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9 家訓その1




音木家の家訓その1




「あんた、まさかメルヘン?」

一人の男が、白雪に問いかける。

その男の手を見る、ああ、彼は・・・・。



「ねぇ、教えてよ?」

そっと、音もなく近づく男。ほら、その動き、目が物語っている。

けれど、確認もなしに家訓を実行してはダメ。

白雪は、思考を巡らせて一つの答えをだす。

「メルヘン、それは私の頭がメルヘンだと?」

「ちがうよ、でも確かにメルヘンな格好だよね」

そう、白雪の格好を見ながらつぶやく男。彼、はきっと白雪と近い年齢にみえるが・・・



レースとふんわり感が印象的な白雪の私服。今日も、狼選抜の服装だ。

「これが、悪い?せっかく、選んでもらったのに」

狼を貶されると、白雪の機嫌はすこぶる悪くなるなど知る由もない男は言葉を続ける。

「ふーん、選んだってやつはそんな趣味か」

「うるさい。用は、なに?忙しいの」

「メルヘン、だろ?」


バカな、男だと白雪は思った。きっと、裏社会の基本を知らないのだ。と、勝手に思い込むことにした。

「では、あなたは何者?」

「ふーん、聞くんだ。一応、暗殺者やってまーす!」

”暗殺者”というワード、を聞くや否や白雪は太ももにとりつけていたホルスターから拳銃を取り出すと男に銃口を向けた。

「ま、まって!え、いきなり?!」

「我が家の、家訓その1」

銃口を向けたまま、淡々と呟く。

「同業者は、排除すること」

「え、ま、え、ま・・・」

「依頼以外で、人を殺すことは本当面倒だけど、お金も発生しないけど、仕方のない、バカなヒト。言わなければ、見逃したのに」

トリガーをちゅうちょなく引く。

「うそ、だろ!」


男の、一生はそこで終わった。



「音木家、家訓その1」

ひとりでに白雪は呟いた。

「同業者は、排除すること。・・・・・ただし、例外を除く」



例外、それはたった一人にしか通じないものだ。


私にとって、それは・・・


「それにしても、彼はどうして私が」



”メルヘン”なのだと、分ったのだろう


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