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47 恐がり



「あなたの暗殺依頼が、来ましてね…」


女は、茫然と立ち尽くす。小さな声で、どうして、どうしてと繰り返し呟く。口元は、弧を描いているが瞳は全く笑っていない。獰猛な目つきで、女を見据えるその瞳は暗殺者の目だった。女は、しばし後ずさると言霊をのせた。


「我、縛る呪縛を解きたまえ…さすれば、ソナタに力やらん!」印を組むと、懐から呪符を放つ。しかし、


「ダメだよ、させない」

水は小さく、呟くが静かなこの部屋には響いた。女が放った符がボウッと音を立て燃え尽きる。

「僕の霊力は、父さま譲りなんだよ?」

「………っな、なんで…なんで!生きてるの?!」


狼は何食わぬ顔で、「さあ?俺が生きてるのがそんなに不思議?」と言いつつ、ゆっくりと女に近づくと「あんたの霊力じゃ、俺にもこの子達にも適わないよ?なにより、あんた既に死んでるけど?」



女は、え?と零した。

「死んでる………?」

ほら、ソレ。と、狼が指さすのは横たわった女の亡骸。その胸のところは、真っ赤に染まっている。

「私が、死んでる?」

それは、一瞬だったのだ。女の命をしとめたのは、一発の弾だ。それを撃った本人は既にこの場にはいない。

「そう、死んでる。それじゃあ、バイバイ。あんたは、地獄へと落ちる運命なんだよ」


また、美しい歌が紡ぎ出される。

「魂が在るべき場、それは天…悪しき魂は地へと落ちゆく」

そう、あなたは地獄ゆきなのよ、と紡ぐ荊の歌が途切れた時、白雪の気配が近づく。


「終わった…?」「うん、終わったよ?」

ぎゅっと狼へと抱きつき、狼を見上げる白雪に微笑みかえす。双子もニコニコして、見守る。


「お母たま、終わったの~なでなでして?」

荊が手を広げながらトテトテ歩きよるのに白雪も狼の腕の中で手を広げ待つ。きょとんとしている水に気づき「水もおいで」と言うと水も嬉しそうに駆け寄ってくるのを二人まとめてぎゅっと抱きしめた。


「怖かった?」

白雪がいえば、双子はぶんぶん頭をふる。「ぜーんぜん、怖くないよぉ?」「うん、怖くない。」

「白雪は苦手だからね」

「うん」



こくり、頷く。白雪の苦手なモノ、それは幽霊だ。狼にとっては、幼少時からの慣れ親しんだものだが、白雪にとっては違う。見えもしないが、気配を感じるのだ幽霊の。よって、白雪にとって苦手だった。



「見えないモノと、触れないモノは苦手」


「怖いんじゃなくて、対処出来ないから」

と零すものの、狼は知ってる。

白雪は案外、恐がりな事を。

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