38 対立
「そうか、桃よ。しかし、すぐに現るじゃろうのぅ?」
「そんなことが、…レイラ!」
「あの、ブラッセリー家ですの?あぁ、思い出しただけで、吐き気が…!」
口元を押さえ、麗良は忌々しそうにその名をいう。大丈夫かい?そう言いながら皇は背中をさする。
過去に、何かあったのだろう。そう白雪は結論づけ、狼の服裾をキュッとにぎった。それに気付いた狼は微笑む。
「そこぉ!いちゃいちゃしなぁい!!」
桃は、指をビシリとこちらに向けつつ言い放つ。
「あら、あなたも見つけたらいいのよ。桃くん」
「あぁーもう!母さんはゆるいよ、まだ白雪は高校生!」
「…?父さんは、麗良とは遅かったがいいと思うぞ?子孫を残すためには」
「そうじゃのう。ワシと、雪は…14の時に契ったぞ?」
「あらあら、そんな恥ずかしい」
雪は口元に手を添えて、少し肩をすぼめる。
「いや、おじい様の生々しい話は聞きたくなかった!」
白雪は、歌紅弥の両耳をしっかりと押さえていた。狼は、白雪に「まだはやいよね」と耳打ちし、白雪の同意の上での両耳押さえだった。
「姉さま、なぁにー?」
「まだ、知らなくていいよ。かぐや」
「……?うん!」
そんなこんなで、夜は更けてゆく。
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「あ、この前のー」
桃を見て指差すひとりの男。その周りには男が数名立っていた。
「あれは、メルヘンで間違いない。あの、暗殺のシンデレラをとりやがったヤツがいる。……!シンデレラまでいる!あぁ、やっと俺の所に来る気になった?俺はまだ、独身だよ!」
と、皇や麗良と同じくらいの年齢の男がさけんだ。
「いやよ、あんたの所へ行くものですか。こんなに愛おしい旦那様や可愛い我が子達がいるのよ?それに、あんたが気持ちの悪いくらい見るのも嫌よ!」
白雪はその一部始終をみて、あの男は父と、母を取り合いしてたのかと思った。相手の人数をチラリと確認する。
ひとりは、おじい様と同年代らしき人。父と同年代らしき2人。4にん、若めの男というより青年、少年といったほうがいい人たち。
「昔からなにかしらの、対立はあったがのぅ。今回は、ワシ等を殺しにきたか?」
おじい様は、はっきりと質問をする。
「ほっほっほ、そうだ。殺しにきた!!」
そう、ギラリと暗殺者の眼になるブラッセリー家の面々に白雪はこっそりと口元に笑みを浮かべる。
「……バカなヒトたち。容易く、近寄らせはしない」
スカートをはらり、翻し銃を構え放つ。この時間、1秒にも満たない。その姿に若干頬を染める青年がいた。
「……ちっ、本物。…」
何時もなら一撃で終わるが、今日はそうも行かないらしい。
「ふふ、鐘が鳴る前にぃ~爆破っ!」
歌紅弥が楽しげに、手元のスイッチをおす。
仕込んでいた、爆弾が次々と爆発音と凄まじい衝撃をだしながら爆破されてゆく。
これは、音木家の歌紅弥以外が思った。
ちょっと、やりすぎ。
「もう!親指姫ちゃん!周りに被害がでちゃったらどうするの?!」
母が思いっきり、歌紅弥に詰め寄った。
「だ、大丈夫!……と思う」
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