4 杜松と赤ずきん
「お嬢様、どうぞ」
黒のベンツの後部座席ドアを開けて待ち受けていたのは、杜松だ。
彼は、音木家に仕える執事。必然的に、白雪は彼にとって仕える主の一人でもある。
「杜松、timingいいね」
「お嬢様は、あいも変わらず発音がすばらしい」
「そう?これが、普通だけれど」
「・・・・お嬢様らしい」
白雪は、後部座席に座るとアタッシュケースを隣に慎重に置く。
それを見届けた杜松は、ドアをあまり音をたてないように閉めると運転席に移動した。
「杜松、出して」
「かしこまりました、お嬢様」
白雪は、アタッシュケースを開けると先ほど使った『レミントンMSR』を取り出すと掃除を始める。
汚れをきれいに取り払い、もとに戻す。
「次は、・・・・少し人数が多い」
「そうですね、お嬢様。私もお手伝いしても?」
「杜松、仕事熱心。早く帰りたいから、手伝って」
「かしこまりました、お嬢様」
杜松は、頷いて。前を向きなおした。それを見届けた白雪は、一枚の資料を取り出す。
「もう、つく?」「はい、お嬢様。ここに停めておきましょう」
車から、降りた白雪は一人で場違いな場所へと踏み入れる。
「こんばんは、お兄さん(笑)たち」
無表情だが、バカにされたように話しかけられた強面のお兄さん(笑)たちは
「こんばんは、お嬢さん?君は、ここがどこか分っているかい?」
スーツと強面の顔。着物で厳つい顔つきの人ばかりにかこまれる白雪。
しかし、彼女は怯えることもなく無表情を崩さずに口を開く。
「・・・・ここは、雲竜会ですか?」
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