7 ≪銃殺≫と≪斬殺≫
「お嬢様、狼様、いってらっしゃいませ」
きれいな角度のお辞儀をした杜松は、白雪と狼を見送る。
音木家自家用ヘリの傍で。
ヘリから降り立った、白雪と狼はどちらからともなく手をつなぐ。
ここは、カジノが乱立するとある外国。
裏カジノや、マフィアが渦巻く場所といってもいい。
そんな場所に、不自然な二人は堂々と手をつないで闊歩する。
道行く人たちは、不思議そうな眼で見る者もいればその美貌に見惚れる者もいる。そんな中、視線などまるでないように二人はとある場所に入る。
そこは、『闇カジノ』。
欲望渦巻く、そのカジノ。金も、物も、身体も、命もかけることができる。
そんな中に、まだ幼さの残る顔の持ち主である白雪たちが踏み入れたことで、従業員らしき男が声をかける。
「君たち、ここになにを賭けに来たのです?」
白雪は、その小さな唇を動かす。
「賭け?何も、賭けに来ていない。賭けでなく、狩りにきた。」
あっけにとられた、男はしばし停止するがすぐにほほ笑みながら
「狩りにですか、それは何を狩りに来たのですか?」
「このカジノの関係者だよ、ね?『赤ずきん』?」
「そう。ねぇ、『オオカミ』さん。どの人から、狩るの?」
「そうだね、まずはこの人からかな?」
狼は、フッとほほ笑んで目の前に立つ男を指さす。
その指された男は、二人の会話にうろたえた。
美しい少女を『赤ずきん』と呼び、綺麗な顔の男を『オオカミ』と呼ぶ二人。
男は、少しずつ後ずさりながら
「め、『メルヘン』・・・」
しかし、鈍い音が響き渡る。
悲鳴が広がる。きっと、このカジノにいた女たちだろう。金きり声が響く。
そして、誰かが呟いた「・・・≪銃殺≫の『赤ずきん』」
音木家の皆は、それぞれ得意とする殺害方法がある。
白雪の場合は、≪銃殺≫もとい、≪射殺≫だ。
銃を片手、否両手に装備して一発で仕留める少女。
そこらには、一撃で仕留められたカジノ関係者たちが転がる。
それより遠く、カジノの置く側からはまた違う苦しげな声がかすかに聞こえる。
「た、助けてくれ」
「・・・・俺たち、慈悲もなにもないけどー?見逃すわけ、ないよね?」
どこに、隠していたのか分らないが刀を片手にほほ笑む狼。
一太刀振れば、男は一瞬固まり数秒後に赤い飛沫を飛び散らせてバタリと倒れる。
そう、彼狼の得意な殺害方法は、≪斬殺≫である。
一振りで、首の動脈を掻っ切る。腹を切る。
とにかく、斬る。
先ほどまで、賑やかだったハズのカジノ。
そこに立つのはたった2人。
後は、カジノ関係者の死体が転がっているだけだ。
「ねぇ、『オオカミ』さん。しくりない?」
「うん、大丈夫。殺したのは、関係者だけだよ。≪赤ずきん≫」
「良かった、家訓は第一。違反は、罰」
そう、確認を終えた二人はまたどちらからともなく手をつなぐ。
その手のひらには一切の汚れは無い。また、きている衣服もしかり、靴も最初とまったくもって一緒で清潔感があふれていた。
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