第1話 無の少年
①この作品は著者による完全オリジナルストーリーです。
②この作品はトランプを使用したトレーディングカードゲーム(著者オリジナル)です。
俺には何もない。
得るものも、失うものも。
だからこの世界で俺が勝とうが負けようが意味がなく、そんな「無」である自分は真でも偽でもない虚ろな存在。
そう思っていた。
だけど、「無」であることにも意味があると知ったあの時から、
無いものから何かを生み出そうとする理想を描く俺が確かに、ゆっくりと、その姿を現そうとしていた。
三代「…きせ、秋瀬!寝てたらまた先生に怒られるよ?」
隣の席に座ってる俺の幼馴染、三代が居眠りこいていた俺にそんなことを言ってきた。
先生「おい、秋瀬〜、また授業中に居眠りかー?」
先生「じゃあ、この問題解いてみろー。正解したら俺は何も言わん。」
うわっ、めんどくさっ。
しかも毎度毎度かったるい問題だしやがって。
…まぁ、また寝れるならこれくらい解いてやるか。
ーーパパパパパパッ。
俺は黒板に書かれてる数学の問題を素早く解いた。
はやく終わらせて寝たいからな。
秋瀬「…これでいいですかね?」
先生「…正解だ。約束通り今日も好きなだけ寝ているといい…。」
おおっー!!、と教室中から歓声が広がった。困るんだよな、またこれが。
はやく寝たいからすたすた自分の席に歩いて座ると三代が、
三代「さすがアッキー♪校内3位の頭は伊達じゃないね!」
秋瀬「…アレくらい誰にだって解けるだろ。」
三代「またまた〜。解けない私たちは馬鹿だっていいたいんですか提督〜?」
秋瀬「まぁそういうことにしておくよ。てか誰が提督だ。」
三代「むー、何そのテキトーな返し〜。」
秋瀬「まぁどうでもよかったから。それより俺は寝る…。」
三代「はいはい、勝手に寝ててくださーい。秋瀬様様ー。」
そんな三代のバカジョークを軽くスルーし、光の世界から再びログアウト。
俺は高校1年の秋瀬南伊。
特にこれといった特徴もなく、ルックスも運動神経も並の人間だ。
先ほどあのように数学の問題を解いてみせたが勉強だって普通だ。
いや、人によっては頭がいいというものかもしれない。
まぁ無理もない。俺の高校受験は偏差値68の第一志望の高校を見事に落ち、滑り止めとして受けた偏差値50の今の高校にいるのだから。
さすがに18も差があればオツムの一つ二つ違うと言われてもしょうがないな。
俺が普通だと思ってる基準は他の人にとっては案外地から天を見上げるレベルなのかもしれない。
これは勉強に限った話ではない。
なんだってそうだ。自分が普通だ、当たり前だろ、と思うことは他人からすればそれは特別なことだったり関わりのないものだったりする。
人は誰でも自分だけの世界で生きている。が、何故だか多くの人は自分以外の世界に触れあおうとする。
そんなもの…得たところでいつかは失うだけだというのに。
得ることもあれば当然失うこともある。そう、この世界はなんでも対極的なものだらけで、人間はそれを可逆的に永遠とさまよっているだけだ。
そんなものに縛られている人間が馬鹿らしいと思ったあの時から、俺は何もかもをなくし、同時に何もない方がいいと思うようになった。0すらも存在しないとみなす「無」の者に…。
そして俺は光でも闇でもない「無」の
世界に落ちた。
ーーキーンコーンカーンコーン。
ようやく数学の授業が終わり同時に目が覚めた。帰ろ。
さっさと帰る支度をし、速やかに教室を出た。
学校から家までは電車で2駅行って後は歩いて5分くらいの距離だ。
いつもと変わらない景色。
いつもと変わらない日々。
そして、いつもと変わらない人々。
変わり映えのないこの普遍の世界の中で人々は何を求めるのか。
いや、何も求めてなんかいないはずだ。仮にあるとしたら、他人にはあり自分にはないものに劣等感を抱いたりしているだけの錯覚のみだ。
そんな幻想の世界でさまよっている生ける亡者は俺だけではないはず。
この世界の全てが無にかえったとき、
今目にしているこの景色は、この時間は、そして俺自身は…。
秋瀬「一体、どうなってしまうのだろう…。」
俺はそう呟いた。
ブーメラン発言な気がするが仕方がない。これが人間の錯覚なんだから。
俺は相変わらず雲ひとつない空を見上げた。
知りたい。
ただその感情だけがこの晴天を突き破る唯一の想いだった。
そのとき、空から何か黒いものが落ちてくるのが見えた。しかも俺の真上に。
反射的にそれをキャッチした。
手のひらサイズの長方形の箱だ。
開けてみると、そこにはカードが50枚くらい入っていた。
秋瀬「…トランプか?」
少し気になったので一枚一枚確認してみると…。
ーードクンッ!!
秋瀬「……⁈」
なんなんだ今のは…?
しかも次みるカードからなぜか黒いオーラが漂う。そんなオカルトな。
そう思い、次のカードをみると…。
秋瀬「『jorker』……。」
…てかこれ、綴り間違えてんぞ…。
「jorker」じゃなくて「joker」だろ。
これ作ったやつ、馬鹿なの?
アホらし。後でゴミ箱行きだな。
そう思って家のある方面に振り返る。
すると、俺の目の前に女性が立っていた。そして…、
???「あなた、そのトランプが見えるのね…。」
「無」の中に潜むある一枚のトランプ、「J」が目を醒ます。
初めまして!
ハイネ1021です!
普段はハーメルンで連載させていただいてます。
オリジナル作品を描くのは今作品が初めてなのですが、これからも応援よろしくお願いいたします。
ちなみに投稿は不定期です。
誤字・脱字等ありましたらご指摘していただけると嬉しいです。
それでは次回もお楽しみに!