42 なにより恐いモノ
もう、絶対に堕ちたりしない。
なんど、この手で奪ってきたか分からない命。それが仕事で、と同時に私だって命を奪われるかもしれない。死ぬのは、恐いモノ。でも、それ以上に恐いのは……
「ねぇ、家族を奪うの?なら、さ…」
容赦なんていらないよね、だってあなたたちも一流なんでしょ?
ベレッタの中の一番のお気に入り、めったに使わないそれを白雪は取り出す。片方には、念入りに改造を施した白雪自慢の改造銃。
「……私を、殺せる?」
キラリと紅い瞳を光らせる。
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「なーんだ、やっぱり可愛い妹は…コントロール出来ちゃうんだね!」
にっこり笑うと、桃は目の前の男を見やる。
「よしよし、こっからは本気で………殺っちゃうよ?」
口元に弧を描く桃をみた男は、目を見開く。先ほどまでの攻防は本気じゃないってこと?
「アハハッ、やっぱり楽しいや!いいね、そこならへんの雑魚と違って殺りがいがあるよ」
ニタリ、嗤う。
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「………」
どうして、どうして、いつもなら!
姉様は、試練を乗り越えた。嬉しい、それは本当に嬉しい。この手で、姉様の命をとらなくてすむから。
それよりもどうして、私は目の前の少年を殺せないの?
姉様、教えてください。
ちらり、視線を白雪に向ける歌紅弥。
「なに、してんの。」
……ああ、なにこの。殺したくない、気持ち。
「あなた、お名前は?」
「…は?」
「お名前は?」
「ロイ」
ロイ様、……って私なにを。
よく、分からないけれど失いたくない。どうして、も。
「………あっ」
『姉様、狼にいさまとの出会いはどんなのでした?』
『ん、殺したくないって気持ち。それと、愛おしいって気持ち。何よりも、そばにずっといたい気持ち……かな』
そうか、そうか、でも……どうしたらいいの?
「……見付けたの?思うままにしたら、いい…」
白雪がいつの間にか後ろにいた。柔らかく微笑む白雪に、歌紅弥は少し泣きそうになる。
「姉、さまぁ……」
「ロイ、くん?あなたの家族はみーんな殺しちゃった…」
「……ふーん、それが?」
素っ気なく言うロイに、白雪はふむ。と零す。
「あなた家族が嫌いなの」
「うん、キライだね。殺ししか知らない奴らだからね」
「ふーん、それじゃあ本当の家族は欲しい?」
「………、本当の家族?」
ロイはポツリ零した
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