表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

ミリーシャ

前半はミリーシャの愚痴

日常が、壊れたのだろうか。

それとも、始めから壊れてたの?

昔からロクに家族と過ごさない祖父が戦死して、体の弱い一つ下の妹が伏せた。

そして、ドラゴン。


ああ、今でも頭が着いていけない。

私はその場を見なかったけれど、シャルティナが自殺行為にもドラゴンから逃げようとしなくて、父がドラゴンを倒した。

それで、意味もわからず妹は父に歯向かって、今や被害のない別棟の部屋に放り込まれている。


普段、父に反抗することはあるが、今回のシャルティナはどこかおかしかった。

なぜ凶暴な生き物を庇ったの?

泣いていた?なぜそう見えたの?

暴れて暴れて暴れまわっていただけじゃない。


ふつふつと湧いてくる怒りは、ドラゴンに対してか妹に対してか、はたまた祖父に対してかわからない。

理解できない自分に腹が立っているのかも。


とにかく、散々怯えて縮こまっていたのが、今はムシャクシャしてしょうがない。


シャルティナと引き離されたシマリスをアリエスが抱いている。

そういえば……

以前あの子が拾った生き物を父が取り上げたときも、今回なみに酷かった。


鳥でもなくネズミでもない中途半端で、気味の悪い生き物。

あの翼は絵本に出てきた悪魔と同じものだ。

それを、大事に手当したり可愛がったりして……

父が、悪魔に魅せられた、と言ったまさにそれだ。


なぜ、シャルティナは可愛げのないものばかりに執着するのか。

もっとテディベアとか、仔犬とか仔猫とか、もっと愛らしい生き物はたくさんいるし、望めば与えられるのに。

彼女が心を尽くすのは、決まって…………


「おれ、やっぱり心配だから…シャルんとこいく」

「マース…」


喋ったり暴れたり、それを連れてきた祖父も祖父だけど。





私たち姉妹と若い侍女は比較的被害の少ない部屋におかれていた。

窓の外からは父の兵や、城の騎士たちの声が聞こえる。

指示を出したり、励ましあったり。

ヒドイ有り様だ。

こんなヒドイことってある?


私の部屋は見事にドラゴンの尻尾で突き破られていたし、今夜寝る場所はもしかしたらこのまま雑魚寝かもしらない。

食事もまともなものが出るはずもないだろう。

イヤになる。イヤになるわ。



ーーワアアアア



その時、外の喧騒が大きくなった。

好奇心旺盛な侍女が窓を覗いて、悲鳴をあげる。悲鳴というか、歓喜の声というか。


「ご覧くださいお嬢様方!!殿下がお見えに!」

「!!!」


ドラゴンに跨る黒髪の青年。

褐色のあのドラゴンよりもずっと小柄なドラゴンが、空から降り立って、騎士たちに迎えられている。

ああ、ああ……あのお姿は、いつだったか仮面舞踏会でお逢いしたあの人だ。

あの時は素性を隠しているからと言って、纏うオーラや髪で分かった。


「メディウスさま……私をお助けに?」


イライラが急に取り払われて、甘い痺れが胸を震わせた。

あの夜はほんの一瞬の出来事だったけれど、私にはなんて甘美で素敵な時だったか言葉に言い表せない。


「お逢いしなければ、」

「ミリーシャ?どこに…」


エリザに声をかけられたが、振り返らずに走った。



ーー連れ出して、私を、ここから!!





殿下の名前を聞きつけたシマリスが、血相を変えて部屋を飛び出した姿に気付かない。


私がそれに気付いていたら、いや、それ以前に…私がお名前を呼んでいなければ…この後の事件は起きなかったかもしれないのに。










訂正》ミーシャ→ミリーシャ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ