プロローグ
カタカタとキーボードをたたく音。一人の少年が椅子に座り、パソコンでアニメを見ていた。画面の三分の二を占めるアニメの横にはSNSが起動していた。
「これは三話くらいには人ほとんどいないな、と・・・ん?」
興味の失せたエンディング画面から目を離し、SNSの方を見るとわずかに気になる事を書いてる人たちがいた。
「空に光?・・・大きな光?・・・なんだこれ、月だろ」
エンディングも終わり、時計を見ると午後九時半。そろそろだった。少年は部屋を見渡し、特に入りようの物がないかを確かめた。無くなった飲み物、そろそろ切れそうな箱ティッシュ、ゴミ箱のお菓子袋を見た。
「五、六百円はあったよな」財布をポケットにしまい、携帯にイヤホンを繋げた。
鍵を閉めた事を確認すると家を出た。ぽろぽろと人が帰っているのが見える。スーパーは目と鼻の先にあるが滅多に行かない。出来るだけ長く家を出ていたい少年は家から十分は歩かなければいけないコンビニに行く。
コンビニまでの道のりには工場があった。よく見てはいないが何かの加工工場らしい。その工場の近くを通ると人が少ない。いつもコンビニまでの道のりではそこを通れば一人に会うか会わないかだ。大きな機械が動いているわけではないのでそれなりに静かで良い。少年はイヤホンで音楽を聴きながらその道を歩いていた。
(昨日はローソンだったから今日はファミマだな)
歩いていると一人の人が立っているのが見えた。何をしているのかは分からないがその場にぼーっとたっていた。少年は下を向きながら歩いていると違和感に気づいた。
(そういえばさっきからやけに人が立ったままな気がする)
顔を上げるとサラリーマンらしき男性が上を見ていた。少年も同じように上を見ると月とは違う光の玉が空に浮かんでいたのが見えた。
「空に光・・大きな光・・」
光は鼓動のようにドクンドクンと膨張と収縮を繰り返し始めた。しだいに早くなっていく。すると光の玉はいくつもの小さな光となって降り注いだ。そのうちの一つが少年に向かってくる。
「えっ?ちょっと!?」
イヤホンをしているためサラリーマンの声は聞こえなかった。表情や口の動きを見るに『大丈夫かー!』とか言っているんだろう。しかし少年は追ってくる光の玉から逃げるのに必死だった。追いつかれることは分かっていても逃げるしかなった。光の玉が少年を貫く、しかし痛みはなかった。貫いた光は散って、少年の体を包み込んだ。