45 人魚姫と陰陽皇子
「………死になよ、お兄さん」
「うん、楽に死なせてあげられるよ」
可愛らしく微笑む二人の子は、すぐさま瞳を鋭く尖らせる。
「同業者は、殺すんだって《陰陽皇子》」
「うん、そうだね《人魚姫》」
そう、呼び合う2人を見た男は狼狽えだす。まさか、そんな…いいや、そんなわけはない。一人でぶつぶつ呟きある一つの答えをだした。
「相手は、子ども…なら」
容易いじゃないか、と。しかし、その考えは間違いだった。
「あ~」
と透き通った歌声が響く。頭を響かせ、クラクラする。視界も歪んで、足元がふらふらとして満足に立てない。そんな、バカな。この様な、芸当ができるのは数家の血筋のみのはず。まさか、薬を振りまかれているのか?いいや、違う。それなら、2人の子どもが先に倒れているはずだ。
「しぶといね、人魚姫の歌声を聞いてるのに」
そう、少年が呟きはらりと紙をバラまいた。キン、と光を放つ。
「まさか、……メルヘンにこのような血が?」
ぱたりと倒れた、男が死の間際に呟いた。
そう、魔術的なモノを使えるのはこの世界にて数家の者だけだ。それも、全ての者が使えるわけではない。
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「この殺し方は……まさか、な…あの陰陽道の者か?」
陰陽道を司る数家の者の仕業か?しかし、それにしてもなにも痕跡がない。ただ、呪術的な殺害方法だということ。
「ありえない…」
「ふふ、水。見てみて、悩んでるよ刑事さん」
「そうだね、でもそろそろ帰ろうよ。心配するよ」
「うん!」
2人手を繋いで、ビルの上から跳ぶ。
「お帰り、愛しの子」
「あ、お母たま!」
「おいで、帰るよ。水、荊」
「うん!父さま!」
親子4人、仲良く帰る。
「また、一段と上手くなったよね」
「「ほんとっ?!」」
狼が2人の頭を撫でつつ告げると一段と笑みを浮かべる。先程までの鋭い瞳は、笑みに変えられ嬉しそうに声を上げる。
「父さまの教え方が上手いんですよ!」
水が声高らかに言うと、荊もうんうんと頷く。それを微笑みながら、白雪は見守るのだ。
「もっと、上手くなる」
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