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第二ミャ ナマズ型汎用決戦兵器襲来

全国各地には既に様々なゆるきゃらがおり、

対馬市には若干出遅れた感がなくもない。


けれど、他にはない、本物のロボットのキャラクターという事で、

少しずつ対馬の人間の中につしミャーは受け入れられていった。


そんな矢先のことだった。


「せとぎわ本課のはいるかい?」


対馬警察署の刑事が津島市役所専門特殊技術賄賂撲滅研究本部課、通称せとぎわ本課を訪ねてきた。


「はい、せとぎわ本課は私ですが。」


百花が現在の担当責任者として対応した。

…前任者の霜津は火事による爆発事故で死んでいるからだ。


「このところの連続押し入り強盗班の事でな、

ちょっとせとぎわの力を貸してくれや。」



何故、賄賂撲滅の部署に強盗の件で刑事が捜査協力を求めるのかは謎だが突っ込んではいけない。

それは、せとぎわ本課の科学力が高いという事にしておこう。

それでいいのかと聞かれたらそれでいいのだと納得してもらうしかあるまい。

そうしないと物語が成り立たないからだ。


「ところで、何故うちにその件でくるのかしら?」


それでも聞いてしまうのが百花だ。

まあ、それは、結局のところお互いの予定調和だからに他ならない。


「どうやらその犯人は、『半人』のようでな、

顔隠し様の女性用ストッキング越しにでもエラが目立っていたそうだ。」


「そう。……被害の様子は?」


「家を散々荒らされて、止めようとした住民が大怪我を負った。」



強盗という派手な犯罪をした上に、

それを複数。しかもその場でめぼしい金を盗むだけでなく、

更に何かを探している。

それが意味することは、

犯人はきっと何かを探している。

「被害者が犯人に何かを訪ねられたりは?」


「鋭いな、嬢ちゃん。その通りだ。」



「赤いキャベツに認められる証というものを探している、かしら?」


「ああ。なんだかよくわからないが、

ともかく人を幸せにするならともかく、

人を傷つけてまで手に入れたいものって何なのかね。」



「さあ、それこそ犯人に聞いてみたらどうかしら。」


「それができたら苦労してねぇや。

だって、最近の人外の犯人を見つけた時には何時も肉片だ。」



「毎度毎度派手にやるわね。

組織同士の抗争かしら。」


「攻撃の方向からして複数名による攻撃とは思えないし、

何か大規模な兵器を引きずってきた後もない。

これは、恐らく、

――――――――――――――――――人類史上最強の個人兵装だ。


俺たちはデスファングって呼んでいる。

その、正義の味方気取りの殺戮者をな。」



「人類史上最強の個人兵装…。」


「そうさ。いや、相手だって人間じゃないんだ。

これを使ったやつも人間じゃない可能性も高い。

壁の破壊跡から逆算される元の発射点はどれも非常に低い。

人間が撃ってるとしたら相当無理な姿勢か、

照準でねらえないほど低い位置から撃っているかだ。

第一、戦艦の主砲をマシンガンの様に撃ってる威力だ。

人間じゃ反動で体が持たねえ。」




この刑事、何処まで知っている!?

百花の背中に冷や汗が滲む。


「まあいいさ。何かにぶつかった時点で瞬間的に撃ち出したものが消滅しているかのように、

撃ち出した弾も残ってないし、

貫通して死んだ者も壊れたものもない。

余計な被害が出ないようになってる。

そいつなりに考えているんだろう。

俺がそいつの事で動いているのは器物破損の件でだ。

人を殺したわけじゃないから殺人じゃないし、

悪魔は動物でもないから器物破損でもない。

それじゃあ、逮捕もできんしな。」


「みゃあ。」


その刑事の諦めた笑いに同調するようにつしミャーが鳴く。


「おお、こいつかい、噂のマスコットは。

それにしてもよくできてるなあ。」


「ええ、うちの研究の成果の結晶ですから。」



「そりゃあ凄いな。人畜無害で、アイツらだけに効果的な対半魚人銃を発明した時もびっくりしたが、

こいつは別の方向に凄い。随分と平和的だしな。

これを量産して売れば大ヒットになるんじゃねえか?」


「ええ、ですが、量産は無理だという事になりまして、

敢え無く市のマスコットにしたの。」



「そうかい、せっかく生産工場も作って島が活性化すると思ったのにな。

そうなると、賄賂とか働くやつがいないか、そっちの本業も大変になるか。」


「そうね。早朝出勤とか17時を過ぎて残業とかしたくないわ。」



「ちげえねえ。」


そんなザ・公務員な会話をそろそろ打ち切ろうとしたのか、

刑事は話題を変えた。


「ところで御宅の市長さんは賄賂とかしてないのかい?」


「ありえないわ。

あの市長は島一番の正直者という事で市長に選ばれたのよ!?

嘘をつくくらいなら賄賂をもらうことを公言してからそうするわ。

市長はそういう人よ。」



「一生懸命スピーチをいろいろと用意してやっていたりしてるあの市長、

頑張りすぎてて逆に怪しくないか?」


「それは頑張ってない人が自分のうしろめたさを押し付けているだけじゃないかしら?」



「ふぅ~んそうかねぇ?俺の刑事の感は何かあの市長が匂うといってんだがなあ。

まあいいか…今はな。」


じゃあ帰るわ。

そう言って刑事が帰ろうとした瞬間の事だった。



巨大な爆発音が市役所にまで響いてきた。

すぐさま市役所にひっきりなしに電話がかかってきて、

暫く遅れて刑事の携帯電話にも着信音が鳴った。


何れも内容はこうだ。

対馬と日本本土を結ぶ港が何者かにあっという間に爆破されて使用できなくなった、と。


「奴らめやってくれる。」


「同時に起動させた爆弾によるものかしら?

何にせよ、主要な本土への交通手段を破壊するなんて、

人として最低の事ね。

…恐らくヒトではないでしょうけど。」



「くそっ、何が狙いだ。」


「理由を付けるとするなら、

恐らく奴らが捜している何かを島から出さないようにすること。

とすると―――――――――――次は空港が危ないっ!!」


そう百花が言って、刑事が外に出ようとした瞬間、

パトカーが爆発した。


「間一髪だったな。」


「案外余裕があるわね…刑事さん。」



「ばぁかいえ。これでもビビりまくってるっての。」


「先ほど空港を狙うといったけど、

アレを訂正するわ。今になって考えてみれば目的の『何か』を手に入れないまま、

島内部で大規模の破壊をするとは思えない。

港の爆破は、対馬の生活事情を考えてあくまで最もインパクトのある交通断絶のイメージを加える為の物。

より生活に密接した交通機関の破壊を最優先したわけね。」







「女、その通りダ。」


百花の声を肯定する声が上空から降ってきた。


その姿はアジアの俳優を意識したような眼鏡をかけた顔に、

不釣り合いな背の低い太った身体に機械の鱗でできた四肢。

そして背中にプロペラ飛行機の様な翼が付いている。

その姿は、どこかナマズに似ていた。





「さあ、このリ・シーに例の物を寄越すんダ。」


「例の物って何よ。」


『例の物』を要求するプロペラ翼を持ったナマズ人間リ・シーに、

百花はしらばっくれた。


「解っているんダ。『赤いキャベツ』は此処にあるのを知ってるんダ。」


「此処にはないわ。」



「そうか。なら此処も壊すとするのダ。」


「……刑事さん、今から起こる事を公言しないと誓える?」



「そうしなきゃ、市役所ごとお陀仏なんだろ。

しかたねえ。」


「そう、良かったわ。

そこの武装ナマズを打ち落としなさい。ツシ38号。」


そう命令した百花の先にいるのは一匹の山猫ロボットつしミャー。

その様子を理解できないながらも見逃すまいと睨みつけるように凝視する刑事。


そして命令を受けたツシ38号は人類史上最強の個人兵装を展開した。

小さな猫の身体から所狭しとヤマアラシの様に突き出してくる、

砲門、砲門、砲門。


「おい、まさかっ。」


「ええ、そうよ。対馬のマスコットロボット、つしミャー。

その正体は、最強の生体兵器ツシ38号よ。」




次の瞬間、花火と例えるにはあまりも過激な砲撃音と光が重なった。






―――――――――――――しかし。

「遅いのダ。このツシ・マーマンの王リ・シーを撃ち落すにはあまりにも遅いのダ。」


では、のろま共、この島を恐しく様を指をくわえて見ているのダ。―――――――――

そう言って攻撃をかけようとしたリ・シーを止めたのは一発の銃弾だった。


対馬にある自衛隊駐屯地、

そこで日夜訓練に励む彼らが到着したのだ。

彼らは悪魔が実際に跋扈するこの対馬に勤務するため、

自衛隊でありながら豊富な実戦経験と、

そして市長の承認により、島内での武器、兵器の携帯、そして使用までもが許可されている。


現場に到着した部隊長が百花に問う。

「手短に言います。奴が今回の悪魔ですか。」


「ええ、そうね。港を破壊した奴よ。

見てわかるけど奴は―――――――――――飛ぶわ。」



「…見てわかります。」


やっぱり、せとぎわ本課の人は変わっている。

部隊長は改めてそう認識した。


「今更だけど、つしミャーこと、

生体兵器ツシ38号が対処にあたっているわ。

ところで――――――――――あのプロペラは何?

機械化したナマズ。

まるで、ツシ38号だわ。」


「十七試艦上戦闘機、試製烈風。」

部隊長は答えた。


「えっ何かしら、それ。」


「あの翼は、間違いない。」



「ちょっと、解るように説明して。

それってどう凄いの?」


「戦争に間に合わなかった未完成の戦闘機、

十七試艦上戦闘機試製烈風。

全長10.995m

重量4,410kg

60㎏もする爆弾を二つも積め、600発の銃弾を撃ち放ち、

2,000馬力を誇る誉二二型エンジンを持って、

最高速度574.1km/hで高高度で鬼畜米英の戦闘機を一方的に蹂躙する次世代型戦闘機――――――――

として量産されるはずだったものだ。」



「どうしてそんなものを奴が身体につけているのよ。」


「それは本官にはわかりかねます。」



「だったら、予が応えてやるんダ。

予とそこの山猫は想いのこもった死んだ機械を糧に兵装に変えることができるんダ。

自衛官、態々おあつらえの物を運んでくれてありがたいんダ。」


そういうと、それを装備している自衛官ごと死んだ機械を喰らう為に、

リ・シーは機銃を撃ちながら自衛官たちに突っ込んでいった。


自衛官達とともにぐちゃぐちゃにされた小銃が分解されては機械ナマズ、リ・シーに吸収されていく。

戦車が爆破され、設置されたマシンガンも射手ごと無残な姿にされてそこには倒れた自衛官だけが残された。





Prrrrrrrr Prrrrrrrr


そんなとき、リ・シーの携帯に電話がなった。


「ほう、それなら、いいのダ。

今後、余が直接出なければ赤いキャベツの場所を教えるということでいいのダ。」


そう言ってツシ38号に機銃の残弾をすべて打ち込んだ後、

リ・シーはどこかへ飛び去って行った。

次回予告


何者かの連絡によって突如攻撃をやめたリ・シー。

それからツシ38号は姿を現さないリ・シーの代わりにわらわらと湧いてくる雑魚戦闘員を始末していた。



百花「はーい、半漁人のみーんな。

あなたの心臓(ハート)ににこにこにー♪」


百花の前に立つツシ38号が構えるは、

最強クラスの兵装。放たれるのは鉛の洗礼。

にじり寄る悪鬼のごとく戦略・戦術の一切を捻じ伏せる。


完全にそれ、『にこ』違いです…。


百花「お前たちの心臓、ハチの巣にしてやる。

撃ちぬけツシ38号、肉片も残さないでっ!!」


主技術者二人がいなくなり、

一度は滅びかけたせとぎわ本課。


しかしリ・シーの発言から得たヒントを元に、

亡くなった恋人から遺されたデータから、

ツシ38号の新たなるパワーアップデータを百花は創り上げた。


TAKUZUDAMAシステム。


それは、『神の怒り』。

これ以上奪わせない。対馬の神の力がここに降臨する。


けれども――――――――――――――――

それでもリ・シーへの勝ち目は少なく、

百花にはその先のシステムが必要だと感じていた。


リ・シーにツシ38号が並ぶに必要なもの。

それがあればツシ38号は、あらゆる戦場においてそのスペックを最大限に引き出せる。


それが、あれば。

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