36 ブラッセリー家
「ははっ、隠れるのは性に合わないんだけどっ!」
月光を背に、その人物は呟いた。
「ジャパニーズだよね、メルヘンってさ!」
「───楽しみだなぁ、殺りあうの。」
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「しーらゆきっ!学校、いかないと…」
「ん、」
身じろぎする白雪を姫だっこすると狼はクローゼット前に置いた椅子に座らせる。
「転校したから、ヘリでの移動なんだから。はい、ばんざーい」
白雪は素直に手を伸ばし、狼に服をはぎ取られる。真新しい制服をちゃちゃっと着せるとまた、姫だっこをする。
「はい、歯磨きしててね。」
洗面台の前に降ろすと、狼はまた部屋へと戻る。
「あーん、お嬢さまぁん!可愛らしさ今日も抜群ですね!」
「……今日は、アリス?」
「はぁーい、そうですよ。杜松さんが、今日は桃様付きで仕事に行ってるので」
白雪は漸く働きだした頭で、兄様がね、と思った
「……ふーん」
「はい、白雪行くよ」
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「ねぇーどうおもう?ネズミっ」
「さぁ、私には少し分かりかねます」
「はは、猫とネズミでの仕事は初だね。じゃなくて、コレだよね…」
────目の前に既に死んでいる今日のターゲット。
「聞いてないんだけど、調査は完璧だったんでしょ?」
「はい、抜かりはなかったですよ」確かに。
「………ん~よく分かんないけど、アンタぁ?殺ったの」
桃は、後ろを振り向く。するとそこには血まみれの優男が立っていた。
「ありゃ、バレた?結構気配消しに消したんだけどなぁ。ははは」
整ってはいるものの、桃には劣るその男はニタリと桃をみて口に弧を描く。
「もしかしてぇ、メルヘン?」
「……アンタ何者ぉ?」
「ブラッセリー家の長男だけど?はははは、無視はいけないよ質問には答えてくれない?」
桃は思考の奥からブラッセリー家を検索かけてゆく。
ブラッセリー家、
………たち悪い奴らか。名前を堂々と出し、家までも堂々としているとちくるった暗殺一家。昔から、メルヘンでは面倒なので関わるなと言われているがそろそろ潮時らしい。相手がメルヘンに興味をもったらしい。
「じゃ、違うっていったら信じる?」
「あはは、信じるわけないじゃーん!もしそれが本当でも、関係ないよね?あははは」
ギラリとした目で桃を見た。
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