サーバ間の問題
この小説は、2015年7月9日からのアイテム募集イベントのアイテムの解説イベントです。
神聖皇国ウェストランデ、執務室の一つ。
「何故『あのアイテム』が、イースタルに存在するのだ?」
怒声が鳴り響きながら、貴族達が会議を行っている。
「何時イースタルが『あのアイテム』を手に入れたのだ?」
「……それが、120年前には『あのアイテム』はイースタルで使われていたそうで……。」
「なんだとぉ!」
「歴史書にきちんと残っているのです。『あのアイテム』が120年ほど前に使用されたという記録がしっかりと!!」
「忍者どもは何をしていたのだ! 何故『あのアイテム』を120年の間捨てておいたのだ!」
「これでは、奴らの都合の良い冒険者のみを集めることができてしまうのではないか!」
「どうするのだ『あのアイテム』は金貨を使って買うことなど不可能だ……。ミナミの冒険者どもが幻想級という装備をかき集めてもあのアイテム1つとは釣り合わんぞ!!」
「というか、ジェリド=ガンは何故あのアイテムを持ってこなかったのだ?」
「今はその事を話し合っている暇はないぞ!!」
「では、どうするだ?」
「暗殺者を送り込め!! 『あのアイテム』を正当なる持ち主の元へと戻すのだ!!」
「戦争になるぞ!」
「構わん!! 『あのアイテム』さえ手に入れることができれば、幾らでも取り返しがつく……。」
「そうだ!! 今のままでは真綿で首を縛られるように、殺されることになるッ……。」
「『正当なる力』を正当なる血統に!!」
正気の目まま彼らの話し合いは終わり、ウェストランデは最高級の暗殺者部隊を集めイースタルへの進行をかけることになる。
時間は数か月ほど遡る。
アキバ円卓会議資料室。
「……『アイテム名』不明、ゲーム中一切確認された事はない……わけじゃないか。」
「はい、何度が『その効果』が発揮されているのは確認されていますね。」
アイザックの言葉に調査をしていたメンバーが答える。
「しかし、アイテム名不明、使用者不明。クエストに関わったことは一切ないから誰が持っているのかも不明という事ですからね。」
「クエストに関わってたまるか!!ていうか冒険者の手に入れられてたまるか!!」
アイザックがそう言って
「……しかし本当に存在するのか? そんなアイテムが?」
「証明できれば、次の行動に移る事ができます。」
調査室に現れたシロエがそう言って資料を元に戻す。
(そうだ、そのアイテムが存在するのなら、『テキストにない』システムが存在したっておかしくはない……。)
「シロエさん。リ=ガン様がお待ちかねです。」
「わかりました。」
その言葉と共にシロエは、資料室を立ち去って行った。
円卓会議議事堂、応接間。
「シロエ様、『例のアイテム』についてですが、すぐにわかりましたよ。」
「そうですか。」
そう言いながらリ=ガンは嬉々としてシロエに資料を渡す。
「『ヤマト入国拒否リスト』……。持ち主はマイハマのセルジアット公??」
「はい、セルジアット公がこのアイテムの管理を行っております。
過去数回使用された形跡がありますね。」
「そうか、セルジアット公が決めていたのか……。」
シロエはそう納得して、次の行動を決めていた。そのアイテムがあるのならば【金貨】を管理するシステムがあるのだから。
<エルダー・テイル>が全世界で稼働し、全世界にプレイヤーが移動できる以上、海外のレイド参戦や海外サーバでの行動もあり得る以上、サーバ間の対立になりかねない事態も多々存在した。
ある地域では問題ではないが、別の地域では問題となりえない行動などがある以上、サーバごとに要注意人物についてのサーバ侵入拒否というのは各社の当然の権利として認められており、それらについてのシステムも当然のように設定されていた。
そのシステムが実体化した物が『ヤマト入国拒否リスト』であった。
これは最初にプレイヤータウンとして設定されたアキバに最も近いイースタルで実体化し、そしてそれの最高責任者であるセルジアット公の元へと設定されたのであった。
本来なら幹部数名で決定される事であったのだが、最終的な結論は1つのコンソールで行われるので、ここ1つにしか存在できないのであった。
「わかっているはずだ、『ヤマト入国拒否リスト』さえあれば、我らに反対する外の国の冒険者を弾き飛ばすことができる!!」
「逆に奴らが持っている限り、奴らの好きなタイミングで我らの協力する外の国の冒険者を弾き飛ばすことができる!!」
「例えナカスを占拠したとしても、奴らが好きなタイミングで外の国の冒険者を弾き飛ばせば我らの守りは難しくなる!!」
「いや、それだけではない。もし我らに協力する商人の冒険者すらはじいたのならどうなる?」
打算と利益にまみれた計算のままウェストランデは戦争へと傾き始めていた。
『ヤマト入国拒否リスト』
名前を書いたヤマトの冒険者ではない冒険者をヤマトの外へと弾き飛ばすことができるマジックアイテム。
元々はBANシステムであり、セルジアット公が持っていることも既定の範囲内であるが、その能力はそれだけで戦争を起こすに十分な能力を持っている。
本来ならセルジアット公のアイテムなのだが、イセルスがこれを受け継ぐことになる。




