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8 メルヘン
「あー、いけないなー」
「ん、どうしたの・・・・オオカミさん」
「ほら、あそこに一匹の猫さんがいるよ?」
ほんと、と白雪は呟いて銃口を向けて口元だけ笑って見せる。
「ひぃっ!」
悲鳴を漏らす、女が一人。肩を震わせて、へたり込むその姿は無様だ。
「ふふ、おやすみなさい・・・・」
トリガーを一気に引く、先ほどまでなり響いていた銃音がまた一つ鳴る。
「永遠に」
白雪は、そっと呟いてまた狼の手を握る。
「赤ずきん、帰ろ?」
「うん」
狼は、一人でにつぶやいた。
「関係者は、抹殺せよ」
それに合わせて、白雪も続く。
「報酬は、出来次第で上乗せ」
「上出来すぎだよね、よしよし、乾杯しよう!」
「ん、帰ったら」
メルヘン、それは依頼に忠実である。
メルヘン、依頼料高額であればある程、依頼遂行の出来が変わる。
メルヘン、それは誰もその姿を知らない。
メルヘン、それは暗殺のプロ。
メルヘン、それを敵に回すことほど恐ろしい事はない。
ほら、今日もどこかで”メルヘン”に依頼する人もいれば、
”メルヘン”に命を狩られる人もいる。
「オオカミさん、お家へ帰りましょう?」
「そうだね、赤ずきん」




