39 覚醒
「アハッ、楽しいねぇ!こんなに、ゾクゾク来ちゃうのは初めてだよ。」
「キモッ。死んで、キモイをから」
恍惚とした表情を浮かべるブラッセリー家長男に対して、嫌悪な表情を浮かべる桃。
「キモイかな?結構綺麗な作りしてるはずなんだけどぉ?」
「……だめだ。気持ち悪い、コイツ」
確かに綺麗な作りをしているが、その恍惚とした表情が桃にとってかなり気持ち悪い。
「あぁ、あっちも始めちゃったね。2番目と3番目の弟と君の弟と妹?」
そう言われ桃はチラリと見やる、そこには狼と白雪の姿。あぁ、可愛いな白雪。
「……まて、1人弟と認めていない!」
「は?」
「アイツはまだ、認めていない!なぜ、弟?!殺す!お前殺すからな!あの子には、まだ早い!結婚なんてぇぇぇぇえ!!」
桃のキレスイッチが入ってしまったらしい。まだ、狼を弟とは認めていない桃にとってそれは禁句だった。白雪を守り抜いてこそ、相応しいのだ。そう、あれを乗り越えた暁には認めてやる。それまでは、弟とは認めない。
ギラリとした瞳、まるで猫の様。
「アハハ、やっぱりいるんだ!殺し合おうよ、cat's-eye」
楽しげに笑うブラッセリー家長男と、キレて無駄に静かな桃の後ろに歌紅弥は立っていた。あんな爆発を物ともしないなんて。両親も祖父達も動き出した。なら、
「兄様、加勢します。」
兄様がきれたら後始末が大変だ。彼は、ドSの中のドS。普段は、自殺へ追い込むほどの毒舌をはくがキレたら毒舌と無残な肉片が散らばる。惨殺よりもっともっと惨い。
片すのが大変だから、ストッパーをしなくては。
「あ゛ぁ゛?いらないよそんなの、littleprincessあっちにいってろ」
「はぁ?兄様いいのですか?姉様に全部全部言いつけますよ、今の言葉とか!」
必殺姉様につげ口しちゃいますよ?攻撃!
効果は、うん抜群。当たり前だけど。
「あ、ごめん」
冷静になったところで、「さぁ、そちらも2対2でいきますよ?」
ブラッセリー家長男の背後にたつ、無駄に大人びた印象の男の子。歌紅弥と同年齢におもえる。
「兄さん、ああ言ってるし加勢?する」
「アハハ、あっちの子と殺ってなよ」
「ふ~ん」
「楽しそうだな、お前」
桃は問う。
「だって、あんたcat's-eyeだろ?」
その質問に質問を返した男に溜め息をこぼす。
「さぁ?どうだろうね」
桃ははぐらかした、ところが。
「ダメだよ!そっちにいっちゃ!」
狼の叫び声に視線をそちらに向けた。
そこには、ゆらりと立つ白雪。
「ダメ、……」
ギュッと抱きしめて、狼は白雪の耳元で何かを囁いている。
ああ、覚醒ちゃったか。白雪。
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