1.入学式
1.入学式
これは15歳の少年の高校生活のお話
「本校は勉強 、部活もありますが、何より行事が盛んで…」
入学式というのは、面倒臭いかワクワクのどちらしかないだろう
少なくとも俺は前者だ
(入学式…。校長先生の話が長い。眠くなるほどに長い。)
校長先生による教員紹介、学校説明…あと何分続くのやら…。
トントントン
もうすぐで寝てしまいそうな時、突然左肩をつつかれた
左を向いてみると女の子が…幼馴染みの飛草水守が口を膨らませて俺を見ていた
「ゆーちゃん、寝ちゃダメだよ?…怒られるよ?」
水守が小声で注意してくれた。たしかに怒られるのはマズイ
「あぁ、ごめん。ありがとう。」
俺は注意してくれたことにお礼を返して前を向き、ひとつあくびをした
「それでは、皆さん、学校生活を楽しんでください。」
「…以上を持ちまして、入学式を終了致します…。起立!礼!」
教員のキビキビとした声音で入学式は幕を閉じた。
この学校では、入学式の後に中庭にあるクラス表から自分の名前を探し出して教室に行かなければならないようだ
「ゆーちゃん、私と同じクラスだね。」
「え?ああ。本当だ、一緒だ。」
「うれしい?」
「なに言ってんだよ。まあ、知り合いが一人も居ないよりはマシだな。」
横を向くと水守が不満そうな顔をしていた
まあ、うれしくないこともない。実際、同じクラスというだけでかなり心強い
教室にてロングホームルームが行われた
明日から学校…と言っても授業は明後日から
明日は学校の設備の説明、部活登録とかのオリエンテーションがあるそうだ
水守と一緒に帰ろうとしている時、校門前に見知ったポニーテールの女子が立っていた
「ん?あ、おねえちゃん?」
水守がその女子の姿に気づいて声をかける
その女子は水守の声に振り向いて俺たちを認識したようだ
「あ!ゆーまにミモ!待ってたよ?」
飛草清那 高校2年生の水守の姉
昔からお隣さんの関係で仲がいいため、俺は「せいねぇ」と呼んでたりする
「せいねぇ、なんで待ってたの?」
「今日、入学式だったでしょ?だから、おめでとうを言いたくてさっ!」
「なるほど〜!」
「そう!だから…二人とも、入学おめでとう!」
せいねぇは深々と礼をしたあと、顔を上げてニッコリと微笑んだ
学校から遠ざかったあと、せいねぇが入学祝いにケーキを買ってくれた もちろん自分の分も
そして3人でワイワイ世間話をしながら家に帰った
自宅のリビングのソファに腰掛けて、静けさを味わう…
(…今日も1人か。)
両親は同業で半年もの出張 そのため俺は9月末まで自宅で1人だ
「おかげで料理は出来るようになったけどね。」
そんな独り言をひとつ吐いて一眠りした
午後10時頃、そろそろ寝ようと目覚まし時計をセットする
夢の中に潜ろうとしたとき、俺のスマホが鳴り響いた
『メールだよ!』と…
「誰だよ…。快眠の時間を邪魔するのはー…。」
スマホの画面を確認する 差出人は水守だった
水守『ゆーちゃん、起きてる?』
優真『ああ。ギリギリな。どうした?』
水守『明日、部活登録があるけど、ゆーちゃんは決めた?』
優真『いや?まだ決めてないけど。水守は?』
水守『ううん。決めてないよ。』
優真『そうか。まぁ、部活登録の時までには決めるわ。』
水守『うん!わかった、ごめんね〜。おやすみ!』
そう返信がきて、俺は返信せずに布団を被った
『メールだよ!』
…また鳴り響いた 飛び起きて確認する
「また水守かよ!」
メールを開く 文面には…
水守『おやすみの返信が無いよ!』
…呆れた
優真『目が点になる内容だな。』
水守『おやすみぐらい返しなさいよ!』
優真『はいはい。おやすみ。』
そのあとの返信は無かった。