(俺が一番乗りか。席取りしないとな。)
周りをぐるっと見渡すと俺に手を振る人が居ることに気づいた
よく見るとせいねぇと男子生徒が5人席を陣取っていた
「ゆーま、学食?ミモは?」
「うん。学食だよ。水守も学食だけどまだ下に居ると思う。」
その時、階段の方から
「ゆーちゃーん!」
と言いながら彗君と一緒に近寄ってくる水守が居た
「ちょうど来たみたいね。」
「そうだね。」
「ゆーちゃん、お待たせ!ってお姉ちゃん?しかも零太さんも!」
水守の表情が笑顔から驚きに変わり更に驚いてと表情豊かで見てて面白い
「零太、さん?」
「ゆーまは初めてよね。この人は冬坂零太。私と同級生で、私と同じ手芸部なの!」
「2年A組 手芸部の部長をやってる冬坂零太です。よろしくね!」
「は、はい。1年B組天野優真です。よろしくです。」
「あれ?ミモ、そっちの子は?」
「さっき友達になった彗君だよ!」
「1年C組 香葉彗です。よろしくお願いします。」
「私は飛草清那。2年C組手芸部所属の水守の姉よ。よろしくね!」
「はい、よろしくお願いします。ところで先輩、手芸部ってどんなことをする部活なんですか?」
「手芸部はキーホルダーとかのアクセサリーを作ったり、ぬいぐるみを作る部活だよ!文化祭では制作したものを販売するし、イベント等の物販会に出品したりするよ!」
その質問を待ってたのか、零太さんがキラキラした目で説明してくれた
それぞれの自己紹介も終わり、これからやっと昼食だ
「お!彗は定食で水守はオムライスにしたのか。」
「はい。どれにしようか迷った結果、今日は定食にしました。」
「私はオムライスが好きだからねー。ゆーちゃん、一口ほしい?」
「はぁ?いいよ、別に。間接的なアレになるじゃん!」
「私は気にしないよ〜?生まれた時から一緒だし、なんせ、ゆーちゃんだし!」
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…。」
水守の口に入ったスプーンでオムライスを一口もらった
「…うん、おいしい!」
「オムライスとミモの間接的なアレ…どっちがおいしいの??」
せいねぇがニヤニヤしながら聞いてきた
「な、何を言ってるんだよ!オムライスに決まってるじゃん!」
「な、なら、私の作る玉子焼きとこのオムライス、どっちがおいしい?」
水守が話を逸らすように質問してきた
「それは水守の玉子焼きだろ。」
「ほ、本当??うれしいなぁ。ありがとう、ゆーちゃん!」
水守は赤らめた顔で満面の笑顔を浮かべた
「お、そうだ。はい、これ。」
水守にいちごミルクを渡す
「え、私に?」
「好きだろ?いちごミルク。」
「うん!ありがとう、ゆーちゃん!」
「水守ちゃんと優真君、仲良いんだね。」
「両親の世代から仲良いのよ。」
そんな話をして昼休みを過ごした
2話がかなり長いので何個かに分けます